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バイトが始まり、気づいたら1週間が過ぎていた。
慌ただしくしていたから、あっという間に感じた。
良介君が毎日丁寧に教えてくれたから、一通りのことはだいたいできるようになった。
この仕事、意外と自分に向いてるかも知れない。
「だいぶ慣れてきたね。さすが柚葉ちゃん、頑張ってるね」
「良介君の教え方がいいからですよ」
「だよね~」
こんな感じで人懐っこいから、良介君はお客さんにもすごく人気がある。
「あの、真奈は元気ですか?」
休憩が一緒になったタイミングで聞いた。
「うん、元気だよ。でも、仕事忙しいみたいだから、最近あんまり会えてないんだ」
そうか……やっぱり忙しいんだ。
今、柊君の会社は大きな仕事をいくつも抱えてるらしいから。
「良介君、真奈とはその……」
「ん? 何?」
「あっ、いや、真奈とはいつ……」
「ああ。結婚の話だよね」
「すみません、プライベートなこと聞いて」
「全然。うん、俺はもちろん結婚したいって思ってるよ。もう26だしね。でも、カフェ店員の収入じゃね。真奈は俺より頑張ってるから……」
良介君はちょっと下を向いた。
そっか、そんなこと気にしてたんだ……
「良介君はすごく頑張ってるじゃないですか。誠実だし、ものすごく優しいし、好感度バツグンですよ。お金のことは気にしなくていいんじゃないですか」
「ありがとう。柚葉ちゃんにそんな風に言ってもらえたら、なんか嬉しいよ。でも、男としてはやっぱり……ちょっと情けないっていうか……」
「良介君。私、いろいろあって結婚も破談になったでしょ」
「ああ……うん」
良介君は、ちょっと気まずそうな顔になった。
「でもね、私、結婚して、もし柊君の会社がダメになったりして、破産?したりしても……それでも、絶対に柊君に着いていこうって思ってましたよ。たまたま破談になっちゃいましたけどね」
良介君は、私の顔をじっと見た。
「たまたま柊君はお金持ちでしたけど、私は本当にお金なんて関係ないくらいあの人を愛してたんです。だから、結婚して側にいられたらどんなに幸せだったかなって」
「柚葉ちゃん、ごめんね。なんか、悲しいこと思い出させて」
「いえいえ、私が勝手に話し出したので……。もう大丈夫です。良介君、本当に優しいですね。真奈はね、そういう良介君の優しいところが大好きなんですよ。もちろん見た目も、仕事頑張ってるところも、全部大好きなんです。だから、お金なんて関係ないんです。真奈はそんなことでごちゃごちゃ言う女じゃないですから。だから……」
良介君が、息を飲んだ。
「真奈を幸せにしてあげて下さい。ずっと真奈だけを愛してあげて下さい。お願いします」
良介君の目が、ほんの少し潤んでるように見えた。
真奈を大事に思ってることが伝わってくる。
「柚葉ちゃん……。なんでそんなに俺達のこと……」