テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ーーーーー
遂に、上杉憲政を奉じる軍勢が
箕輪城から動き出した。
一行は忍城へとたどり着いた。
成田長泰は馬に乗ったまま告げる。
「関東管領、上杉憲政様とご一同の皆様、
お待ちしておりました。
ささっ……こちらへ」
「………!!」
長尾景虎は、成田長泰が馬から下馬しないことに気づいた。
「成田殿、関東管領の御前で下馬をせぬとは!」
そう言ってムチを持ち、
叩こうとする。
成田長泰は目を閉じ、身をちぢこませた。
しかし――
ムチは届かなかった。
楯無を身にまとった方円が、
成田長泰を庇ったのである。
「誰かは存じませんが、お助けいただき
感謝いたす」
「初めまして、成田長泰殿。
上杉憲政様の忠臣にお会いできて光栄です。
私、
武田 正蛇 甲斐守護 方円
と申します」
成田長泰は驚き、
相手が甲斐守護だと知ると慌てて頭を下げる。
「なんと、甲斐守護の……!
これは失礼いたしました🙇♀️」
「ところで……」
方円は景虎へ視線を向ける。
「いきなり味方にムチを叩き付けようとするとは、
さすがに若すぎませんか、景虎殿??」
「下馬せぬからであろう。
かばいたてするとは、
それこそ逆臣ではないか???」
「もしや……成田家のことを
ご存知ないので??」
長野業正は、方円の言葉を聞きながら内心で驚いていた。
(ほう……方円殿は博識でもあるのか……)
一方、上杉憲政は何とも言えぬ表情で景虎を見る。
(ほほほ……景虎殿、しでかしたのお……^^;)
方円は静かに説明を始めた。
「成田家は藤原の名門。
藤義家に下馬をしなくても許された家系だということを、
知らないのですか???」
成田長泰は感心した様子で方円を見る。
「方円殿は博識なのですな……」
そして心の中で景虎への怒りを募らせる。
(それに比べて、おのれ長尾景虎……)
上杉憲政も苦笑しながら口を開いた。
「うむ、下馬はせぬで良いぞ。
方円殿、派手にムチが直撃していたが、
大丈夫かの? ほほほ」
「ご心配なく。
楯無のおかげか、
全く痛くございませぬ」
長野業正は御旗楯無へ視線を向ける。
「おそらく楯無も、
此度は方円殿が正しいと
富来 えび
122
#自分用
富来 えび
20
һагυ_彡
238
お認めになられたのであろう」
景虎は自らの過ちに気づき、
深く頭を下げた。
「知らぬとはいえ、
とんでもないことをいたしました。
深くお詫びいたします」
「いえ、わかっていただけたら……」
成田長泰はそう答えながらも、
心の中では怒りを抑えていた。
(ちっ……この屈辱……許さんぞ)
方円はそんな成田長泰の様子に気づく。
「いきなり叩かれそうになって
恐ろしかったでしょう。
ですが、ご心配なく。
もうそんな目には合わせません」
そして心の中でつぶやく。
(これ、成田殿は景虎殿に怒ってるな、絶対……)
(まあ、私も切れてますけど💢)
成田長泰は感激したように方円を見る。
「ありがたい、方円殿。
博識なだけでなく、
優しさも持っておられるのですな……泣」
上杉憲政は、ほほほと笑う。
「ほほほ。
方円殿のおかげで、
何とか争いにはならなかった」
長野業正も感心しながら頷いた。
「ええ。
まさか成田家の家系を知っていて庇うとは。
そして反論もさせない方円殿のお言葉……。
素晴らしいものを見れましたな。
ははは」
そして、ちらちらと成田長泰を見る。
(これで切ろう……チラチラ)
成田長泰は業正の意図を察した。
(業正殿、わかりました。
方円殿の気持ちに免じて
怒りは収めましょう)
「では、こちらへ。
食事を用意しております」
ーーーーー
食事の席では、先ほどまでの緊張が嘘のように、
穏やかな空気が流れていた。
成田長泰は方円へ料理を勧めながら声をかける。
「方円殿、食事はお口に合いますかな?
飲み物、おつぎしますよ」
「ええ。
こんなに素晴らしい食事は
初めていただきました……。
我が領民にも食べて欲しいほどです。
あと、どうか接待は
上杉憲政様へ」
成田長泰は嬉しそうに笑った。
「ははは。
ご心配なく。
後できちんと関東管領にも
同じことをさせていただきますよ。
……それくらい感謝しているのです。
方円殿には」
「ははは」
上杉憲政は二人を眺めながら笑う。
「ほほほ。
成田殿がそこまで笑っているのは
初めて見たのお」
長野業正も微笑みながら頷いた。
「いかにも……。
良い方に会えましたな、
成田殿」
その頃、景虎は一番端の席で、
ただ己の行いを悔いてちぢこまっていた。
そこへ出浦が近づき、
景虎の肩にぽんと手を置く。
「やらかしましたねえ。
数日前、うちの主に
あんなこと言ってたくせに……^^
まあ、お酒も貰ってきましたから、
一緒に飲んであげますよ」
「……泣
うう……。
某も危うさを持っていたということか。
義や正しさは、
それを引き寄せてしまうのか……」
出浦は苦笑しながら酒を差し出す。
「まあ飲みましょうよ。
やっちゃった以上、
もう悔いていても仕方ないでしょ。
今は宴ですよ、笑。
こんな食事、なかなかないんだから。
うまいな😋
これ、食べないんですかな?笑」
長野業正は、出浦の気遣いに気づいていた。
(出浦殿、気を使ってくれてるのですな。
感謝いたす)
一方、成田長泰は心の中でまだ少しだけ景虎への怒りを残していた。
(ふん……あいつには接待はしてやらん。
食事は出したんだからいいだろう)
そして上杉憲政へ飲み物を勧める。
「憲政様もどうですかな?
この飲み物は美味しゅうございますよ」
「ほほほ。
ありがたいのお。
ほほほ」
方円はその様子を見ながら、
さりげなく手でよくやったと 出浦へ 伝える。
出浦も小さく頷いた。
景虎はそれを見ながら、
「……くっ」
と小さく呟いた。
ーーーーー
こうして宴は終わった。
表向きは平穏に。
しかし――
それぞれの胸には、
新たな感情と遺恨が残っていた。
ーーーーー
相模 小田原城
風魔の忍びから報告を受け、
北条家の面々は言葉を失っていた。
「……とのことで」
幻庵は目を見開く。
「なんと……」
氏康も深く息を吐いた。
「神頼みもバカにできんな……」
氏政だけは驚いたように目を輝かせる。
「えっ、まじで不評かったの?!
八幡宮のお祈りが効いた⸜(*˙꒳˙*)⸝」
元忠は険しい表情を浮かべる。
「しかし、あの方円が
甲斐守護に……。
御旗楯無を使用しているとは……」
幻庵も唸る。
「武田姓をまた名乗るとは……な。
しかも御旗楯無を手に入れて……」
氏康は頭を抱えた。
「何たることだ……」
しかし氏政は、少し考えてから口を開く。
「でも、いいとこあるよね。
ちゃんと家の流れを知ってて、
しかも庇うなんて……。
やっぱり向こうが正しいのかも。
だってムチが直撃してたのに、
どこにも怪我なかったんでしょ?
楯無の逸話だったら、
間違ってたら災い起こすはずだもの……」
そして少し表情を曇らせる。
「……でも、これ本当にまずいね。
甲斐守護が味方なんて。
背後には公方様まで……いるし」
氏康は静かに呟いた。
「わしは川越の大勝利によって、
調子に乗っておったのかもしれぬな……」
幻庵も珍しく弱々しく呟く。
「……わしらが間違っておったのかの……」
元忠は悔しそうに拳を握った。
「……くっ……」
ーーーーー
一方その頃、東では――
里見義堯のもとにも報告が届いていた。
「とのことだ。
あの女……甲斐守護に。
しかも御旗楯無を……」
佐竹義重も驚きを隠せない。
「……なんと。
しかし……景虎殿は、やらかしましたな……。
元は当主にならない予定の方でしたからな。
そこまで教育を受けておられなかったのかもしれぬ」
里見義堯は少し考える。
「……だが、それは方円殿も同じだぞ。
わしは方円殿を認めることにした」
「……!!」
「楯無の災いを恐れてじゃ。
本音ではない」
そう言って、里見はそっぽを向く。
「ふん……(⸝⸝⸝⩌⤚⩌)」
佐竹義重も苦笑した。
「ですな……。
悪口を言っていたら、
災いが来るやもしれませぬ。
公方様にも認められた以上、
仕方ないですな。
わしも仕方なく認めますよ。
ははは……」
ーーーーー
里見義堯は、いよいよ作戦を口にする。
「まずは某たちが
小田原付近を攻める」
そして――
しばらく時が経ったら。
「交代ですな」
佐竹義重も気合を入れる。
「正義の嫌がらせ、
とくと馳走いたしましょう」
里見義堯はニヤリと笑った。
「腕がなるわい!」
「包囲!」
「奇襲!」
「補給止め!」
「ハッハッハッハッハ!!」
こうして――
東からも、北条へ向けた
正義の進撃が始まったのであった。
ーーーーー
コメント
1件
わあああ、今回もめっちゃ熱い展開だったね!!🔥 方円様、楯無でムチから成田長泰を庇ったシーン、マジでかっこよすぎて叫んだ😭💕博識もあって、しかも「もうそんな目には合わせません」って優しさとか……もう完璧すぎるでしょ!! でも景虎様の空気読めなさには笑っちゃったけど、出浦さんのフォローが優しくて泣ける😂✨ 裏では成田様が怒りを残してたり、北条家も焦ってたり……この人間関係の複雑さが戦国ものの醍醐味だよね! 次の話も楽しみにしてるよ〜!琴寧さん、今回も素敵なエピソードありがとう🌸