ttが再びnoと会ったのはあれからひと月経たないくらいだった。
本当は早くから連絡をもらっていたのだが、noの休みとjpの不在が合う日が今日しかなかった。
やましいことはないのだけど、noと会うことは黙ったままjpを見送った。
「気ぃつけてな、jp」
「うん…いってきます」
jpはこの頃明らかに暗くなった。
noの言葉が頭の中で反芻し、ttを素直に見れなくなったのだ。
そんなことを知る由もないttも、jpの様子がおかしいことには気づいていた。
理由を聞いても答えず、「なんでもないよ」と優しく頭を撫でるjp。
もしかしたら、自分のせいでまたjpを不安にさせているのかもしれない。
耳の奥が詰まり縮こまる思いがする。
「…jぁp、ぎゅ」
「ん…」ギュ
jpを安心させるように、ttはいつも通りに甘えてみせた。
待ち合わせの場所に行くと、ジャケットを着込んだnoが立っていた。
こちらに気づいたnoは組んでいた腕を解き、笑顔で手を挙げた。
「ttさん」
「noさん、待たせてごめんな」
「いいえ、待つのも楽しかったので」ニコ
「どこ行くん?」
「僕のお気に入りの場所です、行きましょう」
noはタクシーを捕まえると、ドライバーにスマホを見せて行き先を示した。
店舗ビルやマンションだらけの街並みをしばらく揺られて着いたのは、広い森を有した植物園だった。
「俺、はじめて来たわ」
「緑に囲まれると癒されますよ。平日なのでttさんの苦手な人混みもないです」
園内に入り、noの植物豆知識を聞きながら整備された森の小道を歩く。
小さな野花を愛おしそうに眺めたり、蕾をつけた低木の名の由来について興奮気味に話していたり、ttはそれを見て思わず笑った。
「noさん、ほんま花が好きなんやな」
「すみません、興味なかったですか?でも、ttさんにいつもと違う景色を見てほしいと思ったんです」
「はは、興味はあるで。知識欲はあるからな。最近はちょこちょこ外出てたけど、それでもほとんど家におるし、家でも外でもjpが一緒やからな。新鮮やわ。」
「…いつも一緒なんですね」
「ん。今日みたいなjp個人の用もほとんどないからな。毎日24時間ずっと一緒や」
「…ttさん、幸せですか?」
noの唐突な質問に多少意表を突かれたが、早咲きのひなげしを前に、穏やかに答えた。
「…幸せやで。愛する人と一緒なんや。これ以上の事はない」
「…今日ここを選んだのはもうひとつ理由があります」
noはttに向き合うと、静かに言った。
見上げたnoは、瞳が濡れているように見えた。
「僕の好きなものを見せて、少しでもjpさんのことを忘れて欲しかった。…なんでjpさんの事になるとそんな顔をするんですか?」
「え?」
「jpさんの話をする時、ttさんはどこか辛そうな目をするんです。それを隠すために目を逸らしたり、伏せたりします」
「あなたはそんな人じゃなかったでしょう。いつも真っ直ぐな目をしていたじゃないですか。好きなものになるとことさら」
「先程の言葉も、まるで自分に言い聞かせているようでした」
「ttさん教えて。…本当に幸せ?」
「…」
俺はjpを愛している。
それと同時に怯えている。
jpが求める俺になりきれず、jpがまた堕ちることを。
俺だけじゃなく、周りも巻き込んでしまうことを。
ー愛している。
(怖いから愛するんだろ?)
ー違う、心から愛してるんだ。
(ほんまに?じゃあなんでトラウマが残ってんだ?怖いんだよjpが)
ー違う、あれは過去の話だ。
(嘘だ。お前の愛は歪んでいる)
ーちがう、ちがう…幸せなんだ
心の隙間から聞こえる声と自問自答を繰り返す。
黙ったままのttの頬に、noの暖かい指が触れた。
「…僕ならあなたにそんな顔をさせません」
「ttさん、僕はあなたが好きです」
小道の向こうで緑の木々が音を鳴らす。
吹き抜けた風がひなげしを揺らした。
コメント
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ほんとに繋げ方もお上手過ぎますしそれぞれの視点が気になって止みません、!💗😭感情の書き方やその場の雰囲気も伝わってきて本当に感情移入しちゃいます!!毎日続きが楽しみすぎて学校が長く感じちゃいます🥲✨️
かいていたコメントがエラーで消えました🥲w 今回も素敵でした🤦🏼♀️🤍🤍和名にすることで違和感なく読めました金星さんの知識と文章構成力本当に尊敬してます!! noさん…今日めっちゃ話すじゃんもしかして、と思ったら🤦🏼♀️🤍🤍🤍🤍🤍ttさんからしたら唯一のお兄ちゃんと呼べるnoさんは年齢も相まって他メンとは一線違うんですかね🥹ますますこれからが気になります ほんと好きです🫶🏻応援してます!!