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千歌は少し緊張しながら、いつもの場所に向かう。昨日の父との出来事が頭から離れない。
——凪に会ったら楽しい時間を過ごせるのに。
——でも父に知られてしまったら、全部終わってしまう。
校舎裏に着くと、凪は笑顔で手を振っていた。
「先輩!」
千歌も小さく返事をする。
——笑顔を見たいけど、近づくと危ないかもしれない。
「……今日は少しだけ話せますか?」
凪の瞳は期待に満ちている。
千歌は心の中で葛藤し、少し間を置いてから答えた。
「……うん。でも短い時間だけ」
凪は少し残念そうに肩を落とすが、すぐに笑顔で「わかりました!」と返した。
千歌は内心でほっとしつつも、胸の奥に重く残るものを感じる。
——楽しい時間はほんの一瞬。
——父の影は、いつもそばにある。
その日の放課後も、凪の笑顔と自分の胸の痛みが交錯する。
千歌はそれでも、少しずつ、凪との距離を大切に思いながら歩みを進めるしかなかった。