コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「三咲君ってそのゲーム好きなの?」
いきなり同じクラスの金髪の男子に話しかけられた。
その金髪の男子の名前は沢城紫季。クラスの中心的な存在で性格も良く、周りからとても好かれている。まさにコイツは俺が苦手な陽キャだ。
おまけにキリッとした二重の眼にサラサラの金髪を靡かせ、顔がモデルのように小さい。自分の平凡なルックスとは大違いだ。
(沢城君って、顔も人柄も良いとか与えられた人間って感じだな…)
「実は俺もそのゲーム好きでさ、最近ずっとそのゲームばっかしてる笑」
沢城くんは俺に笑顔を向けて楽しそうに話す。
「へっ…へー…」
いきなり話しかけられ、俺は返しに困った。
というか…
(人とコミュニケーションの取り方が分かんねぇ!)
クラスメイトに話しかけられたのなんていつぶりだろうか。人と話したのも久しぶりな気がする。
俺の低レベルなコミュニケーション能力では到底人と上手く会話をすることは出来ないだろう。それにこの場を乗り切ることすら出来ない。
「このクエスト難しいよね〜俺もまだクリア出来てない」
「あっ…そっ…そうなんですね」
「コツとかあったら教えてよ」
「えっ…えーっと…」
無理だ。やはり上手く話せない。下手くそな相槌を打つことしか出来ない。いきなり話しかけられ、緊張もしていて俺の頭の中は真っ白になっていた。
(俺なんかがアドバイスをしていいのだろうか)
「偉そうに」とか思われないだろうか。
そんなことが頭に浮かび、更になんて言葉を返していいか分からなかった。
「……」
沈黙が流れる。
沈黙を先に破ったのは沢城くんの方だった。
「あっえーっと…いきなり話しかけられて迷惑だったかな?」
「あっ…ちがっ…」
「ごめんね、じゃあ俺行くね」
沢城くんは困り笑顔で俺の前から立ち去ろうとした。
「あっ!」
違うんだ。迷惑なんかじゃない。ただなんて返せばいいのか分からなかっただけなんだ。話しかけられて嬉しかったのに。早く誤解を解きたいがなんて声をかければいいのだろうか。
分からないけどこのまま会話が終わってしまうのは嫌だった。
「あっ!あのっ!!!」
俺は思わず咄嗟に声が出た。
久しぶりに人前で声を出したため声のボリュームの調節が出来ず、だいぶ大きな声を出してしまった。
そのため、クラスメイトが「なんだ?」みたいな顔をして俺の方へ顔を向けた。
俺の前から立ち去ろうとしていた沢城くんも俺の声に反応する。
「どうした?」
沢城くんは優しく微笑みながら言う。
「あのっえーっと…その」
思わず呼び止めてしまったがなんて言えばいいのだろうか。変な奴って思われているかもしれない。言葉が出てこない。こんな自分が本当に嫌になる。
自己嫌悪に陥っている俺より先に沢城くんの方から口を開いた。
「ゆっくりでいいよ」
沢城くんはさっきまでいた俺の前の席に座り、微笑みながら呟いた。
「大丈夫、三咲君が話してくれるまで待ってるから」
不思議だ。沢城くんの優しい微笑みと言葉で俺は少し心が落ち着いた。
「あのっ…さっき話しかけてくれたの…迷惑じゃなかったです…その…はっ話しかけてくれて嬉しかったです」
俺は途切れながらも自分の感情を伝える。
「俺…あのゲーム好きなんです…だっだからさっき沢城くんが同じゲーム好きって聞いて…同じものが好きって言う人と話せて…楽しかった…です」
沢城くんに伝えたいことは伝えられた気がした。
「そっか」
「はっはいっ」
「じゃあ俺、三咲君に話しかけて良かった!」
沢城くんは満面の笑みで言った。
「ありがとう。気持ち伝えてくれて」
「こっこちらこそ…俺が話すの待ってくれて…ありがとうございます」
「またゲームの話しとかしよ。また三咲君に話しかけていい?」
「はっはいっ!」
「ありがとう!じゃあまた話そう」
「はいっ」
なんて優しい人なのだろう。こんなに優しい人と出会ったのは初めてかもしれない。