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次の日は休みだったので、早速英司の家に遊びに行ってみた。英司の家は中学の時たまり場になっていて、みんなが集まってくるのに、英司は寝起きが悪くていつもみんなが来て叩き起されてから渋々起きるような人間だった。
今はと言うと、同じだった。昨日の夜に明日遊びに行くとLINEして、勝手に上がっていいと言われていたので、勝手にお邪魔した。
(鍵閉めろよ!あぶねぇだろ!)と、内心思ったが、なんとなく言わなかった。
昨日見た姿は高校の頃よりもずっと大人びていたのに、寝顔は昔のままだった。
「ほら、慎二!もう3時だけど?休みにしても寝すぎじゃない?」
すーと、まだ寝息を立てている。
(わざとだろこいつ。)
「お!き!ろ!」
今度はバフバフと布団を叩く。
「んあーうるせぇよ………」
「起きろーもう3時だぞー」
急にふっと慎二がこちらを見て睨んできたのでなんだ!?とびっくりした。
「え、なんでいんの…?」
すごく不機嫌そうな声、これも中学の頃から変わらない。寝起きがとても不機嫌なのだ。
「いや、来るって言ったじゃん」
「何で?」
「LINE。昨日。なんなら朝も3じくらいに行くってLINEした。」
「嘘だ………」
LINEの画面を見る慎二。
昨日
千代[明日行っていい?]
[別にいいけど]
千代[やったぁ。じゃあ3時くらいに行くねー
]
[りょ。勝手に入ってきていいから]
今日
千代[慎二。起きてる?]
千代[おーい]
千代[電話]
千代[3時くらいに行くから。]
慎二はスマホを閉じて
「うわ、まじじゃん。」
と言って、はぁ、とため息をつく。
「ちなみに聞くけど千代、来て何すんの。」
相変わらず無愛想な男だなと思う。
まぁ、いつもの事だとも思う。
「んー寝る?暇だし」
いつも慎二の家に行ったら慎二が起きたら私がそのベッドで寝ていた。
「は?」
「は?」
二人の間でとんでもない勘違いが生じている気がしてならなかったが、私はわざと「なんでしょうか?」とでも言いたげな顔をしてやった。
「あ、俺のベッドでお前が寝るってこと?」
「そうだけど?」
またはぁ、とため息をつく慎二
「まぁいいけど、どうぞ。」
と、自分の入っている布団を持って手前を開けてくる慎二。
「いや、どけてよ、私寝るから。」
「いや、俺もまだ寝てぇんだわ。」
さすがにこれはやばい気がしてならなかったが、こんな好機もないし、ましてや私大学生だし、と思いながら静かにお邪魔した。
予想はしっかり外れて、慎二は何もしてこなかった。けれど、慎二の匂いは妙に落ち着いた。柔軟剤と少しだけタバコの交じった匂い。私の邪な思いごと、意識を包み込むように、優しく鼻腔を刺激した。いつの間にか暗くなっていて、時刻は7時過ぎを指していた。随分ぐっすりと眠っていたようで、頭がぼやぼやしている。
部屋の電気は付いていて、いい香りもしていた。天井の光を見ていると意識が段々とはっきりしてきて、ここが慎二の家であることも、いい匂いの正体はラーメンであることも理解した。
「やっと起きたのかよ。飯、食ってくだろ、てか、食ってけ。」
まだ少しぼやっとしているが
「あ、じゃあ食ってくわ。」
と言ってベッドからはい出て、ラーメンを啜った。
9時頃には慎二の部屋を出て、自分の部屋でシャワーを浴びて、2人よりも温もりの少ないベッドに入った。齢若干20にして初めて男の人とベッドに入った。私は彼氏いない歴=年齢だった。
それから頻繁にお互いの家を行き来するようになった。
ある日慎二の家に行っている時に、不意にキスがしてみたくなった。まだしたことがなかったので言い出すなんてのは出来そうになかったが、
「キスでもしますか?」
と、慎二が言ってきた。心が読まれたのかと思った。
お互いの心の中で了承し合って、手に持っていたマグカップをお互いにテーブルに置いた。そして、口付けをした。
キスは段々と深くなり、いつの間にかベッドに押し倒されていた。
「ちょ、っ待って、」
「ダメ?いいよね、俺、初めてなんだけど、お前とならしてみたい。」
「えぇ!?いや、その。」
「何?」
かなり興奮気味の本性むき出しの視線は私を酔わせていった。
「好きな人にこんなことされてなんか、あれだなーといいなぁと思った。」
我ながら微妙な反応をしてしまった。
「なんだそれ」
と慎二は笑った。
その後はお互いの本能のままに犯し犯された。人生初の望んだそれは想像以上に幸せで心地よかった。
英司がどこかで良かったなと言った気がした。