注意
・この物語はフィクションです。現実のあらゆるものとは一切関係ありません。
・便宜上🇬🇧🇫🇷となっていますが、お互い恋愛感情はないタイプの🇬🇧さんと🇫🇷さんです。
・また、作中において現実とは異なる大幅な歴史改変がなされています。
↳大まかに言うと21世紀になっても大英帝国が存続していたスチームパンクな世界です。(スチームパンクに関してはそういった描写があまりないので、気にしなくても大丈夫です。)
以上をご了承の上で読んで頂けますと幸いです。
いつも通りの特に代わり映えのない午前11時55分。定刻通りであるならば、じきにビックベンが正午を報せる鐘を鳴り響かせ始めるだろうこの時間。
私はこれまた代わり映えのない仕事をいつも通りに捌いていた。
正直つまらないが、私の栄華を極め続けるように歴史の歯車を廻す為には仕方のないことである。
まぁ、そろそろキリも良いところだ、昼食でも食べる事にしようか、、、なんて考えていると、代わり映えのない日常に新たな風、招かれざる客人がやってきた。
「Bonjour,イギリス。」
「、、、Hello,フランス。今日は訪問の予定等は無かったと思いますが。」
「えぇ、無かったわ。だからこうして休憩時間に来るんじゃない。」
本当にこの国は、、、全くもって理解不能である。
「成る程、天才的ですね。そんなにも仕事が早く終わるだなんて!」
馬鹿と天才はなんとやら、どうせ仕事をほっぽり出して来ているのだろうな。
「あら、天下の大英帝国様はまだ仕事が山積みなのね!、、、まぁ、私は今日は休暇よ。」
「時間は有限です、折角の休暇ならもっと有意義な事に使ってみては?時計を売って差し上げましょうか?」
「お生憎様、時計には事足りてるの。それに、これはとっても有意義な時間の使い方よ!」
「はぁ、私の迷惑は勘定に入れないんですね。実にあなたらしい、有意義の意味を今一度調べてみてはどうでしょう。」
「入れる訳無いじゃない。、、、ちょっとつつけば面白くなる男をつつくのはとても有意義でしょ?」
「殴りますよ。」
女性に手を上げるなんて紳士の風上にも置けないと言われてしまうだろうが、ムカつくものは仕方が無い。
まぁ幸か不幸か、彼女とは度々こんな会話をしている気がするので怒られることは無いだろう。
というか、怒られたら本当に喧嘩である。
「これだから堪え性の無い男は、、、こんな美人に手を上げるなんて酷いんじゃない?、、、ふふっ」
「ははっ別に良いでしょう?あなたは私にとって素敵なパートナーなのだから!」
「、、、あんたの言う素敵なパートナーって、要は格下って事でしょ?凄いムカつくわね!」
「そうですか。ですが事実を捻じ曲げることは出来ませんから、諦めてくださいね。」
実際、件の普仏戦争なんて言われる戦争から今日に至るまでに彼女の、フランスという国の武力は衰え、彼女の自慢の陸軍でさえお世辞にも私と渡り合うことすら出来ない状態である。
そんな有様のかつての敵国を、私が格下扱いしない理由がないのだ。まぁ勿論、今は表面上は仲良くしている事にしているが。(断じて、本当に仲が良いわけではない。)
「はっ、よく言うわね。あんたも落日を見る寸前の癖に。」
「、、、あぁ言えばこう言う、もう帰ってくださいよ。というか帰れ。」
「まぁまぁ、ちょっと一服付き合いなさいよ。そしたらお望み通り帰ってあげるわ。」
「お生憎様ですが、私はあなたと違って忙しいんですよ。だから諦めてくださいね。」
「もう、紳士なら客人をもてなすのが筋でしょ?それとも、そんな余裕すらもないの?」
あぁ、この国はどこまでヒトを舐めて小馬鹿にすれば気がすむのだろう。
私よりも弱いくせに、一度立場をわからせてやろうか、、、
だが仕方がない、ここでこれ以上声を荒げてしまえば彼女の思う壺である。ここは一服付き合ってやるとしよう。
「はぁ、、、仕方ないですね。火が消えたらすぐ追い出しますよ。」
「えぇ、ありがとう!」
そういうと、あろうことか彼女はこの場で紙煙草とガスライターを取り出した。
「ちょっと、まさかこの場で吸うつもりですか?」
「えぇ、何か問題が?」
「えぇ、とても。この部屋は火気厳禁です、禁煙です。」
「あら、そうなのね。」
重要な書類も多くある書斎で火を扱うなんて正気の沙汰じゃない。まぁ、実態としては仕事をしながら吸う者が多いのだが。なんて嘆かわしい事だろう。
というか、、、
「あなた、私が仕事中に煙草を吸わないの知ってますよね?」
「そうだったかしら?」
「えぇ、そうですよ。」
白々しいにも程がある、、、まぁ、いつもの事だから良いけれども。
「まぁ良いわ、吸えるところまで案内して頂戴。」
「えぇ、、、この部屋のベランダ、そこは吸えますから先に行っていてください。仕事を片付けないと行けないので。」
「はいはーい。」
そう言うと、彼女は足早にベランダへと出ていった。
「はぁ、、、やっとひと息つける。」
彼女の、フランスの唐突な訪問には困ったものである。
彼女と言う招かれざる新たな風のせいでいつも通りの、代わり映えしない素晴らしい1日が台無しだ。
まぁ良い、今日は一服付き合いさえすれば素晴らしい理由を以て彼女を追い出せる。とっとと吸って、追い出してしまおう。
そう胸に刻み、心做しか軽い足で私はベランダへ向かった。
ベランダへ出ると同時に、丁度ビックベンが正午を報せる鐘を響かせ始めた。
幸か不幸か(9割9分は幸)、どうやらフランスが来てからまだ5分しか経っていないらしい。
そして当のフランス本人は、丁度煙草に火をつけようとしているところのようだ。
「あら、遅かったわね。」
「これでも大分急いだんですが、、、まぁ、すいません。」
「別に、怒ってる訳じゃないわ。」
「そうですか。」
そう言うと、彼女は何を言うでもなく、ロンドンの風景へと目を向けたので、私はパイプとオイルライターを取り出し、火をつけた。葉は前回の残りだが、まぁ良いだろう。
、、、やはり問題はない、いつも通りの愛しい味だ。
なんて、1人浸っていると彼女がまた口を開いた。
「、、、やっぱり、いつ来てもここは曇りね。どれだけ快晴の日でも、ここは二百年以上前からずっと曇り。」
「えぇ、そうでしょう?この曇りは私の誇りです。」
「、、、曇り空よりももっと誇れるものはないのかしら。」
「えぇ。だって、この人工的な曇り空は私の栄華の象徴ですから。」
このロンドンに建ち並ぶ工場から発される蒸気の曇りは、産業革命から今日に至るまでの私の栄華を分かり易く知らしめる、素晴らしいものだ。
これ以上の大英帝国的な誇りは無いだろう。
「あぁそう、、、でも偶には太陽が浴びたくならないかしら?」
「そりゃあなりますよ。だから植民地があるんです。」
「じゃあ、その植民地に独立されそうな今の状況は大変ね。」
「そりゃあもう、大変ですよ?でも既にそれらを失った誰かさんよりはマシでしょう。」
「中々言うじゃない。、、、まぁ、精々頑張ることね。後さっきは言いすぎたわ、ごめんなさい。」
「別に良いですよ。、、、まぁ、私はイカロスになるつもりはありませんのでご心配なさらず。」
太陽の沈まぬこの大帝国の栄華を、歴史を、そんな簡単に落日させ幕を降ろすわけにはいかないのだ。
「、、、これは独り言だけど、弾圧は辞めといた方が良いわ。」
「やるとどうなるんです?」
「革命が起きて全ての植民地が独立していくわ。」
彼女は遠い目をしながらそう答えた。
「、、、実体験ですか?」
「酷いわ、知ってるくせに!あんたが独立派の支援してたの私知ってるんだからね!」
「えぇ、アレは新兵器の実戦投入が出来て素晴らしい日々でしたね!」
整然と並ぶ歯車達と、それを動かす為の蒸気機関で構成された素晴らしく、愛おしい新たな技術の結晶を実際に使うのはとても心が躍って、中々楽しいものだった。(彼女に対する罪悪感を全て葬ってしまうぐらいに。)
「ほんと、性格悪いんだから、、、まぁそこが面白いから良いけどさ。」
「性格に関してはあなたも大分素敵だと思いますよ。」
「知ってる。、、、って、あら?もう煙草が短くなってしまったわ。」
そう言う彼女の手元を見ると、確かに大分燃え尽きてしまっていた。
「なら、そろそろ帰りますか?」
「えぇ、そうね。」
「あぁ、でも最後に1つ聞いていい?」
「えぇ、どうぞ。」
「、、、本当は、どれだけ足掻いても永遠に今のまま繁栄し続けるなんて無理だって解ってるんじゃないの?」
なんということだろう、とんでもなく恐ろしい質問をされてしまった。
彼女の全てを見透かすような、それでいて真意を感じさせない視線が脳に突き刺さってとても痛い。
きっと、私は今とんでもなく間抜けな顔をしている事だろう。
とりあえず、彼女の真意を探ろうか。
「、、、それを聞いてどうするつもりですか?」
「別に、何も。ただの好奇心よ。」
「、、、解っているか解っていないかで言えば、間違いなく解っていますよ。えぇ、それは認めます。」
「あら意外、素直に認めるのね。」
私は愚者ではない。この長い歴史から大帝国の行く末なんて幾度も見て、読んで、理解している。
だがそれは感情だとか、そういうものを抜きにした言葉だ。
極めて心を欠いていると私は思ってしまう。(自分で言うのもアレだが私は案外ロマンチストなのだ。)
だから私は認めつつもこう言う。
「えぇ、ですが私は、私達は国ですよ?繁栄を求めずして何を求めるのでしょう。」
「それは、、、どうしようもない本能ね!私もずっと渇望しているわ。」
「そうでしょう?ですがこれ以上の栄華を求めてしまえば本当にイカロスの様に落ちてしまうでしょうから、私は今の千篇一律を保って歴史の歯車を廻すのです。」
「成る程ね。、、、まぁ、一応応援しといてあげる。」
「上からなのが気に入りませんが、、、まぁ、ありがとうございます。」
「イギリスが素直にお礼言うとか、、、明日の天気は槍かしら?」
「やっぱり殴っていいですか?」
偶には素直にお礼を言ってやろうと思えばこれだ。
本当に彼女はつくづくムカつく国である。
「じゃあ、そろそろ帰るわね。」
「えぇ、どうぞ。」
「あら、見送ってはくれないの?」
「えぇ、私はあなたと違って忙しいので。」
「そう、、、まぁ良いわ。それじゃあ、Au revoir.イギリス。」
「えぇ、Good bye.フランス。」
そう言うと、彼女は足早に帰っていった。
______
なんて、たった1年前の事を何故今になって思い出してしまったのだろうか、、、
私は、たったの1年で彼女に話した思想から乖離してしまったらしい。
廻した歯車が狂って、欠けてしまった様なこの惨状は何だ?私の輝かしい称号は何処だ、、、?
いや、わかっている、わからなければならない。
私は栄華を求めすぎて、イカロスとなってしまったのだ。
「ははっ、、、全て終わりだ!帝国はほぼ全ての領土を失った!私の歯車は全て止まってしまった、、、!」
なんて絶望にも近い悔しさ、己の愚かさに打ちひしがれていると、今最も会いたくない存在に出会ってしまった。
「Bonjour,イギリス。それとも、ちゃんと大英帝国と呼んであげたほうが良いかしら?」
「、、、Hello,フランス。申し訳ないですが、煽りたいなら後日にしてください。 」
「、、、相当キテるのね、ごめんなさい。でも缶コーヒー上げるから、とりあえず落ち着いてくれない?」
そう言うと、フランスは私に缶コーヒーを投げ渡してきた。あぁ、本当にこの国は雑だ。
だが、この国の雑な優しさが今の私には少し、心地よく感じてしまう。(絶対に言ってはやらないが。)
「、、、ありがとうございます。それで、なんの用ですか?」
「別に、用なんて無いわ。まぁ強いて言うなら、話を聞いてあげに来たぐらいかしら?邪魔なら帰ってあげるわよ。」
「、、、今回はその言葉に甘えさせて頂くことにします。」
「そう、、、あっ、ライターある?」
そう言いながら、彼女は煙草を取り出した。
普段の私であれば止めるべきだろうが、 今日はもう、どうでもいい。 ガスでは無いが貸してやろう。
「オイルライターでよければどうぞ。」
「あら意外、てっきり断られると思ったわ。」
「今日は特別です。」
「そう、、、嫌な特別ね。」
そう言うと彼女は、煙草に火を点け、吹かし始めた。
そんな彼女を見ていると、何故だか頭では理解していた筈の弱い疑問達が出てきてしまう。
「、、、私は何を間違えたんでしょうね。」
「、、、強いて言うなら、あんたのやり方は時代遅れだった。この言葉に尽きるんじゃないかしら。」
「やっぱり?私もそんな気はしていたんです。それなのに私は、、、昔ながらの栄華を守りたかったが為に、結局イカロスとなってしまった。」
私はただ、この父から受け継いだ、”大英帝国”という栄華を守りたかった。それだけなのだ。
まぁ、結局守れなかったが、、、
「、、、私が言うのもアレだけどイギリス、あんたは良く頑張ってたと思うわ。それに、イギリスという国が滅んだ訳じゃないのだから、きっとなんとかなるわよ。、、、というか、なってくれないと困る。」
「何故あなたが困るんですか。敵なんて、減ったほうが良いでしょう?」
結局の所、私とフランスは敵同士だった国だ。
どうせ今も敵だと思っているに違いない。
なのに何故、困ると言うのだろう。
そんな私の考えを見透かすかの様に、彼女は答えた。
「だって、私と張り合えるのなんてあんたぐらいしか居ないじゃない!ライバルが居ない世界はきっとつまらないわ。」
「ライバル、、、ですか、、、?」
「、、、もしかして私、ライバル扱いされてない?舐められたものね、、、」
「あぁ、いえ、、、ライバル、、、ライバルですか。、、、ふふっ。」
「何笑ってんのよ。殴るわよ?」
「ふふっごめんなさい。あなたもそう思ってくれていた事が、どうにも嬉しくて。」
お互い張り合って、時に敵対、時に共闘する。そんな、どうにも素敵な関係性であると彼女が、フランスが言ってくれた事が私はどうにも嬉しくて仕方がないのだ。
「、、、やっぱり、素直なイギリスは気持ち悪いわね。殴って良いかしら?」
「えぇどうぞ、まぁその時は私もあなたを殴りますがね。」
「何時ものイギリスね。、、、というか、イギリス。」
「なんで」
彼女と話してい 少しばかり取り戻した調子で日常的な応酬をすると、彼女がまた別の話を切り出した。
「私とイギリス がライバルだって言ってくれたのは、あんたよね?なんで忘れてるのよ。」
「、、、そうでしたっけ?」
「えぇ、そうよ?はぁ 、、、覚えてないなら良いわ、あんたの脳が老いたって事ね!」
「それを言うなら貴方の脳も大分老いているのでは?フランス。」
なんだかんだで200年以上は生きているのだし、私が老人であるなら彼女もそうであるべきだ。
「それでも、あんたの方が年増でしょうに。」
「えぇ、年上を敬ってください。」
「やっぱ今のナシ!あんたを敬うなんて死んでもごめんだわ!」
「奇遇ですね、私もあなたに敬われるぐらいなら死にます。私達似た者同士ですね!」
「一旦死んでくれる?」
酷いものだ、友好の言葉を口にしたら死ねだなんて。まぁ私も同じ事を彼女に言われたら吐くだろうけど。
「はぁ、、、なんかもう元気そうだし帰るわね。」
「えぇ、どうぞ。」
「あら酷い、今日も見送ってくれないの?」
「これからいつも以上に忙しくなるんですよ。」
「、、、まぁ頑張ってね。それじゃあ、Au revoir.イギリス。」
「えぇ、Good bye.フランス。、、、それと、ありがとうございました。」
そう言うと、彼女は一瞬驚いた顔をしてから微笑み、1年前と全く同じ様に去っていった。
そういえば、さっきは覚えていないフリをしたが私は彼女にライバルだと言ったことを覚えている。
あの時は確か、彼女の帝国が滅んだ時だったか。
先の私の様に項垂れている彼女を励ますためにこう言ったのだ。
私のライバルがこの程度でくたばってどうするのか、と。
正直、自分でも励ましの言葉としては可笑しい事はわかっているが、彼女に上辺だけの励ましなんて届かない事は解っていたし、送る気すらもなかったのだ。
まぁ実際、この言葉で彼女は上辺を取り繕えるぐらいにはなったし、我ながら良い仕事をしたと今でも思う。
まぁ、だから彼女は私の所へ来てくれたのだろう。あの借りを返すべくと。
普段は気に食わないが、彼女はなんだかんだで義理堅さのある国なのだ。
よし、そろそろまた立て直し作業をしよう。
そして今度は私が彼女に絡みに行ってやろうか。
結局、千篇一律の現実等有りはしないのだから、少しぐらいは歯車廻しなんて、サボってしまっても良いだろう。
さぁ先ずは、この愛おしい曇り空を払ってしまおうか!
おまけ:大まかな世界観設定(Q&A形式で進んでいきます。)
Q.どういう歴史を辿っている世界なの?
A.21世紀まで大英帝国が存続されていた世界。もっと細かく言うと、大抵の物事が🇬🇧優位に進んでいった歴史の世界。
けれども歴史の修正力には抗えず、本編で崩壊。史実よりも真っ当に酷い壊れ方をした。(植民地全独立&味方ナシで疲弊してそのままドカーン、、、と行った感じ。)
ぶっちゃけ史実が一番🇬🇧にとってマシな崩壊だよなぁとは思う。(個人の感想)
Q.スチームパンク要素必要だった?
A.必要だった。
というか、スチパンな🇬🇧さん🇫🇷さんが見たいが為に書き始めたのがこれ。なのにどうしてこうなった、、、
ちなみに、このスチームパンク要素を入れるために歴史が雑に大幅改変されたという経緯がある。
🇬🇧優位に物事が進んだ世界
↳🇬🇧主導で蒸気エンジンと共に文明が進んでいった世界
と行った感じで。正直スチパン要素を文章だけで表現するのムズい。
Q.この🇬🇧さんと🇫🇷さんはくっつかないの?
A.絶対くっつかない。 友達以上の親愛は有れど、未来永劫ライバル同士!!!(過激派)
コメント
1件
Q&Aまでついてるとか最高