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ああ、やっとだ。やっとこの時が来た。
1969年7月20日、自由主義諸国は歴史的な瞬間に立ち会おうとしていた。
スプートニク1号とガガーリンの雪辱を果たす時が来た。
科学技術の最高峰をこの目で見る時が来た。
月面に、あの未知の大地に記念すべき一歩目の足跡を刻む時が来た。
アメリカはケネディ大統領の「我々は月に行くことを選択する」という言葉以来、狂ったように宇宙へと手を伸ばし続けていた。
何億という自由主義諸国の民がこの瞬間を待ち望み、希望を抱いていた!
まさか、これが社会主義諸国の「勝利宣言」、そして「シンギュラリティ・ソヴィエト」時代の幕開けになるとも知らず。
月面の映像が映し出されたとき、合衆国の旗が立つはずだった場所には既に、ソヴィエトの旗が翻っていた。
先程まで賑わっていたテレビの前の群衆は、戸惑う暇すらも与えられず、電波をジャックして割り込んできたのであろうソヴィエトの書記長、フルシチョフの淡々とした”勝利演説”を見せつけられ、「負け」を思い知らされたのだった。
あとから分かった話だが、ソヴィエトは人工知能を開発していた。人間の頭脳なんかが敵わないような、叡智の頭脳を。
その人工知能の指示のもと、アメリカで技術者たちが頭を悩ませているのをよそに軽々と月面着陸を成功させていたのだった。
俺達は、社会主義諸国との最後の賭けに敗北した。