テラーノベル
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※センシティブ想像シーンあり。
魔性。
その言葉には言葉にできない色気も詰まっている。
そして、決して女性だけが纏えるものでは無い。
そう適当に脳内で文学的に説明していると、名前を呼ばれた。
『勇斗?』
「あぁ、ごめん。何?」
『水持ってきて。』
片手に身を任せて頬も赤い。
何だかうっとりしたような目でコップの光る縁を眺めている。
見蕩れていたいと思いながら冷蔵庫にある冷水を注ぐ。
コト。
コップを置く音も艶めかしく感じた。
『…ありがと。』
普段では呑まない量の酒を胃に入れてしんどそうだ。
頬から鎖骨までが、ただ興奮を誘う。
服で見えない鎖骨の下も、その下も、その中も、見た事ないけれど。
…それなのに、指先は勝手に熱を持つ。
喉が渇く程に。
「てか、飲みすぎじゃない?」
『うん…ちょっと。酔った。やば。』
今にも寝そうな顔。
舐め取ればそこだけがドロッと溶けそうだ。
ジトッとした色っぽい目でこちらを見つめながら膝に寄る。
中心の軸がブレているまま、猫のように這って来る。
肩甲骨から尾骨くらいまでの曲線が美しい。
『…はやっ、と。』
すとんっ。
そう音でも鳴ったかと思うくらい、頭の重心を膝に全て預けた。
少し開いた瞼の奥から俺の腹部を無心で貫く。
滑らかな体のラインが俺の何かを誘発する。
俺は、考えてしまった。
『…舐めて欲しいの?』
『んっ…、もうらひて…?いいよっ…。』
『次…もっと楽しい事しない…?』
こんな、阿呆な事を。
現に仁人はただ、膝に頭を乗せているだけ。
何も如何わしい意味では無い。
仁人はこんな事しない。きっと。
『…はやとさぁ、』
『なんか…ヘンなことかんがえてる?』
「えっ?」
ふと仁人の顔へ目線をやると、やけに潤んだ目でこちらを睨んでいた。
何も考えていないフリを咄嗟にし、俺は目線を泳がせる。
大きなガラス玉の様な瞳に吸い込まれる前に、小さな魚のように目を逸らす。
強がる度に頬が熱く、赤くなっていくのが見なくても分かる。
『…はやと?』
柔らかで優しい息が段々と近づく。
膝から腹へ、腹から喉へ…。
まるで本当に指で肌をなぞられている様な、そんな感覚だった。
その息が俺の顔の真ん前に来た時、仁人の何処も直視出来ないと思った。
愛らしい目が俺の顔を貫こうとせんばかりに見つめる。
『…』
仁人がもう一度、俺の名前を呼ぼうとしたその時だった。
ヴーッ、ヴーッ…。
ポケットの中から邪魔なスマホのバイブ音が響いた。
電話かと思ってスマホを取り出した。
…それでも、応答なんて出来るはずがない。
『はやと。』
こっちを見ろと言いたげな声で、俺を呼ぶ。
その声にかまけて遂に、目を合わせてしまった。
息と息が交ざる様に近づいた時、俺は手からスマホを離した。
スマホが床に落ちる音は鈍く、水底に響く様。
そんな事はどうでも良い。
もう、とっくに溺れていたのだから。
コメント
2件
え、何この最高な作品、新シリーズ普通に神なんだが。