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夏だ、海だ、オレは思春期の男子高校生だ──!

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夏だ、海だ、オレは思春期の男子高校生だ──!

10 - 10/押した背中と掻き消した期待

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2025年02月22日

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「えっ──」3人は呆気にとられたように、オレを見て硬直していた。

「…前に、みんなで海水浴に行っただろう?…その日から、なんとなくだが……おかしいんだ。」

「…おかしい?」

みんなが真剣に話を聞いてくれている中、えむは不思議そうな顔をしてオレにそう問う。

「ああ…。3人の様子が、なんだか…気まずそう、というか」

オレがそう言うと、寧々は ばつが悪そうに下に目線を逸らした。だが、そんな寧々に構わずオレは話を続ける。

「…これは、完全なる推測になってしまうのだが」

「お前たち、何か悩んでいるだろう。…それも、みんな、大きなことで」

「………」

3人は心当たりがあるのか、一斉に黙り込んだ。

「(まずい、やはり3対1は厳しいか……)」

そう立ち止まってしまいそうになっている時、一番はじめに声を上げたのはえむだった。

「…あたしは、…みんなが心配だったんだ。司くんも寧々ちゃんも類くんも、少しだけ、しょぼぼ〜んって、してたから」

「えむ……」

寧々は少しだけ明るい顔になったものの、その後すぐに落ち込んでいる顔へと戻る。心配してくれて嬉しかったが、悩みを言えないからって落ち込んでいたのか。それとも、大切な幼馴染が悲しい顔をしていて、それが嫌だったのか。

「…だから、教えてほしいな!…みんなが、かなしいお顔の理由。」

えむは「ねっ司くん」とでも言うように、オレに目線を合わせてニコッと笑った。

「…ごめん」

えむと一緒にニコニコしてられるのも束の間で、寧々の謝罪が聞こえてくる。それと同時に、目の前にいるえむの表情も落ち込んでいった。

「……ごめん、…わたしからは、言えない」

「『寧々ちゃんからは』……?」

えむはその寧々の言葉の含みが気になったのか寧々にそう問いかけたが、寧々はその問いに答えないまま、類の方を向いて黙り込んだ。

「………」

そんな寧々の様子を見て、なんとなく感づく。

「(…やはり、問題の中心は類なのか)」

と。

─類が抱えているものは、寧々に共有している…

つまり、類は「寧々になら相談できるような悩み事」を抱えている訳だ。それも、オレやえむのことで。

オレは頭を抱える。「だったら、悩みを抱えている本人に言えるわけがないじゃないか」と。だから、寧々には話せたんじゃないかと。

俯いて頭を抱えるオレをよそに、類は謝罪の言葉を述べた後、予想外の言葉を放つ。

「…すまない、僕が原因で、そんなにみんなを悩ませていた だなんて」

「けど、僕の悩みは個人的なものなんだ。だから、…明日、本人に言ってみるよ。…ありがとう」

勿体ぶったくせに、意外にもあっさりした答えが返ってきた。類本人が「背中を押してほしかった」とけじめがついたような表情で笑ってくれたので安心する。だがさっきのあっさりした返事はきっと、自分の不安や焦りをごまかすためのものだったのだろう。…まあ、類が吹っ切ったならいいか。

─そう個人的に落ち着きを取り戻し、ふと類の方に視線を向ける。するとそこには、いつもどおりの笑顔を浮かべた類がいた。さっきまでの不安な表情とは全くもって別の、この場所に安心している笑顔の類。

「…そうか。頑張るんだぞ」

「フフ、どうも」

その表情に謎の寂しさを覚えたが、類が笑ってくれるなら何よりだ。

「(よかった……本当によかった)」

仲間の笑顔を確認し、胸を撫で下ろした。

えむも、類も…寧々は多少心配そうな表情をしているが、それはきっと幼馴染としての心配だろう。…みんな、笑ってくれて…本当によかった。

「…ありがとう。みんな、話してくれて。…それぞれ、辛い気持ちはあっただろうに…」

頑張って話してくれた仲間に対する強い想いが先行し、思わず3人を抱きしめてしまった。



      ・  ・  ・



帰り道。幼馴染に心配そうな顔をされた。

「…類、本当によかったの?」

「……うん」

いつもなら母音を2つ並べたような返事をするのだが、今はそうも行かず、まるで オモチャを取られ拗ねている子供みたいな返事をしてしまう。

それは、翌日 今もずっと片想いをしている相手へ告白をするからか、今日校門の前で「学習に不要なものを持ち込むな」と司くんじゃない風紀委員に怒られてしまったからか。それとも、それを司くんに愚痴ると「今日は当番じゃないからな」なんて冷めた回答をされてしまったからか。

「どうせ、このまま言わなくても後悔するだけだからね。先延ばしにするより、もう言ってしまったほうがいい。…結果は現在も未来も、変わらないだろうから」

夕焼け空にペンキで白を塗ったようなざらついた雲の行く末を眺めながら、僕と司くんのこれからを予想する。

「(告白しても、司くんに微妙な顔をされて終わりだろうけど)」

なんて、愛する未来のスターにすら期待することができないまま、僕は当日を迎えた。

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