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共依存なるタイプだいぶ好き(?
たらこ
◇
「ねえ、逃げよう」
君からそう言われた時、わたしは君の手を取るしかなかった。
◇
『ねえ、たらこ、どこに行くの』
「わかんない」
ひたすらわたしの手を握りながら走るたらこ。
わたしはそれに着いていくのが精一杯で、自分が聞いたくせにたらこの声も聞こえなかった。
セミが鳴いていてうるさい。まるで、わたしたちを責めているようで、心地が悪い。
「わかんないけど、とりあえず走る、」
『これで、いいのかな。ほんとに』
「じゃあ、あのままだったらどうするの」
走りながら受け答えをする。セミの声に掻き消されて聞こえづらい。
「おれたち、捕まるよ」
『っでも』
「そもそもナマエがわるいんじゃん」
イラついたからって、殴るから。
反論はできなかった。だってそれは、事実であるから。
少しイライラして、母の頭をテーブルに置いてあったガラス製のコップで殴った。理由は少しイラついただけじゃなくて、昨日とか、一昨日とか、毎日色んなことが積み重なって。
それの、限界がきただけで。
わたしはわるくない、
あのひとがわるいの。
『ごめん、ごめんたらこ』
巻き込んで、ごめん。
いまもね、頭にこびりついて離れないの。
あのとき、母をコップで殴ったとき。
ガラスが割れて、破片がちらばって、目の前の母の頭から、赤い液体がだらだらと流れ落ちてるの。
頭が真っ白になって、なにもかんがえれなくて、いちばん最初にしなきゃって思ったのが、たらこに連絡することだったの。
「謝んないでいいよ」
どこまで優しいんだろうか。
「ナマエも悪いけど、母親だって悪いんだから」
気にすんな、と言う彼は、わたしの手をより強く握った。
『ありがと、』
「おまえは、俺が守るから」
◇