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檻の中の苺
エピソード2
目を覚ますと見覚えのない真っ白で清潔感のある天井が見えた。あたりは消毒液の匂いで満たされていて、「ピーッピーッ」という機械音が静かな部屋に鳴り響いている。
なぜこんなところにいるんだ…?
思い出したくもない記憶が…嫌でも脳裏にちらつく…
俺はたしか…
生きている意味も生きる資格もないと感じ、大量の抗うつ薬と手当たり次第に作った薬品を飲んで自殺しようとしたはずだが…
看護師
「あぁ、目を覚ましましたか
あなたは…無理をした末に倒れて、通報してくれた人のおかげで病院に運ばれたんです。調子はどうですか?」
俺
「え…?」
改めて自分の体を見ると、いくつもの点滴管が繋がれていて、あたりはいかにも「治療室」といった具合にモニターなどが付いた機械がたくさん置いてある。
通報してくれた人…?この俺を…?
こんな出来損ないで青いいちご族の俺を…?
そういえば、倒れてからまだ少し意識が残っていたとき、黒く長い髪をし、バッジを付けた赤いいちご族の人が駆けつけてきたような…もしかして、あの人が通報してくれたのか…?
それに、病院でこんなに丁寧に接してもらえたのは初めてだ。ふと自身の匂いを嗅ぐと、ブルーベリーの匂いがする。きっと、自宅に置いておいた緊急用の種族偽装香水だろう。海外サイトからこっそり取り寄せたものだ。
種族のせいでちゃんと対応してもらえないのを心配して、香水をふりかける配慮までしてくれたのか…
そんな思考を巡らせている間も処置は続く。
その後、バイタルが安定したので駆けつけてくれた医者から家のドア付近に落としていた財布を受け取り、今後の生活面での注意を受けたあと受付をした。
受付
「えっと…ブルー・ストロベリー様ですねー
……あーーじゃ、金払って早く帰ってください」
俺の身分証明書の種族欄を見た途端、受付は態度を変える
ブルー
「えっと…いくらですか…?」
受付
「ここのモニターに映してあるでしょ?
しかも種族偽装って…
チッ…これだから『ホレオ』は…」
受付はイライラとした様子で小さなモニターを指さす。周りにあるソファーで受付を待っている人達もひそひそと嫌味を話しているのが聞こえてくる
ブルー
「ッ……すみません」
世の中の青いいちご族への対応は相変わらずだ。もう…慣れている。理不尽にキレられることも、『異物』という意味の差別用語、『ホレオ』と呼ばれることも。
やけに高い治療料を払ったあと、足早に病院を去り、帰りたくない自宅兼研究所に帰る。
しかし、帰り道の空は青く晴れていて、白く光る太陽が希望のように道を照らしていた。
ドアが開きっぱなしの自宅に入ると、精神が不安定な状態でやけくそに薬品を作り、飲んだあとも散々暴れたと分かる悲惨な光景が広がっていて、とても見れたものじゃない。
そんな部屋をのろのろと片付けながら再び考える。俺のことを通報してくれた人のことを。
こんな、青いいちご族である俺のことを助けようとしてくれた人のことを。
床に落ちている大量の薬の殻を拾うたび、無抵抗に涙を流しながら量など考えずに薬を口に放り込んだ光景が視界に重なる。舌には、涙と薬が混ざった醜い味が蘇った。
でも、そんな記憶も翻すくらい、あの助けてくれた人のあの赤いいちごの甘い匂いが脳を埋め尽くす。
部屋を片付け終わってようやく椅子に腰を下ろしてからも、その人のことがずっと頭から離れない…
あの…とろけるような…思わず触れたくなるような甘い匂いが。
あの人のことを考えると、同じく青いいちご族である俺のことを差別せずに受け入れてくれた師匠のことを思い出す。
助けてくれた人にお礼がしたい。
もう、何年も俺を育ててくれた師匠になにも返せなかった時のような過ちを繰り返したくない。
その気持ち一心で、『黒く長い髪・胸元に輝くバッジを付けている・赤いいちご族』という少ない情報を手がかりに、助けてくれた人を探すためのポスターやサイトを作った。
先ほど部屋を片付けているとき、誤って少量の薬品が左目に入ってしまったせいで数週間眼帯生活を余儀なくされた。俺は右目が生まれつき弱視だから左目が使えなくなると日常生活で非常に困る。
しかし、そんな状況下でもポスターやサイトを作る手は止まらなかった。知りたかった、助けてくれた人を。どうしても、お礼がしたかった。
〔〚人を探しています〛
林の中で倒れていた自分を助けるために医者を呼んでくれた人を探しています。
・黒く長い髪
・胸元に輝くバッジ
・赤いいちご族
心当たりがある方はどうか以下の番号まで
+888-5480-232〕
どうか、届いてくれ
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