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好きですありがとうございました
[人間はとても
穢らわしい生き物なのです。]
前のご主人様はそんなことを
よく言う人だったが
本当にそうなのだろうか。
僕のご主人様達は
僕に優しくしてくれた。
もちろんこの人間も
僕に優しくしてくる。
だが他の人間達は僕のことなんて
どうでもいいのではないのだうか。
生きていようが
死んでいようが
どうでもいいのではないのか。
結局は自分が一番大切だ。
何にも変えることは
出来ないものだからだ。
人間達は自分のことしか考えられない。
だって猫の僕だって
自分のことしか考えられない。
幸せになりたいと夢を見て。
離れたくないとわがままを言う。
決してそれが叶わなくても
僕は僕のためにしか動かない。
前のご主人様が今の僕を見たら
なんて言うのだろうか。
人間が穢らわしい生き物なら
猫だって穢らわしい生き物なのだ。
猫も人間も同じなのだ。
ー猫の僕と人嫌いの道徳家ー
僕のご主人様はモラリストだった。
そして極度の人嫌いだった。
極力人と関わるようなことはしないし
一人部屋にこもる。
真っ暗な部屋の中
一輪のスイセンの花が輝いて見える。
ご主人様は本に釘付けになる日々。
ご主人様の口癖は
[人間はとても
穢らわしい生き物なのです。]
だった。
ご主人様だって人間なのに
どうしてそんなにも
人間を嫌うのだろうか。
[人々は間違っている。]
[人間のあるべき姿は
こうではないのだ!!]
[違う違う何もかもが違う。]
僕はご主人様の言っていることが
全く分からなかった。
だってみんながみんな
同じじゃなきゃいけない理由はない。
同じ考え方をもつ理由もない。
みんな違ってみんないい。
そんな言葉があるように
人間だって猫だって
同じじゃなくていい。
必要ないのだ。
だからといってご主人様の考えを
否定するわけではない。
だが肯定するわけではない。
どちらかといえば
僕はご主人様とは反対の
考えをもっているからだ。
みんな違っていいのなら
ご主人様と僕が同じである必要ないのだ。
人間と猫も違っていい。
だけどもご主人様は
自分とは反対の考え方を
一切認めなかった。
自分が正しく
それ以外は間違っていると。
ご主人様の考えが
合っているとは限らないし
反対の考え方が
間違ってるとも限らない。
ご主人様は理想が高すぎるゆえに
理想と現実の区別が
はっきり出来ていないのだ。
もっと視野を広く持ち
沢山の人の声に耳を傾けるのは
だめなのだろうか。
だめなのならどうしようもないが
目の前で起きた出来事に対し
綺麗事で片付けてしまうのは
どうなのだうか。
人間は耳があり口があり手がある。
耳で人の話をきき
口で人と話し
手で触れ合うことができる。
なのにご主人様はそれをしない。
人間を嫌い孤独に一人ぼっち。
唯一猫の僕はご主人様の隣に居れる。
もしもご主人様が
僕の考え方を知ってしまえば
僕のことを拒絶するかもしれない。
僕のことも
嫌いになっちゃうかもしれない。
それは嫌だけど
互いの気持ちは尊重したい。
こんなわがままの僕のことを
許してくれるのだろうか。
許されなくてもいい。
僕の気持ちがご主人様に少しでも
伝わってくれればそれでいい。
それでいいのだ。
わがままなんて言わないから
この人間の隣に居たい。
人間が僕のことを
どう思っていてもいい。
ただ嫌いにはならないでほしい。
僕はまだ心を許したわけじゃないけど
嫌いにならないでほしいだなんて
それこそわがままかもしれない。
わがままなんて言わないっていたけど
これだけは伝えたかった。
もう一人ぼっちに戻るのは嫌だ。
捨てないで。
離さないで。
置いて行かないで。
一人ぼっちには慣れていたけど
人間の暖かさを知って優しさに触れて
もう一人ぼっちには戻れない。
寒くて孤独で辛い一人ぼっちには
もう戻ることはできないんだ。
だからこれだけ。
最後のわがままでもいい。
僕のことを絶対に嫌いにならないで。
僕はソファーに座っていた
人間の膝の上にのる。
そして人間の目を見て大きく鳴く。
「どうした??
撫でてほしいの?甘えたいのかな??」
人間はよしよしと頭を撫でてくれる。
猫と人間。
言葉は通じ合わなくとも
心は通じ合えるそんな気がした。
同じ考え方を持つ必要はない。
僕は僕が生きたいように
生きていく。
今までだってそうだった。
だからこれからもだ。
幸せになりたいという夢を
現実で叶えてみせる。
だってこれが
僕の最後の人生だから。
僕の9回目の人生。
後悔はしたくない。
絶対にしない。
だから絶対に僕のことを
嫌いにならないでね。
…ねぇ“ご主人様”。