朝。
教室の窓から見える空は、いつもより少しだけ曇っていた。
晴れているはずなのに、光が妙に鈍くて、まるで僕の心みたいだなって思った。
職員室の扉を開けるたびに、誰かの視線が刺さる。
悪意なのか、無関心なのか、もう分からない。
僕の机の上には昨日のままのプリントと、誰かが置いていった匿名のメモ。
「所詮学園長のお気に入りの癖に調子に乗るな」
字は可愛らしいのに、言葉だけが妙に冷たかった。
それでも笑う。
『おはよう』って、出来る限り明るく言う。
そうすれば、少しは“普通”に見えるから。
授業が始まる。
教壇に立って、チョークを握る。
黒板の前に立つと、何故かいつも手が震える。
「〜〜〜は〜〜で〜〜」
自分でも驚くくらい、声が小さい。
一番前の席の佐野くんは、つまらなそうにあくびをした。
「……」
その瞬間、胸の奥に何かが沈んだ。
きっと、僕の言葉なんて誰の心にも届いていない。
それでも、教えることをやめられない。
それしか、僕に出来ることがないから。
昼休み。
凛太郎くんと飯網君と談笑しながらご飯を食べる。
味なんて分からない。
咀嚼音だけが、やけに耳の奥で響いていた。
放課後。
誰もいなくなった廊下を歩くと、窓から差す夕日が床に落ちていた。
長い影が僕を追いかけてくる。
ふと足を止めて、ガラスに映る自分を見た。
――あれ、誰だろう。
やつれた顔、乾いた目。
昔、鏡の中にいた“僕”とはもう違う。
帰り道、空を見上げる。
群青に染まった空が滲んで見えた。
涙なのか、疲れなのか、もう区別がつかない。
それでも、明日も学校へ行く。
行かなきゃいけない。
笑わなきゃいけない。
――“先生”だから。
晴明の一日を書いてみました。
コメント
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病み明の1日……うへへへ(?
ふえっへへへへへ