テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
外はすっかり明るくなっているのに、いつもなら騒がしいリビングは、重苦しい静けさと荒い呼吸の音だけで満たされていた。
ソファの上では、39度超えの高熱でうなされる五男💛が長男❤️の服の裾をぎゅっと握ったまま、眠っている。その横では、38度半ばの熱と鼻づまりで泣き疲れた末っ子💙を、次男💜がずっと抱っこしてあやしていた。
❤️「……ふぅ……」
コンロでお粥の様子を見ながら、❤️は小さく息を吐いた。
40度近い尋常じゃない熱のせいで頭がぐわんぐわんと激しく回り、立っているだけで足元がフワフワと二重にブレた。
ふぅと大きく息を吸い込んで、いつもの「頼れる長男」の笑顔を作った。
❤️「💙は寝そう?」
声をかけた瞬間、抱っこ紐代わりにと💙をあやしていた💜が、びくっと肩を揺らした。
💜の熱を測ると、平熱。しかし、頭の中にガンガンと割れるような激痛と、体全体に強い倦怠感が襲っていた。熱がないからこそ、周りからは気付かれにくい。
💜「……あ、あぁ。今やっと、落ち着いたところ……」
💜の声はかすれていた。言葉は交わさなくても、お互いに一目で分かった。
❤️(……あいつ、顔色が最悪だ)
💜(さっきから寒気で震えすぎだろ。絶対高熱)
❤️は💜にだけ聞こえるような小さな声で、そっと語りかけた。
❤️「お前、無理すんなよ? 頭痛いんだろ、辛かったら横になれ」
すると💜は、頭痛をこらえるように一瞬だけ目を細め、フッと鼻で笑った。
💜「そのセリフ、鏡に向かってからにして。さっきから寒さでガタガタ震えてんじゃん」
💜「……とりあえず、交代。俺がそっちやるから、❤️は少し座って」
❤️「いや、俺は大丈夫。💜こそ、そのだるさで💙を抱っこしてんの、腕も頭もキツイだろ。」
お互いに一歩も引かない。
その時、和室の布団から、激しい腹痛のせいで動けない三男🩷 が、弱々しい声で2人を呼んだ。
🩷「……❤️兄、💜兄……? 二人とも、なんかおかしいよ。怒ってる……?」
上2人が必死に隠している「限界」を、敏感に察知して不安そうにする🩷。その声に、❤️と💜は同時にハッとして、顔を見合わせた。
❤️「……よし。作戦変更な」
❤️がポツリと言うと、💜が小さく頷いた。
💜「了解」
2人は同時にいつもの優しい兄の顔に戻り、自分の体の痛みとだるさを奥底にギュッと押し込んで、和室へと動き出した。
💚「ケホッ、ケホッ……!……は、っ、……ん、ぅ……」
四男💚が苦しそうに胸を押さえて激しく咳き込むと、すぐに隣からすっと手が伸びてきた。❤️が💚の体を優しく起こし、トントンとリズミカルに背中をさする。
❤️「苦しいな。一気に吐き出そうとしないで、ゆっくり息吸って。吸って、吐いて……そう、上手上手」
❤️の声はいつも通り優しくて穏やかだ。でも、💚の背中を叩く❤️の手は、激しい熱と寒さで細かく震えている。❤️の視界はさっきから熱さでチカチカしていて、💚の姿が二重に見えていた。
一方、布団の中で丸くなっている🩷の元には、💜がポカリスエットの入ったコップを持ってやってきた。
💜「お腹の痛みどう? 少し水分摂れそうか?」
🩷「……うん。ありがとう、💜兄……」
💜が体を支えてコップを口元に運んであげる。だけど、そのコップを持つ💜の指先が、強烈な倦怠感のせいでカタカタと小さく音を立てていた。🩷はストローから少しだけポカリを飲むと、上目遣いで💜の顔をじっと見つめた。目の下にはくっきりとクマがあり、呼吸が驚くほど浅くて速い。
🩷「……💜兄、顔が真っ白……本当に大丈夫?」
🩷が静かに呟いた。高校生になり、兄たちの体調の変化にもちゃんと気づけるようになった🩷の目はごまかせない。
💜「気のせい。少し体がだるいだけ。ほら、もう一回横になってろ」
🩷「でも……」
その時、💚の背中をさすっていた❤️が、急に動きを止めた。
❤️「……っ、」
40度近い熱による激しい目眩が襲ったのか、❤️が自分の額を押さえて、その場にしゃがみ込んでしまう。
💚「❤️兄……!?」
💚はさっきからの激しい咳のせいで体力をゴリゴリに削られており、声がかすれている。
❤️は慌てて顔を上げ、無理やり笑顔を作ってみせる。
❤️「ごめんごめん、ちょっと立ちくらみ大丈夫……」
冗談めかして笑う❤️の横顔を、💜は冷や冷やしながら見ていた。
(もう限界超えてる……。顔が真っ赤これ、40度は絶対に超えてる……)
心の中で焦るが、それを言う自分だって、さっきから頭痛せいでまともに立っていられない。
💜「❤️、💚の背中、俺が代わる。お前、あっちで水飲んでこい」
💜が声を低くして言うと、❤️はすまなさそうに❤️「……悪い、ちょっとだけな」と呟き、ふらふらと立ち上がって和室を出て行った。
残された二人は 、お互いに顔を見合わせる。
🩷「……❤️兄も、💜兄も、絶対におかしいよね」
💚「うん……。俺たちのせいで、無理させてる……」
自分たちの体調不良の苦しさよりも上の2人が倒れてしまうんじゃないかという恐怖で、2人の胸は、一杯になっていた。
和室を後にして、一人キッチンにたどり着いた❤️は、シンクの縁に両手を突いて激しく呼吸を乱していた。
❤️「はぁ、っ、……ふぅ……っ、」
静まり返ったキッチンに、自分の荒い息遣いだけが響く。強烈な目眩のせいで、上下の感覚すら分からなくなっていた。体の芯が信じられないほど熱いのに、指先は氷のように冷たい。
201
100
21,068
朦朧とする意識の中で、それだけを考えて冷蔵庫を開ける。2リットルのペットボトルを掴んだものの、危うく床に落としそうになった。
なんとかキャッチしたものの、その拍子に体勢を崩し、❤️の体が壁に向かって大きく傾く。
床が迫ってくる感覚。もう体を支える力は一ミリも残っていなかった。
その時。
💜「――おっと、倒れるなら、俺の上にしとけって」
ドサッと重い音が響く前に、横から伸びてきた細い腕が、❤️の体をがっしりと受け止めた。
❤️「……💜……?」
💜「見ててハラハラすんだよ……。何が『ちょっと立ちくらみ』だ、バカ兄貴」
💜は❤️の体を壁に寄りかからせながら、その額に自分の手を合わせた。次の瞬間、💜は息を呑んだ。
💜「……あっつ……。何これ、40度近くあるだろ」
❤️「……バレた? 💜だって、さっきから、呼吸……上がってんじゃん……」
❤️が弱々しく笑いながら、💜の肩に頭を預ける。実際、❤️を支えている💜の膝も、強烈な倦怠感のせいでガタガタと震えていた。
❤️「お前が……倒れたら、下のみんなが……泣くだろ……」
意識が飛びかけながらも、まだ下の弟たちの心配をしている。
💜「分かってる。まだ倒れない。……❤️も、まだ寝るな。ここで2人で倒れたら、それこそチビたちがパニックになる」
💜「一回、リビングのソファ行くぞ。チビたちに見えないところで、2人で、ちょっとだけ、休むんだ……」
リビングのソファにたどり着いた兄二人は、もう動けなくなっていた。❤️はソファに倒れ込み、💜はその足元に座り込むようにして目を閉じている。
その時、和室の襖が静かに開いた。
🩷「……❤️兄? 💜兄……?」
少し腹痛が落ち着いた🩷と、薬が効いて激しい咳が止まった💚が、おそるおそるリビングを覗き込んだ。そこで目にしたのは、いつも自分たちを守ってくれる上2人が、見たこともないくらい苦しそうに倒れている姿だった。
💚「……やっぱり、無理してたんだ……」
でも、🩷はぎゅっと拳を握りしめて、💚の顔を見た。
🩷「 そんな場合じゃない。今度は俺たちが兄貴たちを助ける番だよ。……ポカリと、冷えピタ、持ってこよう」
💚「うん……っ 俺、冷えピタ持ってくる」
2人は静かに、でも必死に動き出した。
微熱で体力は万全ではないが、💚はキッチンの冷蔵庫から冷えピタの箱を取り出した。❤️がさっき落としかけたポカリのボトルを両手で抱え、コップに慎重に注ぐ。
💚「❤️兄、💜兄……冷えピタ持ってきたよ」
💚がそっと近づき、❤️の熱い額に、冷たいシートをペタッと貼った。
❤️「つめたっ……、」
❤️がかすかに眉を動かし、うっすらと目を開ける。
❤️「 お前、部屋で寝てろって……」
💚「❤️兄、大丈夫ありがとう」
💚の手つきは、いつの間にか❤️にそっくりだった。
隣では、🩷が💜の枕元にコップを置いていた。
🩷「💜兄、ポカリ入れたよ。飲めそう?」
💜「お前、お腹、大丈夫なのか……?」
💜がだるそうに掠れた声で聞くと、🩷は少し大人びた笑みを見せた。
🩷「うん、もう大丈夫。だから、💜兄も早く良くなって。頭、痛いんでしょ」
二人の頼もしい姿を見て、❤️と💜は張り詰めていた肩の力を、ようやくストンと抜くことができた。
❤️「……ありがとな、2人とも。……頼もしいわ、まじで……」
❤️が愛おしそう目を細めて笑う。
💜「……助かった。あとは、ちょっとだけ、寝かせて……」
💜も安心したように、深く息を吐いて目を閉じた。
🩷と💚は、寝室から持ってきた大きな毛布を、2人の体にそっとかけてあげる。
🩷、💚「おやすみ、お兄ちゃん」
まだ熱や頭痛は残っているけれど、リビングを包む空気は、どこまでも温かくて優しいものに変わっていた。
END
コメント
3件
読み終えた……なんつーか、心がぽかぽかするなこれ。❤️と💜が限界ギリギリでお互いをかばい合いながら下の子たちを支えてるとこ、マジで胸にきた。「俺の上にしとけ」とか言っちゃう💜、渋すぎるだろ。でも何より刺さったのは、🩷と💚が「今度は俺たちが助ける番」って動き出すシーン。頼もしく成長した弟たちに、兄たちもようやく肩の力を抜ける。バトンタッチ、本当に完璧なタイトルだわ。家族っていいな。