「もし僕が前世の記憶がある
って言ったら信じてくれる??」
ご主人様は突然
そんなことを僕にきいてきた。
前世の記憶。
僕は今まで生きてきた
8つの記憶を鮮明に覚えている。
忘れたくても忘れなれない記憶
だから人間のご主人様が
前世の記憶を持っていたとしても
僕にとっては不思議なことではない。
なぜそんなことを僕にきくのだろうか。
僕はご主人様に向かって小さく鳴く。
ご主人様は少し口角をあげ
僕に向かって話し出した。
「僕ね前世の記憶を持ってるだ。
そして君のような
猫と暮らしてたんだ。
ー猫の僕と訳ありのアルビノー
『ご主人様なんて大っ嫌いだ!!』
信じた僕がばかだった。
心を許しすぎてしまった。
ご主人様は二度と僕の目の前に
現れることはなかった。
僕のご主人様はカモミールのような白髪に
ルビーのような瞳を持っていた。
人々はご主人様のことを
アルビノと呼んでいた。
ご主人様は体が弱く
よく寝込んでいた。
体調を崩すことも多く
僕はとても心配だった。
ご主人様はいつも僕に
[僕は大丈夫だから。]
とか
[安心してね。]
などと僕を不安にさせないように
してくれていた。
だから僕はご主人様のおかげで
少しだけ安心できた。
僕はご主人様のことを信じていた。
信用していた。
僕にはご主人様しか居ないから。
あの日が来るまでは…。
あの日は太陽が顔を隠し
比較的過ごしやすい日だった。
僕はご主人様に抱えられ
ご主人様の両親が暮らしている
家に連れてこられた。
どうして急に連れてこられたのか
僕は分からなかった。
[あらかわいい猫ちゃんね。]
[サラサラでモフモフだな。]
ご主人様の両親は
僕のことをたくさん撫でてくれた。
それに抱っこもしてくれた。
いっぱいご飯くれるし
フカフカのベットまでくれた。
楽しかった。
幸せだった。
なのにご主人様は
ずっと悲しそうな顔をする。
なんで?どうして?
ご主人様はなぜそんな顔をするの?
どこか痛いの?寂しいの?
ねぇおねがいご主人様
何か言ってよ…。
僕は大きな声で鳴く。
するとご主人様は僕に近づいて
力強く抱きしめてくれた。
[…ごめんね。]
ただ一言だけ。
僕はこの言葉の意味が分からなかった。
何に対して謝っているのかも
分からなかった。
ご主人様は僕を床におろし
自分の荷物を持ち立ち上がった。
そして玄関の方に歩き出した。
台所からは
[もう行っちゃうの??]
と。
リビングからは
[もう少しゆっくりしてけばいいのに。]
など声がきこえる。
どこか行っちゃうの??
僕のことを置いていっちゃうの??
ねぇご主人様待ってよ。
僕のことを一人にしないでよ。
ご主人様は扉のドアノブを握り
僕の方を見た。
「安心して良い子で待っててね。」
[絶対帰ってくるからね。]
もうやめてよ。
そんな泣きそうな顔で言わないで。
本当に帰ってくるの??
僕はご主人様を信じてるよ。
だから…だから帰ってきてね。
何日何週間何ヶ月も待った。
待ってるのに
ご主人様は帰ってこなかった。
それから何年もたったが
それでも帰ってくることはなかった。
ご主人様は二度と
僕の目の前に現れなかった。
絶対って言ったのに。
帰ってくるって言ったのに。
待っててねって言ったのに。
ご主人様の言う通りに
良い子で待ってたのに。
もう信じられない。
『ご主人様なんて大っ嫌いだ!!』
僕は絶対帰るっていったし
待っててねって言ったんだけど
そのまま病気が悪化して
帰ることは出来なかったんだ。
申し訳なかったんだ。
約束を守れなくて
本当に自分が許せなかった。
ずっとずっと後悔してた。
そんな時君に出会ったんだ。
あの雨の日のこと覚えてる??
運命かと思った。
だって前世で一緒だったあの子と
全く同じ見た目で雰囲気も果てしなく
あの子に似ていたから。
神様が僕達を繋いでくれたと思って
気づけば君のことを
連れて帰ってたんだ。
僕はその時に決めたんだ。
次は絶対に守ってみせるってね。
…ごめんね。
君には関係ない話なんだけどさ。
謝りたかったんだ。
今更遅いとは思うけど
どうしてもあの子に伝えたかった。
ごめんねって。」
僕は困惑していた。
僕の前のご主人様は
今のご主人様ってこと…??
ご主人様は僕のことを
置いていった訳じゃなくて
病気のせいで帰って
これなくなっちゃったってこと…??
決して僕を一人にしたかった訳じゃなく
どうしても仕方がなかったってこと…??
…ご主人様…
そんな悲しそうな顔で謝らないで。
謝らなきゃいけないのは
僕の方だから。
ごめんねご主人様。
『ご主人様大好きだよ。』
コメント
2件
ほわぁぁぁすきいいい
アルビノってなんだろうと思って調べてみたんだけどこのことか🥹‼️ 猫×人間っていう小説が最高すぎる次も楽しみ🥲