テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ここか…」
研究員の男の言った通り、通路を右に曲がり通路をしばらく走った後すぐに周りとは違って重苦しい雰囲気の大きな扉を見つけると、そのまま勢いよくその扉を蹴り開ける
すると前には大層な椅子に据わった中年の男が「待っていた」というようにカラスバを見ていた
しかしカラスバはその男の瞳を見て、ゾッとする
その男の瞳は瞳孔こそ違うものの、目の色だけはシオンと同じ特徴的なショッキングピンクの瞳をしていたから
「お前が来たってことは…6番か」
「…番号で呼ぶんやな。いかにも研究所らしいわ。」
そう言って、今すぐこの男の脳天をぶち抜きたい気持ちを抑えつつ男へ近寄る
「君はカロス地方でかなり権力を持ち始めていると聞いてるよ。初めまして、私はフジ。」
「別にんな自己紹介されても、もう会わへんし」
そう話すとフジは笑う
「はははっ、どうやらその様子だと6番は君にとって素敵な存在だったようだ」
カラスバの眉がピクッと動き、クロードを睨む
「あの子の母親は不思議な目をしていた、純粋に私を愛して…騙されてるとは知らず馬鹿な女だった。
あの女は他の被検体と違って、子供に情を持っていた。裏切った男の子供なのに関係なく愛していた。
そのせいか、6番と7番は最後まで感情を消しきることが出来なかった」
最後の言葉にカラスバはゾッと悪寒がする
これ程根っこから性根が腐った男が今までいただろうか?
1年前に大事件を起こし、悪者と蔑まれたフラダリさんも根は優しく、いい人だった
だからこそあのような行動をとった
それなのにコイツは元々人間をただの道具としか見ていない
そういった感情をもちあわせていない
「…まぁどう転がってもいい研究結果になると思ったんだ。
今までの子達はダメだったら皆すぐ死を選んだ、しかし感情がある6番達なら死を恐れ目的に忠実になると思っていた
現に7番は目的を遂行した、しかし6番は君を殺さず自分の命を選んだ。
それはそれでとても興味深い結果だった」
そう笑いつつ、ノートにツラツラと書き記していくフジに心底嫌悪感を抱く
「しかし、反対に残念だ
6番は私の記録上1番優秀だった。回復能力は高いし、身体能力も優れていた。
しかし頭はあの女に似てしまった、やはり6番は外に出すよりもここで子を孕ませて───」
────パンッ!!
クロードの肩に銃弾がめり込むがクロードは動じずそのままカラスバの方を見つめていた
カラスバは青筋を立て、クロードの顔を睨みつけていた
その表情は恐ろしく後から合流した部下達も小さく震えていた
「ははっ、禁句だったみたいだな。」
「連れてけ」
「は、はっ!」
部下達がカラスバの声と共にフジの肩を持ち、引きずるようにフジを連れていく
「…感情を全て消し去るのはやはり、私には難しかったようだな」
去り際、笑いながらフジはそう呟いた
何十年もシオン達を苦しめた人間はあまりにも呆気なく潰れた
「……………」
フジの机の引き出しを開ける
するとそこにはターゲットの資料が入っていた
勿論、カラスバの情報も
そして1番奥底でくしゃくしゃになった紙を見つけそれを見ると見た目はとても若く18~20程に見えるが確かにフジと思われる、被検体の資料情報があった
〖37番 成功被検体〗
〖IQ 246〗
〖記憶削除、感情削除に成功───〗
その資料を少し眺めたあと、そのまま床に捨てる
また違う引き出しを漁ると、二重底になっている引き出しをみつけその引き出しを開けるととある女性の写った写真と日記のような小さなノートが置かれている
写真には薄水色の髪に特徴的な瞳孔をした青眼の女性、見た目こそアザミに似ていたが髪は長く無邪気に笑う無垢な表情がシオンに似ていた
きっとシオン達の母親だろう
そしてノートを見ると、そこには走り書きで文字が書かれていた
ノートはほぼ計算式や何かの実験の記録のようなものを書かれていたがところどころ日記のようなものが書かれている
〇月〇日
デイジーに日記を書いてみればと言われたので書いてみた
なにをかけばいいのか
〇月〇日
どうやら双子の女の子らしい
久しぶりに会ったデイジーが嬉しそうにはしゃいでいた
子供というものはあまり分からないが、何故かとても嬉しく感じた
それと同時にこの子達もあの計画に利用されるのではないかとデイジーは心配していた
〇月〇日
デイジーは逃げ出せただろうか
監視システムもうまく細工したし、明日の朝までにはきっと持つはず
しかし結果も分からず、このまま自分が消えてしまうのは悲しく感じる
けどデイジーならきっと大丈夫だろう
シオンとアザミを連れてきっと外で生きてくれるはずだろう
だが自分がその場に居ないのは悲しい
3人と共にデイジーが言っていた家族というものになってみたかった
デイジーの言う外の世界で会えていればと思うと残念でならない
〇月〇日
デイジーが捕まった、オレのせいだ
オレがしくってしまった
オレが3人の未来を奪ってしまった
急遽だったが、残された時間を使ってあの装置に細工をした
監視システムは抜くことが出来たが、1つ解除することが出来なかった
しかし、施設の位置情報さえ言わなければこれでシオン達は遠い将来死ぬ確率は少しでも低くなるはず
それにこの実験はオレで最後だからデイジーやシオン達がオレの二の舞になる事はないだろう
流石にもうこれ以上は時間が無い
すまない、助けることが出来ずすまない
なにも出来
ノートはそこで止まっていた
あまり日記のようなものは書いておらず、日付も飛び飛びなことが多かった
あの男もこの施設の被害者だったのだろうか
元々フラダリさんのように心根がいい人だったのだろうか
デイジーというのはきっとシオンの母だろう、一度は逃がそうとしたがシオンとアザミがあの状況だったという事は計画は失敗に終わったのか
そしてそのまま記憶も感情も何もかも忘れたと言ったところか
──正直あの男の心根は理解できないし、アイツの人生がどんなものだったとしても決して同情は出来ない。同情の余地などない
「…酷い世界やな」
そう言って写真を胸ポケットに入れ、ノートを手に取りその部屋を後にした