「ビスメル!!」
マジカルシークレット普通科たちは、ちょうどビスメルと遭遇していた。
そこでひらりが咄嗟に指示を出す。
「みんな!一回バラバラになろう!連絡が取れるようなら、取って!そして、かなりやばい状況なら、本部の都月のところまで行って!ここは私に任せて…」
ひらりはそう指示を出し、暗闇に消えた。次の瞬間、千代子の電話が繋がった。
「繋がったっ!もしもしっ、岸さんっ!?」
『如月…か?』
「そうですっ!」
『逃げ…ろ…できれ…ば…遠くの方…まで…』
電話はそこで切れた。
「どうだった?」
遥人が千代子にそう尋ねる。
「一瞬つながりましたけど…岸さんの声も途切れ途切れで息も荒くて…一回これは都月さんのところに行ったほうがいいかも…」
「そうか。凪野!お前はここに残ってろ!俺と如月で行ってくる」
「え?でも…」
「いいから!ここは任せたぞ!」
「あっ、はい!」
遥人と千代子はまっすぐ本部の方まで走って行った。
1人ぽつんと残された蒼は、とりあえずひらりとビスメルを追うことにした。
「教官!私たちも戦いに加勢したほうがいいんでしょうか…」
マジカルシークレット魔法科、ウアンが教官の彼岸花にそう尋ねる。彼岸花は少しの間黙っていたが、口を開きこう言った。
「…いいえ。私たちは結界を守るのが優先。これが壊れたら、私たちはあのどす黒い何かによって、全員死ぬ」
「で、でも…」
「窓を覗いてみて。外はあの液体によって、全てが壊れてる、人も、建物も」
「…」
窓の外を見たウアンは、黙り込んだ。そして、こくんと頷いた。
その様子を見た彼岸花は、安心して立ち上がった。
「…けれど、私は少し様子を見に行ってくるわ。あなたはここをお願いね」
「え?」
「ごめんなさい、少しだけ…なんだか、嫌な予感がして。すぐ戻るわ」
「あ、はい…」
彼岸花は本部から出て行き、歩き始めた。
(さっきからなんだか体調が…魂が揺らいでいる感覚がする。私を生き返らせたのは彩さん…もしあの人の身に何かあったのなら、私は…私も、命が危ない)
彼岸花が張った強力な結界。けれどそれには一つだけ欠点があった。
それは、彼岸花が命を落としたら、結界も壊れてしまうということ。それだけは、決して防がなければいけなかった。
その時、死角から。
「!」
ヒュン、と刃物が通り過ぎる音がした。刃物は彼岸花に少し掠り、おかしな方向へと飛んでいった。
「ひえぇ…み、見つけました、エイジ先輩…でも私にできるのは、探知だけだし…殺せませんよぉ…うぅ…」
「…?」
彼岸花に刃物を投げたのはまだ12かそこらの幼い少女。隣には、彼女の先輩のような男もいる。
「…まあ見つけたことはよろしいです。そうですね…あとは私がやりましょう」
「…どちら様ですか…?」
「失礼、私はエイジと申します。あなたがこの結界を張っているんですよね?つまり、あなたを殺せばこの結界が壊れると。違います?」
「…そうですけれど」
「では、殺しましょうか…あなたは、ここの誘惑科教官に助けられた死霊なんですってね。…では、彼女と同じ目に、合わせてあげましょう…」
「…あなたが、彩さんを殺したの?」
「はい…まあ、私の毒でね。あなたもこれから同じ目にあってもらいますよ」
にこりとエイジは微笑む。彼岸花は帽子を手で握り締め、きっと睨む。
「そう簡単にはいかないと思いますけど」
「いいや…?私達の毒は強力です」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!