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夏の熱気が襲ってくる。
なんでわざわざ、屋上にしたんだろう。
室内が良かったな。
「 ずっと好きでした、付き合ってください! 」
顔を赤らめながら、そう言った。
もう聞き慣れた台詞。
ずっとっていつから?
私と彼が出会ったのは2か月前のことなのに。
もしかして前世の話でもしてるのかな。
「 えっと、好きになった理由とか聞いてもいい? 」
「 え?…笑顔見たとき、めっちゃ可愛いなって思って。 」
「 そこからっ、気になって。 」
結局見た目か。
大して話したこともないし、当たり前っちゃ当たり前だけど。
「 ごめんなさい。付き合えないです。 」
「 会ってそんなに日にち経ってないし、恋人とかは、慎重に… 」
「 え、笑 学生の恋愛なんだから、そんな真面目に考える必要なくない? 」
へらへらと不快な笑い方をしながら彼は
爆弾発言投下。
不真面目に相手選んで長続きするわけ?
私は短期的な関係を築きたいわけじゃない。
「 そもそも私と貴方では価値観や考え方が合わないみたい。 」
わざわざ時間を割いたのも無駄だった。
私が恋人に求めるのはルックスじゃない。
私と合うならば、どんなに周りの人が「醜い」と評価しようがどうでもいい。
ルックスより内面。
トキメキより安心感。
楽しさより落ち着き。
それに好きになった理由なんて
「 今までの過ごした時間全て 」
としか言いようがないのでは?
ちっぽけで軽い〝スキ〟がどんなに積み重なろうと
重い想いである〝アイ〟にはならない。
私が求めているのは
恋ではなく
愛慕だ。
「 好きです。 」
顔を赤らめることなく、
真っ直ぐにこちらを見ながら言う。
出会って初日は最速記録。
「 だから? 」
ストレスが溜まっていてついキツイ言い方をする。
でも眼の前の彼は表情を変えない。
「 仲良くしよ! 」
「 …は? 」
「 私、貴方の名前も知らないのに、どうやって仲良くすればいいの。 」
自分の眉間に皺が寄ってる気がする。
「 えー、俺自己紹介してたのに。 」
彼は
拗ねたような、
私が返事を返してくれたことが嬉しいような、
曖昧な表情をした。
「 ま、いいや、もっかいするね! 」
「 東京から引っ越してきました、貴方の事が好きな 伊藤亮也です。 」
「 だから仲良くしよーよ。 」
言っている意図が理解出来ない。
「 名前なんてーの? 」
「 高槻沙織。 」
「 あだ名さおりんとかでしょ。 」
「 あだ名付けてくる友人なんていない。 」
「 じゃ俺が第一号か。 」
「 私と貴方お友達じゃないんだけど。 」
「 なんで?友達なってくんないの? 」
何でもかんでもずけずけと聞いてくる人は好きじゃない。
のに、何故か不快感を感じないのは
人懐っこい子犬みたいだからか。
はたまた、人にそう感じさせる魅力が彼にはあるのか。
ただ単に、コミュニケーション能力が高いだけかもしれない。
「 合わないから。私と貴方じゃ。 」
「 合わなくてもいいじゃん。 」
「 そんなわけないでしょ。 」
私は、器用じゃないから。
合わない人に合わせることは出来ない。
いつも、無理したさきに残るものは
気まずい沈黙。
思い出しただけでも気分が沈む。
「 なんでー? 」
こてん、と可愛い仕草で首を傾げる。
溜息をこぼしそうになり、慌てて止める。
「 …なんでも。 」
「 えー、教えてよ。 」
「 俺さおりんのこと知りたいし。 」
「 じゃあまずその呼び方は嫌ってこと知っといて。 」
「 わかった沙織ね! 」
嫌味を言ってもその無邪気な笑顔が崩れることはない。
…変な人。
第一印象はそれ。
「 俺のことは亮也って呼んで。 」
「 それと、お昼一緒に食べよ! 」
「 伊藤くん、私用事あるから。 」
「 亮也って呼んでよー。てか待って。 」
彼の言葉を無視して席を立つ。
そのまま教室の扉に手をかけて、引いた。
「 あ、高槻。 」
私を呼ぶ声がした。
視線を上げると、そこには
——少し眠そうな顔した先輩が。
「 中嶋さん、どうしたんですか。 」
「 昼飯。 」
「 が? 」
もしかして、購買に行って奢れとでもいうのだろうか。
財布家においてきちゃったんだけどな。
「 先輩に対してその態度って…。誘いに来た。 」
少し目線をそらして、緊張した面持ちで
先輩は言った。
「 前、一緒に食おうって言ったろ。 」
「 あぁ、忘れてました。 」
「 ひでぇ。 」
だって二週間も経っているし。
行動遅すぎ。
鱗滝左◯次さんに怒られるよ。
「 判断が遅い 」ならぬ、「 行動が遅い 」ってな。
…父さんの親父ギャグが移ったな。
「 まぁ、いいですけど。 」
「 えー沙織ひどい、俺が先に誘ったのに。 」
先輩との会話に入ってくる無神経な犬が一匹。
でも先程とは違い
少し不機嫌そうな表情を浮かべている。
「 どっちの誘いに乗るのかは私の勝手でしょ。 」
「 ふーーん。じゃあ明日は俺ね! 」
ウィンクをして彼は笑う。
なんでそうなるの。
「 中嶋さん、行きましょ。 」
「 お、おう。 」
「 あの子置いてきてよかったのか? 」
空を眺めながら、ぽつりと言う。
「 連れてきてほしかったんですか? 」
「 や、そういうわけじゃないけど。 」
「 ならいいじゃないですか。 」
「 …なんであの子に対してはそんな冷たいんだよ。 」
「 なんでって、。 」
きっと、合わないから。
多分、そうだ。
どう返事すればいいかわからなくて
私も空を見上げる。
あの雲、うろこ雲だっけ、ひつじ雲だっけ。
どっちだろ。
「 人の話無視すんな。 」
そう言いながら手を額に伸ばしてくる。
そのまま
デコピンをされた。
「 ひどくないですか。 」
「 愛情表現。 」
あの日も、こんな天気だったな。
『 お前が俺のこと好きじゃなくても、俺はお前のこと好きだから。 』
「 はぁ、そうですか。 」
「 お前ほんと照れないよな。 」
気のない人に何言われようと、照れようがないのでは。
「 照れる要素あります? 」
「 ありまくりですけど。 」
何故に敬語。
取り敢えずデコピン仕返しするか。
「 いてっ。 」
コツッっといい音がなる。
額を抑えている姿が、少し滑稽だ。
「 ひど。 」
「 私のは愛情表現じゃありません。 」
「 なら尚更だよ。 」
もう一度、デコピンをされそうになり
間一髪のところで避ける。
「 ほんとにそれ愛情表現なんですか? 」
Profile.
高槻 沙織(たかつき さおり)
高2
伊藤 亮也(いとう りょうや)
高2
中島 健(なかじま けん)
高3
以上。