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#無理矢理
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檻の中の苺
エピソード3
城を抜け出して倒れている人を助けた出来事から2日。未だにあの人のことが脳裏に映って公務に集中できない。趣味の時間になんとなく本を読んでいるときも、「可愛い」や「銀色」といった単語に妙に反応してしまう。
しかし、いつまでもそんな調子ではいられない。今日は外の演説台で多くの国民を前にして演説をする国会開会式だ。
まずは鏡の前で一通り化粧をした後、シンプルな灰色のズボンを履き、王室の文様が押されたベルトを付ける。
次に、丁寧にアイロンがかけられた白いシャツに深い赤のネクタイを付ける。この状態で一旦、黒く丁寧に整えられた太ももまである長い髪に軽くカールをかけ、ボリュームを出す。
それからシャツの上に暗い桃色や淡いブラウンでデザインされたベストを着て、従者に手伝ってもらいながらミルク色の薄く大きな羽織と、鮮やかな赤で非常に重く、分厚いマントを羽織る。
最後に、数多の金と銀の勲章をベストに、国王という地位を示すバッジをシャツに付ける。
服を着替え終えると、最終確認のために大きな姿鏡の前に立つ。鏡には、これ以上ないほどに豪華で、きらびやかな正装をした王が映っていた。
小さいころから次期国王として傷一つつかぬよう大切に育てられた体。背負わされた責任に反するように高く伸びすぎた背。
こうやって改めて自分の姿を見ると、いつの間にこんな地位になったのか。と、残酷にも自覚する。
ぼーっと鏡を見つめていると、演説をする会場の準備が整っているとの情報が届いた。あぁ、始まるのか。王室のイメージを崩さぬよう高貴な表情を保ちつつも国民に微笑み、一瞬のミスであったとしても国の経済に影響するという重圧感で満たされた時間が。
羽織とマントの端を従者に持ってもらいながら外の演説台に向かい、立つ。
目の前には様々な髪色で、様々な種族の国民が僕を見ていて、思わず誰かと目が合ってしまいそうだ。たくさんの人が一カ所に集まっているからか、色々な匂いが混ざって充満していて、心地悪いような気がする。
演説の時間になるまで周りの国民を見渡していると、ふと近くの白い柱に貼ってある紙に意識が向いた。
〔〚人を探しています〛
林の中で倒れていた自分を助けるために医者を呼んでくれた人を探しています。
・黒く長い髪
・胸元に輝くバッジ
・赤いいちご族
心当たりがある方はどうか以下の番号まで
+888-5480-232〕
見た瞬間、時間が止まったような感覚がした
「林の中で倒れているのを医者を呼んで助けた」「黒く長い髪」「胸元にバッジ」「赤いいちご族」
僕だ。何度も疑って文章を読み直したが、僕のことだ。まさか、あの人が僕を探そうとしているのか…?
そう驚きと動揺を隠せずに固まっていると、やけに周りが騒がしい。ふと意識をポスターから背けると、すでに演説開始の時間になっていた。開始の時間になっても僕が一点を見つめて話し始めないので、国民がざわめいたのだろう。
僕は慌てて前に向き直し、事前に用意しておいた演説の文章を数分かけて読み上げていった。演説の最中、心臓の鼓動は鳴り止まなかった。
演説が終わり、他国の大臣や国王との外交を済ませたあと、静かな自室に戻る。
そして、恐る恐る…先ほどのポスターについてネットで検索する。するとポスターの内容と完全に一致するサイトを見つけた。
〔心当たりがある方はどうか以下の番号まで
+888-5480-232〕
この文章を何度も何度も読み返す。
僕のことを探しているのはおそらく明白だ。
しかし、電話をかけるべきか迷っている自分がいる。
もし僕のことじゃなかったら…?
迷惑だったら…?
そんな心配が思考の中を巡る。
そんな中、あのとき、「可愛い」と思えたあの人の顔を思い出す。そして、種族の影響で苦労しながらもポスターやサイトを作ってくれたのだろうという予想が浮かぶ。
……+888-5480-232…この番号に電話をしよう。
電話をしたところでなにを話せばいいのかは全く想像がつかない。でも、電話をすれば、なにか、僕の中のなにかが変わる気がした。
個人用のスマホで電話画面を開く。
そして、サイトに書いてある番号を打つ。
ただ数字を押せばいいだけなのに、打つ手がかすかに震える。心臓の鼓動は相変わらず鳴り響いている。
ピー、プルルルルルルル、プルルルルルルル
心のどこかで、「電話に出ないでほしい」と願っている自分がいることに気づいた。しかし、同時にあの人と会話できるかもしれないということに期待している自分もいた。
静寂に包まれた部屋に、電話の音と時計の秒針が動く音だけが空中の空気を揺るがしている。
ピッ
相手が電話に出た音だ
ブルー
「…もしもし…?」
レッド
「ッ…!も、もしもし
あの…人探しのポスターを見たのですが…」
思わず声が震える
ブルー
「あぁ…!
ッ…!もしかして、助けてくれた本人ですか…?」
レッド
「は、はい…!」
ブルー
「ッ…そうですか…!!そのことについて…本当に…ありがとうございます…!」
少し低く、落ち着いていて曇ったような声だ。
あのとき、声を張り上げても届かなかった
僕の声が
今、届いている。
そこからの話は早く、2日後に彼の自宅に訪ねることが決まった。あのあとどのように会話したかは緊張のしすぎでよく覚えていないが、
レッド
「落ち着く声だったな…」
このことだけは、耳に残っている。