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『悪魔のウィスキー、最後の一滴』財団のサイト-16の地下実験室。防弾ガラスの向こう側に、1本の古びたウィスキーのボトル(SCP-195)が置かれている。ラベルには掠れた文字で『医療用』と書かれていた。だが、これがもたらすのは治療ではなく、完全な「破壊」だ。今回の実験の被験者であるDクラス職員の男、D-8831が部屋に入ってきた。「おい、これを飲めばいいんだろ? 軽い晩酌だな」D-8831は鼻で笑いながら、グラスに注がれた琥珀色の液体を一口で飲み干した。「……う、あ、あああああッ!!」直後、D-8831が喉をかきむしりながら床に転がった。彼の目は一瞬で血走り、首の血管が破裂しそうなほどに浮き出る。脳のストッパーが完全に破壊され、筋肉の限界を超えたパワーが彼の肉体に宿っていく。「目標、覚醒状態に移行。凶暴化が始まりました」D-8831は立ち上がると、人間の力とは思えない速度で突進し、目の前の頑丈な防弾ガラスを拳で殴りつけた。ドン!という凄まじい衝撃音が響き、ガラスにヒビが入る。彼の拳の骨は粉々に砕けていたが、彼は一切の痛みを感じていないかのように、狂った笑顔で笑いながら殴り続けた。これこそが、SCP-195の異常性だ。ひとたび飲めば、疲労や恐怖、痛みを一切感じなくなり、周囲の人間をすべて肉塊に変えるまで襲いかかり続ける「狂戦士(バーサーカー)」と化す。歴史の記録によると、1860年代のアメリカ南北戦争時代、ある北軍の部隊がこのウィスキーを支給され、戦場へ投入された。彼らは敵の銃弾を何発浴びても倒れず、笑いながら南軍の兵士たちを文字通りバラバラに引き裂いたという。しかし、敵を全滅させた後、彼らの「殺意」は味方、そして自分自身へと向かった。部隊は互いに殺し合い、最後の一人が息絶えるまで地獄の惨劇が続いたのだ。バリンッ!!!激しい音を立てて、実験室の防弾ガラスが粉砕された。「死ね! 全員ぶっ殺してやる!!」血塗れの拳を振り回し、狂った目でこちらへ向かってくるD-8831。「……対象を無力化(処分)してください」研究員の冷淡な合図とともに、天井の自動防衛ターレットが作動し、重機関銃の弾丸がD-8831の体に何発も突き刺さった。通常の人間なら即死する傷を負っても、彼は数秒間、なおも前に進もうと足を動かし続けた。やがて、肉体が物理的に限界を迎え、ドサリと床に倒れ伏した。沈黙が戻った実験室で、研究員は手元のタブレットに記録を打ち込む。『実験結果:対象は摂取後、約4分間で完全に制御不能となった。肉体の完全な破壊以外に停止手段なし』ボトルの中に残った琥珀色の液体が、研究室のライトに照らされて怪しく揺れている。人間を悪魔に変えるウィスキーは、今も静かに、次の獲物の喉を潤す瞬間を待っている。
コメント
1件
読了しました。第4話、SCP-195の「狂戦士化」するウィスキーの設定が実に美しく設計されていますね。南北戦争時代のエピソードを伏線として差し込む構成も好みです。D-8831が笑いながら骨を粉砕しても殴り続ける描写、脳のストッパーを破壊するというメカニズムの説得力に思わず引き込まれました。最後の「次の獲物の喉を潤す瞬間を待っている」という一文が、このボトルに永遠の恐怖を与えていて秀逸です。世界観の肉付けが本当に上手いですね。🍊好きさんの設定構築力、次回も楽しみにしています。