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彼女が帰って一人になってからも、僕は不思議な万能感に包まれていた。これだけのことがあっても僕と彼女の絆は断ち切られなかった。どんな困難があっても僕と彼女は乗り越えていける。心からそう信じていた。
家に帰ってから、彩寧さんからメッセージが届いていたことを思い出した。動画つきの。
動画は陸たちが撮影した彼女との行為を記録したものらしい。そういえば、動画をどうしろという指示を彼女はしなかった。今日はいろいろありすぎて、彼女もそこまで頭が回らなかった。
動画の存在を思い出して、まずは削除しようと思った。僕に見られるのを、彼女も望まないだろうから。
でもすぐに思い直した。動画を持っているのは彩寧さんだけじゃない。撮影した陸たちも当然持っているわけで、彼らが嫌がらせで彼女の今彼の僕にそれを見せようと嫌がらせしてくることもあるかもしれない。
〈かもしれない〉じゃないな。女の子と別れるのにほかの女の子との行為を見せつけるような外道な振る舞いを何度もしている鬼畜だから、それくらいは普通にするだろう。
見てやろうと思った。性的な欲求を満たすためじゃない。ましてや彼女の弱みを握ることで優位に立とうと考えたわけでもない。
そのときの僕の心は、彼女と今まで以上に精神的に強く結ばれたことによって、今まで感じたことのないような万能感と多幸感に支配されていた。どんな動画を見せられたって彼女との絆を断ち切ることはできないという自信があった。いやむしろ絆の強さを確かめるために動画を見るべきだと思った。
送られた動画は三つ。一番録画時間の短いものから見てみることにした。一番短いといっても、それでも三十分近くあるのだけれど――