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富来 えび
302
富来 えび
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相模湾
里見義堯は荒れた海を見ながら、豪快に笑った。
「ハッハッハ!
いつもより海が荒れておるな笑」
隣にいた里見兵も笑う。
「ですな、はははっ!
きっと我らを歓迎してくれているのでしょう。
海の神様が笑」
「わしらはいつも荒れている海でも戦えるよう訓練しとるからのぉww
むしろ有利だわ、ハッハッハ!」
一方その頃、北条水軍は――
北条兵たちは激しく揺れる船の上で、必死に体勢を保っていた。
「……… ちょっと待て、
なんかいつもより 荒れてねえか?
まずいですよ、梶原様……?!」
梶原景時は平然と立っている。
「ええい、馬鹿なことを申すな。 いつも通りだろう??」
「さては貴様ら……
鍛錬をサボっていたな???」
「そんなわけないでしょ。
きちんとしてましたよ……
どう見ても揺れが激しいですって」
梶原は兵を睨みつける。
「そうか…… 俺はそんなこと全く感じないがな」
「ひえっ……」
(そうだ、この人化け物だった…… 話が通じない……泣)
ーーーーー
やがて、里見水軍の兵が北条の船を見つけた。
「北条の船が見えてきたぜ!
へっへっへっ、覚悟しろよ~!
今までちょっかいかけてきたぶん、
返してやるからな!
ハッハッハ!」
里見義堯が号令を出す。
「まずは威嚇で矢を馳走してやれ」
「おめえら、一斉に放て!
撃て撃て、ははははっ!」
一斉に矢が放たれる。
「ぎゃー!
矢がここまで飛んできた……!」
「おい……おま……」
バタッ――。
「ひえっ……
矢が当たって死んでやがる……」
梶原景時は槍を振り回しながら、飛んできた矢を弾く。
「ちっ……
いきなりやってくれるじゃねえか。
貴様らも打ち返せ!!!」
「馬鹿なこと言わないでください!
この揺れで構えられるわけ……」
梶原は黙って弓を構える。
そして三本の矢をまとめて放った。
「……あっ???貴様ら、 言い訳か???」
北条兵は泣きそうになる。
「泣」
「お前ら…… 死にたく無ければ、
必死の覚悟で放てーーー!!!」
北条軍も一斉に矢を放つ。
すると、目のいい里見兵が声を上げた。
「おっ!
あいつら弓を構えはじめましたぜ✨」
「槍に持ち替えろ。 矢を弾くのだ」
里見兵たちは槍を構え、飛んでくる矢を次々と弾いていく。
「へっへっへっ! 俺は十本弾きやした!」
別の兵も得意げに叫ぶ。
「俺は三十弾いた!
あいつら構えがなってなってないから、
ヘロヘロだよ矢が!笑笑笑」
里見義堯も槍で矢を弾きながら、北条船を見つめる。
「むっ……
一人だけ向こうにも出来るやつがいるようだ。
三本まとめてきおった。
ワシを、もしや狙っておったのか……」
「へえ…… もしそうならやるなー、そいつ。
敵なのが悲しいぜ、 ハッハッハ!」
北条船では、梶原景時が舌打ちする。
「ちっ……
大将を狙ったが、ギリギリ弾かれたか」
兵が驚く。
「えっ……見えるんで???
しかも大将狙い撃ち……」
「大将をぶっ倒せば、統率が取れないからな。 貴様らも狙わんか」
「バカ言わないでください!
こんな荒れてるのに当てられるわけないでしょ?!
しかも船が見えるだけで人は見えませんよ?!
(…もういい。
どうせ死ぬんだ、俺も言ってやる💢💢)
自覚ないようだから、この際言うけどなあんた!
化け物なんだよ💢💢」
梶原は平然と答える。
「褒めてくれてありがとう。
でも甘くはしないからな。
さっさと矢を放て」
北条兵は黙り込む。
「……………」
その頃、里見側では――
目のいい里見兵が北条船をじっと見ていた。
「あいつら、ちょっと仲間割れしてねえか。
……あいつだな。
うちの大将を狙ったやつは」
弓を構える。
「隙あり!!!」
梶原景時は放たれた矢をギリギリでかわし、こちらを見て弓を構える。
里見兵もすぐに反応した。
梶原の放った矢をギリギリでかわす。
「ちっ……
あいつだけは化け物だな……
すいやせん!
避けられやした!」
里見義堯は感心したように目を細める。
「ほう……
奇襲に気づいたうえに、
誰が狙ったかも把握しておるな。
……本当に敵なのが惜しい」
「ですな、ハッハッハ!」
梶原景時は舌打ちする。
「ちっ……
あいつに攻撃避けられた。
しかも周りの連中も笑っていやがるな」
一方、北条兵たちは荒れる船の上で必死に耐えていた。
「やばい…… 揺れが……」
梶原は兵たちを見回す。
「あと、俺が化け物とさっき言っておったが、
それは違うぞ、貴様ら。
普通に敵は揺れていないと思っておるよ。
……つまり……
鍛錬が足りないと言うことだ。
貴様らのな💢」
「……嘘ですよね」
「嘘なものか。
あの精度で当ててこれるんだ。
この揺れはたいしたことないということだ。
俺も揺れなんて感じないしな???
俺としたことが……
貴様らにやらせる鍛錬が甘かったようだ。
生きて帰ったやつらは徹底的にしごいてやる」
「……あっ、あっ……死んだら地獄、
今も地獄…… 帰っても地獄だ……」
兵たちは震えながら弓を構える。
「くそう…… 一人でも多く殺してやれ!
矢を放てーーー!!!」
再び北条軍が矢を放つ。
里見兵がそれを見ながら笑う。
「さっきよりはましになったな、
あいつらの攻撃。
はははっ笑」
目のいい兵も続ける。
「あの化け物以外は、
やっぱり揺れが堪えてるみたいだな」
里見義堯は飛んできた矢を弾きながら答える。
「だが、適当に打つだけでは当てられないということが わかっていないようだな。
ワシを狙ったやつ以外は、 はっはっは!」
「むっ……」
ギリギリで矢をかわす。
「また狙ってきおったか……」
里見義堯は笑みを浮かべた。
「こちらからも馳走してやるわ。
向こうは三本だったな。
はっはっは! ならば――」
五本の矢をまとめて弓につがえる。
「これでどうじゃ!」
少し斜め上へ向けて放つ。
「ぐふっ!」
北条兵たちが次々と倒れる。
梶原景時は槍で矢を弾きながら目を見開いた。
「むっ……
こいつ、まとめて周りの三人を倒しおった」
そして、なぜか楽しそうに笑う。
「ははははは!
面白いじゃねえかww
敵なのが悲しいわwww」
北条兵は思わず叫ぶ。
「笑っていやがる……
味方が死んでるんですよ。
なんで面白がれるんです」
梶原は怒鳴り返す。
「バカ言うな。
戦に来た以上、誰でも死ぬわ。
俺でもあっさり死ぬかもしれんということが
わかっていないようだな。
いちいち悲しんでたら持たんわ💢💢
口を動かす前に手と足を動かせ💢💢」
「……泣」
「……返事は💢💢」
「はいいぃっっっ!!!泣」
「さっさと貴様ら矢を放て!!!!」
梶原も同じように五本の矢を弓につがえ、一気に放つ。
「梶原様に続いて――
放てえええええっ!!!泣」
「できるなら…… 最初からやらんか、
このバカもんがあああ!!!
できておったら、他の奴らも死ななかったぞ💢💢」
「うう……泣」
その様子を見ていた里見兵が呟く。
「あいつ、おっかねえな。 はははっ」
別の兵も笑う。
「あんなんじゃ兵が萎縮して逆効果だっての笑」
「なー もっと気楽にやればいいのに。
いつ死ぬか分からないんだから笑」
里見義堯は、味方と自分に飛んできた矢を弾きながら静かに答える。
「うむ…… 適度に緊張感をもちながらも、
体を軽くして戦うのが我らのやり方だからな。
……あのやり方では北条はここまでだな」
里見兵は笑いながら頭を下げる。
「すいやせん。
守るべき俺たちが守られてしまいやした。
ありがとうございやす。
お返しにまた放てー ははははは笑!」
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しばらくして――
北条水軍は次第に劣勢へ追い込まれていた。
梶原景時は戦況を見渡す。
「ちっ…… 劣勢だな。
このままやっても矢を無駄に使うだけだ……
一旦砦に引き、体制を整えるぞ!」
しかし兵から返事はない、梶原は怒鳴った。
「……聞こえないのか!
さっさと戻れ💢💢
……思いっきりしごいてやるから喜べよ💢💢」
「…はいいいいっ…泣
ひくぞー! お前らー!」
北条水軍は一斉に撤退していく。
里見兵がそれを見つける。
「あいつら逃げていきやすで!」
里見義堯は首を横に振る。
「いや、一度引いただけだろう。
多分また砦から出てくる。
……待ち伏せの準備を今から始めよ!!!」
「おおおおおっ!!!」
荒れ狂う相模湾。
戦は、まだ始まったばかりであった。
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