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stxl 二次創作 赤水
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2000文字程度の話が数話続くシリーズものです。
お酒は程々に。
【Side 赤】
「信じられへん!!」
自分たち以外に客は誰もいない静かな店内に、れるさんの声が大きく響いた。
カウンターの奥でマスターがグラスに氷を落とす音さえ、やけに遠く感じる。
突然の大声に少し驚きながらも、正直それどころじゃなかった。 ここまで感情を露わにしているの見るのは、かなり珍しい。
遡ること数時間前。
スマホに表示されたのは、れるさんからのLINEだった。
『今日、空いてる?』
それだけの、やけに簡素なメッセージ。普段ならもう少し軽いノリで送ってくるのに、その時は妙に素っ気なかった。
少し違和感を覚えながらも、
『空いてる、どうしたの』
と返すと、
『飲みいこ』
短く、それだけ返ってきた。
理由は書かれていなかったけど、なんとなく察しはついた。
れるさんが飲みに誘ってくるのも珍しいし、こういう時は大体なにかあった時だ。
実際に会った時も、どこか様子がおかしかった。
落ち込んでいる、というよりは、うまく消化できていない感情を無理やり抑え込んでいるみたいな、そんな空気。
それでも最初は、いつも通りに振る舞おうとしている感じがあって。
だから、少し安心しかけていた。
「れるの、彼氏がさ」
その一言を聞くまでは。
「え……?」
聞き間違いかと思って、思わず聞き返す。
「いや、だから、彼氏」
軽く言い直されて、ようやく言葉の意味がそのまま頭に入ってきた。
驚きよりも先に浮かんだのは、疑問だった。そんな話、今まで一度も聞いたことがなかったから。
すたぽらを卒業してからも、れるさんとは前と変わらないくらいの頻度で会っている。
だから余計に不思議だった。
どうして今まで一言も話さなかったのか。
「言ってなかったっけ」
まるで大したことじゃないみたいな言い方に、少しだけ胸の奥がざわついたが、それ以上深く考えないようにした。
「そうなんだ」
なんとかそれだけ返すと、少しだけ満足そうに頷いてそのまま続けられた。
「でさ」
さっきよりも、ほんの少しだけ声のトーンが落ちる。
「今日、彼女たちと会ってきてん」
「……彼女たち? 」
一瞬、意味が分からなかった。
聞き返すとあっさりと頷かれる。
「うん。①と②と③」
まるで、当たり前のことを言っているみたいで。
軽く指を折りながら数えるその仕草に、嫌な予感がじわじわと広がっていく。
「あと、れる」
さらっと付け足された一言で、完全に思考が止まった。
頭の中で言葉を何度もなぞって、やっと現実として結びついた。
四人。
つまり、そういうことだ。
「それ、どういう……」
「四股されてたってこと」
「『俺はみんな平等に愛したい…!!』とか言われて…」
「ほんまに信じられへん!!」
「は!?ってならん!?」
目の前で、れるさんが勢いよく身を乗り出して来て、現実に引き戻される。
「彼女①②③も、れるも、大困惑やったわ!!!」
そりゃそうだろ、としか言いようがない。
「そりゃそうでしょ……」
勢いに押されながら、そのまま声に出した。
「そうやんな!?」
そう強く返される。
そのまま続けようとしたところで、カウンターの向こうから先程注文していたグラスが差し出された。
軽く頭を下げて受け取ると、れるさんは礼もそこそこに、すぐに口をつける。
一気に半分くらいまで減らして、ようやく一息ついた。
「ほんま信じられへん……」
さっきまでの勢いが嘘のように、落ちた声でそう呟く。
「ほら、ちゃんと水も飲んで」
横からグラスを差し出すと、少しだけ不満そうな顔をしながらも受け取って貰えた。
そのまま水を飲み干して、カウンターに軽く突っ伏す。
「……はあ」
れるさんは小さく息を吐いてからぽつり、ぽつりと話し始めた。
「久しぶりの恋愛で、浮かれてたんかなあ……」
「もしかしたらこのまま結婚する未来もあんのかなあとか、思うてたんに……」
いつもと全然違う笑い方で、見ているこっちの方がつらくなってくる。
視線は下がったまま、グラスの中をぼんやり見つめていた。
少しだけ滲んだ目元を、誤魔化すみたいに。
なんだかその姿は見ていられなくて、思わず口を開いた。
「れるさんには、ちむがいるでしょ」
気づけば、そんな言葉が出ていた。
自分でも驚くくらい、やわらかい声で。
「ちむは彼氏やないもん〜〜」
すぐに返ってきた声は、何も考えていないような、いつも通りの言い方。
それが余計に、現実をはっきりさせる。
最初から、そんなこと分かっていたのだけれど。
「……ちむが、彼氏じゃだめ?」
言った瞬間に、やってしまったと思った。
こんな言葉は言うはずじゃなかったのに、頭のどこかでブレーキをかけるよりも先に喉から出てしまっていた。
一瞬だけ、空気が静かになる。
れるさんが隣からこちらを見るその視線に、冷や汗は止まらず、心臓は嫌な音を立てていた。
「ちむが? ありえへん」
声を上げて笑われた。
肩を揺らして、心底おかしそうに。
「れるたちは双子で親友!やろ?」
それは迷いのない言葉だった。
冗談として処理されるくらいには自然に。
「そう、だよね」
「ごめん、変なこと言って。…はは」
軽く肩をすくめながら、そう言ってみせる。
大丈夫、きっと笑えてるはず。
れるさんも、それ以上は深く気にしていないみたいですぐに別の話題に移っていった。
そのことに少し安心したと同時に、少しだけ寂しくなる。
この感情をどうしようもできなくて、グラスに残っていたお酒を一気に流し込んだ。
喉が焼けるみたいに熱くて、少しだけ目を細める。
でも、その感覚の方が今は楽だった。
もしもこの先。
れるさんの一番が、誰かで埋まってしまったとしても。
その隣に、自分の居場所はなくなってしまったとしても。
せめて、親友としてでいいから。
今みたいに、こうやってそばにいられるなら。
それでもいいと、思ってしまう自分がいる。
そんなことを考えている時点で、もうどうしようもないのに。
それでも、手放すなんて選択はできなかった。
ぱんだんこぱ
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りす
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コメント
1件
「酔言」ってタイトル、まさに酔った勢いで本音が出ちゃう感じがよく出てるなって思いました。れるさんの四股話から、ちむの「彼氏じゃだめ?」の一言が飛び出す流れ、すごく自然で胸が詰まりました。「双子で親友」と笑い飛ばされてしまうもどかしさと、それでも隣にいられたらいいと思う気持ち、切なさがじわじわきます。二次創作ならではの関係性の繊細さが丁寧に描かれていて、続きが気になります。