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第4話:古民家とりょうちゃんの生活
若井side
駅で祖母の軽トラックに荷物を積み込ませてもらったものの、祖母の家まではトラックでは入らない細い道が続くということで、結局、十五分ほど歩くことになった。
祖母は軽トラックに乗って、別の道から先行していった。
「なあ、涼架。お前の家、山登りでも降るつもりなのか?結構な坂だぞ」
俺は息を切らして、肩で呼吸を整えていた。写真部の練習くらいしか運動しない俺にとって山道歩きは堪える。
「あはは、ごめんね、若井。都会育ちにはちょっとキツイよね」
涼架は相変わらず涼しい顔で、慣れた足取りで歩く。
「でもね、この道を登り切ったところにあるのが、おばあちゃんの家なんだ」
「それは、期待させる言い方だな」
「本当に期待していいよ。空気が全然違うから!」
涼架の言う通り、坂道を登るにつれて、潮の匂いは薄れ、変わって土と草の、生命力に満ちた匂いが濃くなってきた。
セミの声がやたら大きく聞こえる。
「なあ、お前の家は、この辺の家の中でも古い方なのか?」
「どうだろう。でも築何年かは聞いたことないくらい古いと思うよ。昔ながらの古民家って感じ!」
しばらく急な坂道を登り続け、俺はほとんど無言になっていた。カメラバッグの重さが、肩に食い込む。
「はぁ、はぁ….涼架、お前、体力あるな」
「え?僕、体力あるかな?いつもだらだらしてるって若井に怒られるのに」
涼架ら不思議そうに振り返った。
「そのだらだらしてるってのは、都会での話だろ。この山道に慣れてる時点で、お前は俺よりよっぽど野生児だ」
「あはは!野生児かー。褒め言葉として受け取っておくよ」
ついに坂道が終わり、目の前が開けた。
そこには、周囲の緑に溶け込むように建つ、大きな日本家屋があった。
黒光りする瓦屋根、煤けた木の壁、そして広い庭。想像していた以上に立派な、絵に描いたような古民家だった。
「着いたよ、若井!ここが、僕のばあちゃんの家」
涼架柄誇らしげに胸を張った。
「……すげえな」
俺は息切れを忘れ、思わずカメラを構えた。この佇まい、この空気感。まさに俺が求めていた「時を感じさせる風景」だ。
庭先には、先ほど別れた祖母が立っていて、穏やかな笑顔で手招きしている。
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そして、その足元には、一匹の犬がドテンと座っていた。
「あ、コタツだ!元気にしてた?」
涼架は荷物を放り投げ出すように置いて、犬に向かって駆け寄った。
「キャンキャン」犬は涼架に飛びつき、全身で喜びを表現する。
涼架は犬を抱きしめ、頬を擦りつけた。
「りょうちゃん、おかえり」
祖母が笑いながら言った。
「コテツも、りょうちゃんに会えて嬉しいみたいだね」
俺は、犬に夢中で無邪気に笑う涼架の姿を、ただ見つめていた。
都会では絶対に見せない、完全に力が抜けた自然体の体。
「若井くんも、大変だったね。さあ、中へどうぞ。広いから、ゆっくり休んで」
祖母が俺に声をかけてくれた。
「ありがとうございます。あの、この犬は…」
「この子はコタツだよ。人懐っこいから、若井くんにもすぐ慣れるさ」
涼架はコテツを抱き上げたまま、俺の元に戻ってきた。
「コテツ、この人が若井だよ。僕の友達。若井コテツ、触ってみて!」
俺は少し躊躇しながら、コテツの頭を撫でた。
柔らかい毛並みが指先に触れる。
「じゃあ、上がらせてもらいます」
玄関を上がり、古い木の廊下を歩く。廊下の端には、磨き上げられた縁側が見えた。
涼架はすでに「緑茶の匂いがする!」と言って祖母の後ろをついて回っている。
「若井の部屋は、ここだよ。ゆっくり使ってね」
涼架に案内されたのは、庭に面した、風通しのいい座敷だった。
荷物を置き、ようやく一息ついた俺の耳に、奥の部屋から祖母と涼架の声が聞こえてきた。
「りょうちゃんは、お昼ご飯なにがいいかい?」
「うーん、ばあちゃんの作る煮物と、卵焼き!」
「ああ、いつものね。もう、いつまでたっても子供なんだから」
俺は座敷の窓から庭を眺めながら、思わず笑みがこぼれた。
俺のレンズが捉えるべきものは、景色だけじゃないかもしれない。
次回予告
[ファインダー越しの日常]
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コメント
1件
え、エモ🥹🫶🏻💕