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「お兄様…なんだか、後ろから殺気が」
「そうか…?」
マジカルシークレット殺人科教官有栖院リリーとその兄相馬が、2人で敵を見つけようと敷地内を歩いていた。
そのとき、後方から何か殺気を感じた。
「お兄様…見てきてくださらないかしら…」
「…わかった。2人で乗り込もう」
「え?」
「え?」
「お兄様が1人で行ってくるのではなくって?」
「2人で行くんだ。こんな真っ暗なんだから、もしかしたら逸れてしまうかもしれないだろ」
「た、確かに…では。殺人魔法〈モルト〉」
リリーは後方に向かって魔法をかけた。
「…ゔゔっ…見つかったか…」
「やっぱりいたのか。イポクリジーアの…」
「あ、殺人科のデプスと申します…」
「お兄様!退治してくださいまし!」
「なんで俺だけ?リリーもほら、一緒に。教官だろう?」
「うっ…」
兄に押され、リリーは一歩前に出る。見事に魔法が直撃してしまったデプスは、口から血が出ていて、血の味がまずい…というような顔をしていた。
「お嬢様方…兄妹仲がいいのは良いんだけど、こっちも仕事だし…すぐに終わらせるよ」
「ふん!こちらにはお兄様もいらっしゃるのだから!負けるはずありませんわ」
「そうかい。でもな、イポクリジーアの魔法には毒があるからな。そっちの魔法より殺しの能力が高いんだよ」
「…そんなの、彼岸花から聞きましたわ。なるべく、魔法にはかからないほうがよろしいと。最悪、死に至る可能性もあるということも、承知済みですわ」
「ああそうかいお嬢さん。じゃあ、こっちの毒を存分に浴びさせてやるよ。毒魔法〈ヴェレーノ〉」
「リリー!」
「お兄様!!」
相馬がリリーの前に出、彼女を庇う。魔法を喰らった相馬は、うぅ、と唸りながら倒れ込む。
「防御魔法を掛ければ良いものを…ああ、出血が止まらない…!お兄様!!」
「…リリー…逃げろ…都月様に、知らせて…」
「お兄様を置いていくことなどできません!」
「…ああそうかい。じゃあ、お望み通り兄妹仲良くあの世行きだ。毒魔法〈ヴェレーノ〉」
「リリー!防御…魔法…を…!」
「いいえ、私だけ助かるだなんてとても!!」
リリーは自分から魔法を浴び、大量の血液を溢し、倒れ込んだ。
2人は吸血鬼。血がなくなれば干からびて死んでしまう。荒くなる呼吸の中、2人は抱き合った。
「じゃあここはもうこれで良いか…毒も撒いたし。うちのボスの計画は全て成功だな」
「…逃しは…しませんわ…!」
リリーが咄嗟にデプスに噛みついた。
「ゔ…っ!!」
デプスは倒れ込み、噛まれた場所を強く抑えながら悲鳴を上げた。
リリーの瞳は赤くなり、吸血鬼の力を取り戻し、一瞬生き返ったような感覚がしたが、すぐに兄の元に倒れ込んだ。
「おに…い…さま…仇は打ちましたわ…だから…」
「あとは…皆に任せ…眠ろう」
相馬がリリーの瞳に手を置き、目を閉じた
兄妹2人、ぎゅっと手を繋ぎ、離れず逝った。