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上機嫌の洋平
「楽しみだなぁ〜早く来ないかなぁ〜」
「ふふ、まだ今、サインしたばかりだし……」
「今日これからどうする? どこか式場、見学に行く?」
「う〜ん」
「ん? 美優どうした? なんか元気ないね〜」
「うん、なんかちょっと疲れたみたい」
「あ〜しばらく予定いっぱいだったからなぁ、帰って今日は、休息日にしようか?」
「うん、そうだね」
家に帰っても、美優の顔色が悪い。
「美優、大丈夫?」美優のオデコに、自分のオデコを当てて熱を測る洋平。
「う〜ん、ちょっと熱いかなぁ?」
「うん、少し横になってれば大丈夫だと思う」
「分かった、じゃあ休んだ方がいいよ」
寝室まで連れて行き、着替えを手伝い寝かせる。
──美優〜色っぽい〜♡あ〜なんで俺は、こんな時まで……
「何か食べられる?」
「何も要らない」
「洋平、お昼、冷蔵庫に入ってる物で、適当に食べておいてくれる?」
「うん、気にしないで休んで」
「うん、ありがとう」
オデコに熱冷ましを貼り……
「水分だけ、すぐに飲めるように置いておくね」
「ありがとう」
お昼ご飯は、美優が作り置きしてくれている、
ひじきの煮物や、きんぴらごぼう、切り干し大根人参煮などの常備菜と漬物。
自分でスクランブルエッグなら作れるから、
フライパンで焼く。ついでにウインナーも焼く。
「お〜完璧!」
冷凍されたご飯を温めて、
味噌玉を冷凍してくれてるから、
お湯を入れるだけで、1杯分の味噌汁ができる。
「いつも美優は、こんなにたくさん作ってくれて……
ありがたいなあ〜」
1人で、ささっと食べた。
そして、
──美優の為に、雑炊を作ってあげよう!
「雑炊って、どうやって作るんだ?」と、ネットで調べる。
ご飯を鍋に入れて、
美優が取ったと思われる出汁が冷蔵庫に……
その『お出汁』と書かれた液体を入れ、塩と醤油を少々、沸騰したら、玉子を溶いて入れると……
「雑炊になったかなぁ? 味見、うん、美味しい!料理出来るじゃん」
ネギをパラパラ「ヨシ!」
「美優〜雑炊なら食べられる?」
「え? 作ってくれたの?」
「うん、作ってみた」
「ありがとう」
「はい、あ〜ん」
「ううっ」
「え? 不味い?」
「ううん、まだ食べてない」
「だよね、ビックリした……気持ち悪い?」
「うん……匂いが……」
「え? 大丈夫?」背中をさする
「………あっ!」
「ん?」
「どうしよう〜」
「ん? どうしたの?」
「もしかしたら……」
「ん?」
「いや、まだわかんないけど……」
「うん」
「そういえば、《《来て》》ない」
「ん? 何が?」
「生理」
「え? え? えーーーー美優〜♡」
「まだ分からないけど……思い当たる|節《ふし》が……」
「あ! あるね……ごめん……あの時……
ちょ、ちょっと待ってて」
「どこ行くの?」
「薬局行って判定薬、買ってくる!」
「え? まだ、出ないかもよ〜」
「一応ね、早く知りたいから〜待ってて!すぐだから……」
「ふふ、まったく……」
──せっかく作ってくれたから、少し食べようかな……鼻をつまめば匂いは、大丈夫かなぁ〜
「うん、美味しい、なかなかやるなぁ〜」
しばらくして帰って来た洋平
「美優〜大丈夫?」
「うん」
「買ってきた。あとでトイレ行く時にお願い!」
「うん、分かった。雑炊ありがとう、美味しいよ」
「ホント? 良かった〜! 大丈夫?」
「うん、少し寝たから、もう大丈夫」
そして、トイレの前まで付き添った。
トイレの前でソワソワする洋平。
「美優、大丈夫?」
「うん」
ガチャ、トイレのドアが開いて美優が出てきた。
「どうだった?」
「……」無言で洋平に見せる
「え? これどっちだっけ? 箱、箱」
「2本とも線が出れば、陽性」
2本、線が並んでる
「美優〜♡やった〜! ありがとう〜」
抱きしめる
「ふふ、おめでとう、パパ」
「うわ〜嬉しい〜! ホントに? ホントだよな。
99%だって〜じゃあ、ほぼ間違いないな。
うわ〜美優〜ママだよ♡おめでとう〜」
「うん、でも……予定より早く出来ちゃったから、まだ後任が育ってないや、半年で教えないと……」
「あ〜そうだな、ごめん、忙しくさせて、大丈夫かなぁ?」
「今は、|悪阻《つわり》が始まったところだから、ツライけど、5ヶ月で安定期に入るし……そしたら、治まると思う」
「うんうん、あー嬉しい〜! ね〜俺すごくない?」
「ん?」
「あの日だけだよな、解禁したの」
「ていうか、洋平が勝手に……」
「ふふふ」
「バーカ」
「明日一緒に産婦人科行こう!」
「え? 洋平忙しいでしょう?」
「午後診なら行けるけど……」
「うん、私も定時後にしか行けない……」
「じゃあ、夕方から行こう」
「うん、分かった」
益々、楽しみが、増えることになった。
翌日、洋平は、顔が綻ぶのを誤魔化しながら、時折、美優を気遣い仕事をこなした。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「大丈夫?」
「うん……」
何度も繰り返されるものだから、美優は……
「ホントに大丈夫だから、仕事に集中して!
何度も聞かれると、せっかく気を紛らわせてるのに、|悪阻《つわり》を思い出して、また気分が悪くなっちゃう」
「あ、ごめん。分かった。何かあったら、すぐに言えよ」
「うん、ありがとう」
そして、定時になり、美優は、いつも通り帰り支度をする。年度末以外は、定時で帰るようにしている。
洋平も仕事を切り上げる。
「杉野課長、珍しく早いですね?」
「今日は、ちょっと、お先に……」
山本と井上が「デートですか?」と、茶化す。
「ハハ、まあな」
「そうよ、羨ましかったら、貴方達も早く彼女ぐらい見つけなさいよ〜」
「け、簡単に出来ね〜から1人なんだよ。な、井上」
「お、お〜」
「ん? なんか井上《《怪しい》》彼女出来た?」
「いや……」
「おい、お前そうなのか? 言えよな」
「あ、ごめん、こんなところで……また、ゆっくり教えてね。ふふ、じゃあ、お先に失礼します」
「お疲れ〜!」
美優は、見逃さなかった。女子社員の1人が恥ずかしそうにしているのを……
「洋平、気づいた?」
「ん?」
「井上に彼女出来た? って聞いた時」
「え? 何?」
「1人、恥ずかしそうに笑ってたのよね〜」
「え、え? 誰?」
「やっぱり、男って鈍感ね」
「誰? 誰? 言わないから教えて!」
「たぶんだけど……片岡さん」
「えー? 全然気づかなかった」
「まだ、分かんないし、絶対に言わないでね。それに、見守ってあげたいから……」
「うん、分かった。もしそうなら、良かったな、井上」
「うん、良かったね。あとは、山本だなぁ〜」
「そうだな」
そんな話をしながら、産婦人科クリニックへ行く為に、美優の車を停めているマンション駐車場まで戻る。
洋平が運転して、向かう。
女医さんのクリニックを選んだ。
尿検査をし、診察を受けエコーを撮ってもらう。
「うん、ちょうど今日から8週目ですね。妊娠3ヶ月です」
「そうですか〜」と、ニコッと笑う美優。
「ご主人も来られてるのかな?」
「あ、はい」
「見てもらう?」
「はい、良いですか? 喜ぶと思います」
洋平も中に入れてもらい、エコーを見せてもらう。
「どうぞ〜見えますか?これが赤ちゃんですよ。」
「あ、はい……」
感激し、言葉にならず呆然と見つめる
洋平。泣き出すんじゃないか?と心配する美優。
「妊娠3ヶ月です。悪阻も出て来てるようなので、安定期に入る5ヶ月ぐらいまでは、気遣ってあげてくださいね。」
「あ、はい、分かりました、ありがとうございます。」ようやく、医師の顔を見て、美優を見る。
ニコッ
「では、ご主人は、前でお待ちください。」
「はい」
役所に行って、母子手帳をもらうこと、
今後の定期妊婦検診について、看護師さんから説明を受けた。
美優が待合室に出ると
「良かったね」と、洋平がニコニコ。
「うん」
手を握る洋平
──更に過保護が始まる!と思った美優
でも、エコーを見せてもらったことで、
パパになる自覚が出て良かったと思った。
貰ったエコーの写真をずっと眺めては、ニヤニヤ笑ってる洋平。
「ふふ」
「ん?」
「嬉しそうで良かった。」
「うん、すっごく嬉しい!」
「泣きそうになってたものね、ふふ」
「いや、そんなことないけど……感動した」
「これから、家事が大変になりそうなんだけど……」
「うん、手伝うから無理しないでね」
「うん、ありがとう」
──良かった、この人で……
幸せな気持ちで帰路へ