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私ももんかな大好きです……! なので嬉しい限り🫶🤍 応援してます(*´˘`*)
また、たまにコメントしても大丈夫ですか?
天才!神ですか!? この小説に出会えてよかった!
nmmnです!!
この文字を進んでみたいと思う方はどうぞ!!あと、今回特に捏造と妄想の密度が濃いです。無理そうならUターンしてくださいね!
海賊モンド×天使(半悪魔)叶
《キャラ設定》
モンド……武闘派の海賊。 銃撃戦や荒事が大好きで船員達も腕がかなり立ち、海で五本の指に入る大海賊の船長。昔からの船員にはボスと呼ばれている。動物は好きでたまに遊びに来る猫を可愛がってる。他の海賊とは仲が良くもなく悪くもなく。
叶……天使である身の上ながら半身に悪魔の黒を持つ異端の天使。白と黒の羽を持ち、その奇妙さで天から追放される。下界に落ち、町で人に紛れて暮らしていたが、人間にバレてオークションに出される。それからは物珍しい人外であることと、その中でも希少な悪魔と天使を併せ持つ存在であることが起因して、色んな人の元を転々とする。歪んだ愛しか得られずに人を信じられなくなった。実は魔界に友人がいたらしいが………?
以上の設定を持ちつつ書いていきますので、無理そうなら、ほんと、見ちゃダメですよ???彼等は公式が最大手っていうのを理解しつつ書いてるんです。
創作は楽しめるのが一番です。
無理をせずに読んでくださいね。
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天使と言うものを、始めて見た。
オークションに興味なんて無くて、何となくで付いてきたのに。
隣で手持ちの金をつぎ込んで買った、いかにも怪しい壺(幸せを喚ぶらしい)を抱きかかえてる船員の声が聞こえないくらいに、それに魅入った。
吸い込まれそうな白と飲み込まれそうな黒の羽が背中で折り畳まれ、艶々と輝いている。頭の上には天使の輪が揺れていて、光をうすぼんやり発しているような気さえする。
ミルクティー色の髪はふんわりしていてうつむいた天使の肩を滑って落ちていく。顔は見えないけど、真っ白で柔らかそうな肌は、触れたら心地よさそうだった。
「一億」
しん、と静まった会場に、声が響く。
会場にいる誰もが檻の中で孤独に座り込む天使に夢中だった。ほう、とため息を付くものさえいる程だ。
司会者はその声にはっと我に返って、オークションを進行する。
「590番一億!!誰か他にいらっしゃいますか~っ?!」
司会者の声に呆然としていた客も額をどんどんつり上げていく。
「一億五千万!」
「二億!!」
「二億一千万!!!」
「四億。」
「ちょ、船長ッ?大丈夫なんですか??最近カジノで負けたって聞きましたけど?!」
心配する部下を片手であしらいつつ、値段札をあげた。
ざわつく客の中、誰かが「海賊のモンドだ」と言うのを皮切りに動揺が波紋のように広がっていった。
「お、お客様っ!四億、四億です!!誰か他に、四億以上の方はいらっしゃいますか~!?」
司会者がそう問えば先程までが嘘のように札がすごすごと下がっていく。
海の荒くれと有名な海賊と札束で殴り合う気がないのだ。居心地が悪そうに視線を迷わせて、心なしかご機嫌に舞台に歩いていくモンドと一切目を合わせようとしない。
「お客様、おめでとうございます。こちら今回の商品となります。」
プロとしての姿勢を崩さない司会者をチラリとも見ず、檻の隙間から中に手を差し込む。
天使の顎に指を引っかけて上を向かせる。
朝焼けの空を切り取ったような青をどんより濁らせた色をした瞳が好戦的にモンドを睨み付ける。
本人は気付きはしないのだが、側で様子を見ていた船員は、この時船長がいたくご機嫌であることを察した。
にんまりとした口許が隠しきれていない。
これから起こるであろう波乱の日々に、船員は思考を放棄すると同時に、ボスに巻き込まれた天使を憐れに思うのだった。
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「お兄さん達、随分暇なんだね。」
天使がニコニコと微笑む。
見ているだけならとても愛らしいそれは何故だか船員達の背筋を凍らせた。
「そう?」
明らかに警戒心を丸出しにした天使とは反対にモンドは、一番付き合いの長い白井でも見たことがないくらいに緩んだ雰囲気をしていた。顔に出ることはないがモンドの纏う空気がふわふわしていて、ちらほら花が飛んでそうな程だ。
「そうだよ~、海賊ってヤツなんでしょ?汚いお金で買ったモノを仲間と一緒に観察とか、ちょっと趣味悪いと思うよ?」
きゅるん、と大きな瞳を潤ませて、可愛らしく首をかしげる。
船員の何人かはその愛らしさに微笑んだが、いっている内容のえげつなさで相殺されてむしろゾッとした。
全部を理解した上で威嚇する子猫を可愛がるような顔をしているのは船長だけである。
「あれは汚いお金じゃないよ。ギャンブルで買ったお金。」
「十分綺麗じゃないし、それ。」
「?、そうなの?」
良く分かっていない声を溢す船長に船員は、それが天使の期限をこれ以上損ねやしないか、ビクつきながら様子を伺っていた。
「……随分な物まで着けてくれちゃってさ。なに?似合う?」
細い足をひょいと高くあげ、足首に着くじゃらじゃらとした見るからに重そうな鎖の枷を見せつける。
「外して欲しいなら外すよ。」
「……、なに。どういうつもり。僕には羽があるんだよ。何処かに飛んでいくかもしれないじゃん。」
「それはダメ。」
モンドが間も空けずに答え、天使は始めて眉に皺を寄せた。
「本当になんなの。お兄さん会ったこと無いタイプすぎてどう対処して良いのか困るんですけど。」
天使は呆れたように吐き捨て、お行儀良く座っていた姿勢を崩した。
「あ~もう、訳分かんないこの人間。興味ないなら転売するなりなんなりすれば良いじゃん。こっちじゃ高く売れるんでしょ?」
「ううん。売らないよ。」
「じゃあ何?見世物?」
「それも違う。他に見せたりなんかしたくないよ。」
「え~…?じゃ飼い殺し?僕可愛いもんね。今までも大体そうだったしな。」
「違う。天使が嫌がることはしたくないから。あと、ソイツ等の顔とか覚えてる?」
段々とクイズ感覚で今後の己の処遇を当てに行く天使に船員達がほっと一息ついたのも束の間。
次は船長が場を凍らせる。明らかに怒りに溢れた声は地を這うようだった。
竦み上がった船員達とは正反対に、天使はふっ、と苦く笑っただけだった。
「お兄さん本当に人間?魔界の住民じゃなくて?」
「オレは人間よ。海賊なだけ。」
「ふ~ん。殊更な海賊がいたもんだね。キズモノなんて飼わずとも、オンナには困らないでしょうに。」
「キズモノ?誰が。」
「僕が。てか中古の天使が売られてる時点で大体お察しでしょ?僕は人間にとって使い捨てなんだからさぁ。」
じわ、と瞳のモヤが濃くなり、口だけを笑顔に形取る。空気の密度が高く、重くなった気がして、船員達はカヒュ、という自身の呼吸音だけを聞いた。
膝をつく者さえいる中で、モンドだけはソファにのんびり座ったまま天使の様子をじっと見ていた。
「こんなに綺麗なのに?バカな奴等だね。」
バサ、と怒りに任せて広がった翼から何枚か白と黒の羽が散り、その一枚をモンドが捕まえてうっとりと眺め、そう言った。
「は?」
心から思っているであろうその言葉に、天使は気の抜けた声を溢す。
それは天使が見せた一瞬の隙の様なもので、少し素の顔が覗けた気がしたモンドはその端正な顔をふと緩めた。
急に慈愛に満ちた顔で微笑まれた天使は訳も分からず、じわじわ顔が赤くなるのを隠すこともせずに呆然としている。
「天使、名前はないの?教えてよ」
「へっ、あ、その。」
「ん?」
「ちょ、、その、っ、にっ、人間に教える名前なんか無いしッッ!」
今までの態度から一転して、冷たい空気は溶解していった。天使は耳まで赤く染め上げて、座りが悪そうに羽をバサバサさせている。
モンドはその様子をじっと見るばかりであり、それが落ち着かないのか、天使は視線を泳がせてどぎまぎした。
「ぼ、ぼくはまだ、人間を信用なんて、し、してないんだからなッッッッッッッ!」
華奢な体を大きな羽で隠し、そこから手だけを出して船長と船員達を指差す。
その中は言わずもがな赤く熟れているのだろう。
この時初めて心の底から天使が可愛いと思った。とは、船員達の言葉である。
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天使が船に来て数日が立った。
天使には個室が与えられていて、そこに食事を運ぶ船員達とは話すようになったという。
初日こそ物騒な気配を漂わせていたものだが、甲斐甲斐しい船員達と美味しい海の幸につられて次第に彼本来の穏やかな空気を纏うようになった。
モンドはあれからというもの、毎日天使の部屋を訪れている。朝、昼、 晩。時間に暇さえあれば部屋に通い、扉の外から天使に話しかけている。
と言うのもこの天使。
何故か、と言うには理由は分かりきっているが、モンドとだけは顔を合わせたがらないのだ。彼が来たと察知すれば、カーテンの影に逃げ込み、小さく丸まるほどには。
モンドも金をはたいて買ったと言うことに後ろめたさを感じているのか、天使には決して顔を見せない。
そして扉の前で、返ってくることのない会話を続けるのだ。
船員達は船長の一途な一面に心を打たれ、どうか船長と話してくれはしないかと天使に懇願するが、天使は曖昧に笑うだけで、その日も船長は一人扉の前に立っていた。
その様子を日々はらはらドキドキしながら影から見守るカプ厨な船員達なのであった。
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「ん”~……」
天使が船に乗って更に暫く経ったある日。
モンドは執務室で頭を抱えていた。
「どうしたのボス。」
同じく執務室で航路の確認をしていた白井が顔を上げる。
「てんし、、」
力無い声で言った一言は全てを物語っていた。
「あぁ、ボスの愛しの天使ちゃんね。まだ話して貰ってないんだってね。」
「うるさい白井。」
即座に返ってくる罵倒でさえか細い。
こりゃ大分キテるね。白井は苦く笑ってそう思う。
「ボス、今度の島は大きいし、ちょっと息抜きでもしてきたらどう?女の子に会えるかもしれないよ?」
懐勘定を忘れずに、地図に赤丸を着けている次の島を指す。今から行くのは航海の途中で手に入れた品々を売り捌く為に上陸している島で、ある程度発展していて人々の活気も溢れている穴場のようなところだ。
加えて女遊びが出来そうなくらいの治安の悪さも兼ね揃えている。
これならば丁度良いのでは?そんな気持ちで提案したものだが、彼の船長の反応は思わしいものではなかった。
「ん~………やめとく。」
元々女よりギャンブルに金が流れるような男だったが、全く興味がない訳でなく、部下達が誘えば(気が向けば)そういう店にも着いてくる人だったので、今回も白井が促せば足取りは重くともフラフラ街に向かうと思っていた……
「ボス、ガチで本気じゃん……」
「最初からそのつもりだけど?」
机に項垂れたまま、即答するモンドに、白井は感嘆の声をこぼす。
「いぃや、かっけぇよボス。俺は応援してるからね。」
「んー。」
「………因みにさ、天使ちゃん男よ?」
「知ってるよ馬鹿。」
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天使が船に来てから季節がひとつ過ぎた。
季節の移ろいを感じにくい船の上でも、秋の訪れを教えてくれるような冷たい風がぴゅうと吹いた。
この船には見張りの番があり、船員皆でローテーションして一晩中船の周囲を監視する役割を決めている。
皆が寝静まる間、二人組で交互に見張り、何か異常があれば全員を起こす重要な役割で、月に一度の頻度で例外なく担当する。
勿論それは、船長であろうと変わらない。
防寒をしていても入り込んでくる北風は、船の一番高いところにある見張り塔ではより顕著だった。
モンドは段々と白んでいく空をぼんやり見つめながら身震いした。二人組の片方が風邪を引き、連絡不足で一晩中おきることになってしまったが、別に起きているくらいなんてこと無い。が、しかし、この寒さは堪える。今年は北上しているから、長袖を買いに行くのが早かったな、首に巻いたマフラーに顔を埋めながら思う。
コツ、コツ、コツ、と誰かが踵を鳴らす音がして顔を上げた。
誰かが見張りの交代を言いに来たのかも、凍えながら少しの期待を抱いて音のした梯子がある方をじっと見つめる。
「あっ」
「あ、」
ひょいと顔を覗かせた空色の瞳。寝起きなのか、髪の毛が一房ぴょんと跳ねていて、それをごまかすように後ろで一つに束ねていた。
目があった瞬間、天使は声を上げたと思えば顔を背けてしまった。慌てたのか、足を滑らせたらしい天使がずる、と視界から滑り落ちていった。それを咄嗟に掴んで見張り台に引き上げる。
「慌てたら危ないよー、」
「う、うん。ごめ、ん。」
返ってきた声に胸が暖かくなった。初日以来本当に初めての会話。久々に聞く天使の声は相変わらず耳心地の良い柔らかな声だった。
「無事で良かった。」
安堵と共に溢れた声に、天使は目を見開いた。
「ぐ、ぐぬぬぬぬ………」
空に溶け出してしまいそうな程儚い瞳が大きく開いたと思えば、その次の瞬間には眉を寄せて半眼でこちらを睨み付けてきた。ほんのり頬を赤く染めて、恨めしげな感情を綺麗な瞳にたっぷりと乗せて。
「!?ど、どうした?どこか痛い??」
「いっ、痛くないしっ!」
近付こうにも大きな翼で防がれて、視界がもふっと隠された。
「……寒くない?それ使って良いよ。」
翼をずらして羽織っていた外套を天使に被せる。先程手を掴んだ時、あまりの冷たさに驚いた。翼の向こうで振り向いた天使の鼻先は赤く滲んでしまっている。
「あり、がと。お兄さんは、寒くないの」
「オレはいい。寒いの慣れてるから。」
「………そういう問題じゃ、ないじゃん」
狭い見張り台のギリギリまで離れていた天使が、薄いシャツ一枚の船長を上から下まで眺めて、おずおずと隣に座った。
肩が触れあう近さの天使に、モンドは思考と体を硬直させる。
「別に、元々お兄さんのだし、僕だけぬくぬくしてるの、嫌なだけだし。」
ぽつぽつ天使が呟くのを、モンドは珍しく聞き逃していた。天使の声よりも大きく、心臓が脈打つ音が脳に響いているようで、顔には出ていないが頭の中はパニック状態である。
扉越しで声も姿もほぼ見ることのなかった相手が、今や息遣いさえも手に取るように分かってしまう。柔らかい体も、首をくすぐるふわふわの髪も、全てが存在感を強く放っている。
「お兄さんはさ、今何してたの?」
「見張、り 」
そうなんだ、と呟いて遠くの空を眺める天使の横顔はとても綺麗で、呼吸ひとつするのでさえ芸術品のようだった。
見惚れていると視線に気づいた天使がそっぽを向いてしまい、慌てて船の周りに意識を向ける。朝焼けで反射する海面に目を細めて様子を見るが、やっぱり異常はない。あえて一つ上げるとするなら、隣に天使が座っていることだろう。
足の枷はわりと前に外していて、体が自由になった天使は嬉しそうに羽を広げていたが、船を飛び出すようなことはしなかった。
「ねぇ、天使。オレから逃げなくて良いの?」
モンドを嫌っていたはずの天使は、その博愛故に側にいてくれる。嬉しい限りだが、それが天使を苦しめているなら、無理をしているのなら。
「オレは、天使が、行きたい所に行っても良いと思ってるよ。」
それを金で縛り付けているだけの人間が止めるのはきっとお門違いなんだろう。
まろい頬を撫でそうになる手を抑えて、珍しくこちらを見てくれた瞳をじっと見つめ返した。
天使の小さな口からは空気の抜けたような音がして、瞳は困惑したように揺れている。
「な、、んで」
時間が空いて返ってきたのは素朴な疑問だった。
「多分、オレの我が儘でこの船にいて貰ってるでしょ?……オレは天使が嫌なことはしたくないよ。」
勝手につれてきて、勝手に突き放して。
怒られるかもしれないし、やっぱり喜んで逃げていくかもしれない。そのどちらでも天使が望むことなら受け入れよう。
「………ゃ、、ぃし。」
俯いてしまった天使が震える声でそう言うが、ざざー、という波の音にかき消されてしまった。 隣にある少し低い位置の頭に耳を近付ける。
「いやじゃないし!!」
儚げな見た目にも早朝という時間帯にも似合わない声量だった。片耳がキーン、と鳴って一瞬世界から音が消えた。
「なんで、なんでそんなこと言うのっ?この船に連れてきたのはお前でしょ?!」
顔を上げた天使は涙声で怒りを露にした。
大粒の涙が頬にいくつも筋を残してぽたぽた流れていく。歪んだ顔は怒っているのか悲しんでいるのか分からなかった。
「ははっ、やっぱり、やっぱりお前もぼくをすてるんじゃないかっ、」
無理に笑った口許が歪んでいて、澄んでいた瞳はあの日のように濁っている。
「人間なんて、所詮口だけだっ、使われてもないのに捨てられるのは始めてだよ、、」
天使の細く冷たい指が、モンドの首を絞める。天使は戦闘種族な訳ではないが、それでも矢張人外故に力が強い。気道が強く圧迫されて直ぐに呼吸が苦しくなった。
「すてるならっ、最初から優しくなんてしてほしくなかった……」
酸欠でぼやける視界の中で、天使は涙を流し続ける。震えるその唇が、声もなく動いた。
“しんじてたのに。”
それを理解した瞬間に、弾けるように天使の手を払い除ける。突然のことに対応しきれなかった細腕は呆気なく首から外れた。
「ごめん、違う。ごめん」
直ぐに次の手を打たせるのを防ぐために、天使の腕ごと強く抱き締める。荒い息遣いが耳元で聞こえて、落ち着かせようと羽の生えてる腰を避けて背中を撫でると、天使は抵抗したが、意地でも逃がすつもりはなかった。
それが伝わったのか、天使は脱力して、広げていた羽をゆっくり閉じた。
「ごめん、」
「…謝るだけで伝わると思ってるタイプ?」
「ごめん………」
体をこちらに預けたままで表情は伺えないが、きっと怒っているのだろう。
「オレは天使をさ、無理に連れてきたから。天使が嫌なら、って思って、、でも、」
自分の気持ちを言葉にすることが少なく、口より先に体が動いてしまうから。
考えながら、止まりながらのその言葉を、天使はじっと聞いていた。
「いなくなって欲しい訳じゃ、絶対にない。」
「、うん、、、」
ずっと黙っていた天使が、続きを促すように相槌をうつ。それに少しどきまぎしつつ、緊張で固まる口を動かした。
「ここに、いてくれる?」
たっぷり間を空けてようやく出てきた言葉に、天使は答えない。それでも、モンドは天使を抱き締めたまま離さなかった。
「…僕さ、天界から追い出された天使なの。
悪魔の子って言われて。
人間界に降りてきてからも、色んな人に飼われて、汚い羽って、醜い天使って。
顔が好きだから、女の子みたいに可愛いからって、それだけはずっと言われてきたの。
だからさ、お兄さんが始めてだったの。
僕を、僕の羽を、綺麗って、言ってくれたの。
名前を聞いてくれたのも、僕のこと、仲間みたいに扱ってくれたのも、ここの船の人達が初めてなの。
僕さ、もう行くとこないんだ。天界にはもう戻れないし、今までの奴等のとこ行くのなんて、絶対に嫌だ。
だから、お兄さんさえ良ければ、僕、ここにいても良いかなぁ?」
段々と涙に濡れていく声も、背中に回る手が震えているのも、全部を隠すように抱き締める。
「もちろん。」
胸に押し付けた天使の頭にそっと囁けば、子供のようにしゃくり上げて泣き始めた。幼い泣き方が愛に飢えているように感じて、天使の髪をこっそり撫でた。
ここにいてもいいの?ほんとうに?
そう聞くように天使の手が背中を掴む度に、良いよ。と答えるみたいに天使を抱き締めた。
暫くして、嗚咽がすすり泣きに変わって、白んだ青が濃くなる頃、天使は眠りについた。モンドの服をしっかりと握り締めて離さないので船員達が起きてき次第移動しようと天使を撫でながら考える。
ぎぃ、と木の鳴る音と、あ、やべっという小さな声がして、一気に機嫌が下がりかかる。
「エスターク。出てこい。」
「……すっ、すみません、ボス。」
「白井もいるの?」
「ごめんなさいボス。」
「………」
呼んだら出てきたじゃじゃ馬達に白けた目をおくる。
「ごめん、これは言い訳させて欲しいっ!天使ちゃんの声がしてっ、心配になっただけなんだって!」
「お、おれもッス!」
「お前らうるさいよ、天使が起きる。オレ今から降りるから見張りしとけ。」
「了解ですッッ!(小声)」
軽い体を持ち上げて、片手で支えながら見張り台を降りる。手伝うか聞かれたが、何となく自分で運びたくて断った。
不機嫌に見えるボスに萎縮しきっていた二人だが、どこか微笑ましそうにしている雰囲気を感じて舌をうった。
甲板に降り立った衝撃で天使が少し目を開けた。
起きてしまったかとモンドは眉を下げたが、天使は手を泳がせてモンドの首に抱きつく。
「……おにぃさん、ぼくのなまえね、かなえっていうの。てんしじゃなくて、かなえってよんで?」
泣いていたせいで少し掠れた鼻声で、耳元に囁いた。そう言うなり、天使は満足したように、もう一度寝息を立て始める。抱きつかれたままの船長は意地と鋼の精神で甲板に立っていたが、膝をつかないようにするのがやっとだったりする。
うるさい心臓の音を聞きながら、天使に割り当てた広い部屋に足早に進み、ベッドに眠る天使を置く……置k……………置けない。
理性がシーソーゲームを始めていて、一刻も早く立ち去りたいというのに、天使はモンドをガッチリ捕らえている。首に回った腕はその華奢な見た目からは考えられないほど力強い。
かといってそのまま一緒に寝ようとしても、こう密着していてはモンドの心臓がもたない。
少しばかりあった徹夜の眠気なんかどこかにふっ飛んでしまった。
「たすけてー……、」
ベッドに天使と横並びになったまま、天使を起こすことも憚られ、弱々しい声を静かに溢した船長であった。