ttさんがシェアハウスから姿を消し、それに続くようにjpさんも顔を出さなくなった。
urさんもyaくんもどこかへ出かけたまま、シェアハウスに帰ってこなかった。
svさんが事務所に確認したところ4人とも音信不通と聞かされ、安否は誰もわかっていないようだった。
jpさんの自宅に行った時にはもう売りに出されて空っぽの状態で。
数日ぶりにシェアハウスに戻ってきたyaくんだったが、何を聞かれても『話しかけんな』と言うだけで、引きこもって作業をすると夜にはどこかへ出て行くようになった。
表情を失い、メンバーとの接触を避けるようになっていた小さな背中に、誰も声をかけられなくなった。
そのうちグループは解散した。
これが半年前だ。
この時系列とttさんのうわ言や首の傷は、
jpさんとttさんに何があったかを
yaくんとurさんに何があったかを
充分に察することができた。
半年間欠けていたパズルのピースがはまると同時に、これは大袈裟で馬鹿げた妄想であってほしいと願った。
ある日の仕事終わり、近くの喫茶店でjpさんと会った。
どこか後ろめたさを感じているように僕から目を逸らして小さく座っている。
「…グループの件は、ごめんなさい。無責任すぎたって反省してる。」
「…そうですね…。でもお元気そうで安心しました。」
「ttさんは変わりないですか?」
「うん。ttを助けてくれてありがとう。no兄が見つけてくれなかったらと思うと今でもゾッとするよ。本当にありがとう」
「いえいえ、当然のことをしたまでなので」
「一緒に暮らしてるそうですね」
「うん。また二人でやり直そうって、ttと動画作ったりしてるよ。一から始めるのはやっぱり大変だけど、すごく楽しい」
jpさんは少し笑った。
ttさんがそばにいて幸せなんだろう、この人は。
でもttさんは?
ー違う!俺ら、愛し合っとんねん!心配することは何もない!ー
僕の質問に声を荒げたttさんの目の奥に、怯えと虚飾が見えた気がした。
半年間の空虚感と、ttさんの涙。
目の前で頬を緩める男に静かな怒りが沸いた。
「jpさん、単刀直入に聞きます。」
「ttさんの首の傷はあなたが付けたものですか?」
jpさんは目を伏せると、グラスに口をつけたまま落ち着いた声で言った。
「…なんのこと?」
「うなされるttさん、首の傷、そして半年前のこと。これらから僕が推測しただけです。決してttさんが話してくれたわけではありません」
「あなた、ttさんを閉じ込めてたんじゃないですか?」
「urさんとyaくんにも危害を加え、3人を支配していた。違いますか?」
「…、、その、、」
泳ぐ目を隠すように、jpさんは瞼を掻いた。
その明らかに動揺した様子を見て、僕の大袈裟で馬鹿げた妄想が現実だったのだと、体が沈み込む感覚がした。
しばらく黙っていたjpさんは、観念したようにうなだれるとぽつぽつと話し出した。
「…言い訳はしない、あの時の俺は本当におかしかった」
「yaくんを奴隷のように扱って、urりんは命の危険すらあった。一生残る後遺症があるんだ…」
「それでも二人は許してくれて、、だけど決して忘れたわけじゃない。これからもちゃんと二人に償っていきたい」
「、、ttは、、、俺の歪んだ思いを無理やり押し付けて、大事なものを全て俺が奪った。あのttが死にたいって、、そう言わせちゃったんだ」
「それでも自力で這い上がってきて、俺のことを救ってくれた。今も俺のそばにいてくれて、こんな俺を愛してくれているんだ」
「…」
「俺はttに全てを捧げる。俺は死ぬまでttを大切にするし、絶対にttを泣かせない」
顔をあげたjpさんはなんの迷いも虚飾もなくはっきりとそう言った。
怒りはふつふつと音を立てる。
自分でも抑えきれない。
「…今もttさんは過去に囚われ苦しんでいる」
「わかってる、だから俺は、」
「ttさんは未だあなたに怯え、自分と周りを守るために自分をごまかしあなたを愛している、そうじゃないですか?」
「…ぇ、、、」
jpさんは瞬きもせずこちらを見ていた。
追い詰める、そんな思いで表情を消した声で言う。
「あなたがttさんのためにすべき事は愛する事ですか?本当はわかってるでしょう?」
ttさんの愛情を信じて疑わず、離したくないからと未だにその身勝手さでttさんを縛り付けている。
本当にこの人は愚かで、反吐が出る。
コメント
8件
今回も素敵でした🥹🥹 jpさんの話は一見覚悟と誠実さに見えますが、noさんからは綺麗事と甘えに感じられたのでは… 穏やかに怒りを現すところとても好きです🤍またまた考察が捗ります🤍 noさんは今は聞き手ですが、今後話し手になるんでしょうか…noさん自身の気持ちが気になります🥺
もしよければなんですが、私のアカウントのほうで宣伝してもいいですか、?勝手ですが、こんなにもいい作品はたくさんの人に見てもらいたいので、
うわぁ…noさんは正常者なんだろうな、かと言ってjpさんも不器用ながらttさんを幸せにしようとしてる、ttさんはどう思ってるかですよね…でもこれ本人に言ったら絶対大丈夫って言う気がする…、今回もとても良かったです、!続き楽しみに待ってます!