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その日、おっさんは俺を連れて、町の広場にやってきた。
「今日は実践だ。」
「実践って、何をやるんだよ。」
俺はちょっと警戒しながら、広場を見渡した。
「まず、普段使いの魔法を使ってみる。」
「普段使いの魔法?」
「簡単だ、簡単。お前が習得したのは“簡易操作”だろ?」
「そうだけど、あれは小石を動かしただけだぞ。」
「その通り。」
おっさんは無駄に大きな声を出すわけでもなく、肩をすくめた。
「それを普段の生活で使えるようにするんだ。」
「……なんで、そんな簡単なことが実践になるんだ?」
「実践の意味がわかるようになるのは、後だ。」
おっさんは、指で空気をさっと撫でるようにして、何かを意識していた。
「やってみろ。」
「……ふーん。」
俺は小さく息を吐き、手を広げてみた。
「何をするんだ?」
「まずは、簡単に水を出してみろ。」
「水?」
「そうだ。無理に大きな魔法を使おうとするな。あくまで、手元にあるものを動かす。それが基礎だ。」
「なるほどね。」
俺は手のひらを広げ、水を出すイメージを膨らませた。
「簡単なことだろ?」
「その通り。」
俺が集中すると、体の中で魔力がじわりと流れる感覚が広がる。
「水を出す……水を出す……」
最初は何も起きなかった。手のひらが乾いて、風だけが吹き抜ける。
「ダメか……?」
「焦るな。」
おっさんが言った。
「イメージを絞り込め。水の感触を思い浮かべるんだ。」
水の感触。水の冷たさ、湿り気を感じる。その感覚に集中しようとすると、ふっと手のひらにひんやりとした感触が湧き上がる。
「よし。」
と呟いたその瞬間、手のひらから、ほんの少しだけ水が湧き出た。
「おお、出た!」
俺は驚いて手を見つめる。
ほんの少しの水滴が、手のひらからこぼれ落ちる。それは大した量ではないが、間違いなく「水」だった。
「すげえ、できた!」
「最初はそんなもんだ。」
おっさんは少し微笑んだ。
「その調子だ、少しずつ、使える範囲を広げていけ。」
「いやー、こんなに簡単に水を出せるなんて思わなかった。」
「普通の魔法はそんなもんだ。派手な魔法や強力な魔法を求めて、焦る奴が多いが、まずはこうやって“日常の延長線”に魔法を置くことだ。」
俺は手のひらに出た水を指で撫でながら、心の中でふと思った。
「魔法って、実はこんなに“普通”なんだな。」
「だろ? 最初から派手な魔法なんて使うな。普通に使えるようになれば、自然に他の魔法も使えるようになる。」
「他の魔法って……?」
「そうだ。水だけじゃなく、火、風、土。もっといろんなものを魔力で操ることができるようになる。」
「火か……」
俺は少し考える。水は簡単にできたが、火となるとどうなるのか。
「まずは冷静にやってみろ。」
おっさんは俺を見ながら、少しだけ考えてから言った。
「火の魔法も、そんなに難しくはない。」
「本当か?」
「試してみろ。」
俺は深呼吸をして、再び手のひらを広げる。水のときの感覚を思い出しながら、今度は火の温かさを感じるようにした。
「火を……」
集中する。冷静に、魔力を集めて、火の感覚をイメージする。
最初は何も起こらない。だが、何度か繰り返しているうちに、手のひらに熱さを感じた。
「おお……!」
俺は手を引っ込めると、そっと見てみると、小さな炎が手のひらに宿っていた。
「できた! 火が出た!」
「よし、その調子。」
おっさんは頷いて、俺を見守っていた。
「魔法は、慌てずに使いこなすことだ。大きな力を使う必要はない。」
「でも、これじゃ火を起こすくらいしかできないな。」
「それでいいんだ。まずは日常的に使える魔法を覚えて、他の魔法を応用していけ。」
「なるほどね。」
俺は、手のひらの炎をじっと見つめる。小さな炎だが、確かに魔法だ。
「火を操るって、けっこう面白いな。」
「そのうち、もっと大きな魔法も使えるようになるさ。」
おっさんはにやりと笑う。
俺はちょっとだけ、胸の奥で期待が膨らんでいくのを感じた。魔法の使い方が少しずつ分かってきた気がする。
次回予告
魔法を使う力をつけた俺だが、まだまだ試練は続く。今度は、日常魔法を使いこなすために、さらなる練習が必要だ!果たして、どんな魔法を習得するのか?そして、ギルドの仕事に役立つ魔法は一体――。