みんなに喝を入れてもらったものの、
やはりらっだぁが心配で、書類を片付ける手は
何度も何度も止まってしまう。
クロノアさんもチラチラとスマホを
確認していたり、
しにがみ君やトラゾーに関しても、
いつもは書類中にもふざけて
みんなを笑わせてくれるのに、
今回は黙々と書類に手をつけている。
残ったのは、ただの静寂だった。
自分も含め俺たち四人は
よくらっだぁをからかうが、
結局のところみんならっだぁが好きだ。
らっだぁがいないと、こんなにも
みんなが変わってしまうほどに
明るく元気で凄いやつだ。
昔はこんな奴じゃなかったんだけどなぁと、
幼き頃を思い出しながら書類を進める。
そしてふと、俺はその手を止めた。
小さい頃のらっだぁって、
どんな奴だったっけ?
何故か、そのような疑問が頭に浮かぶ。
俺とらっだぁは幼馴染みだ。
だから互いのことを、小さいときから知っている。
そのはずなのに。
らっだぁと遊んだ昔の日々が、
一切と言っていいほどに思い出せない。
幼い頃のらっだぁの、
性格や雰囲気はぼんやりと覚えている。
少し臆病で、根暗で、人見知りで。
しかし、それ以外、なにも思い出せない。
小さい頃に遊んだ記憶も、
笑いあった記憶も、
何一つ、覚えていない。
見た目は?声は?好きな物は?嫌いな物は?
だめだ、なにも覚えていない。
なぜだ、なぜ思い出せない?
そんな疑問を抱いていくうちに、
ふと思った。
らっだぁは、本当に幼馴染なのか?
だって、記憶が無いじゃないか。
幼馴染だったら、遊んだ日々の記憶とか、
沢山あるはずなのに。
分からない。何も、分からない。
まるで頭にモヤがかかったように、
何も思い出すことができない。
なぜ記憶が無い?
まさか、記憶喪失になったのか?
それとも俺が幼馴染だと勘違いしてて、
本当は幼馴染じゃなかったとか?
だとしたら、なぜ勘違いしていた?
なぜ、なぜ?
思考を回せば回すほど、
どんどんと底に落ちていってしまう。
俺は、らっだぁと、
どんな関係だったのだろう。
sn「……………おーい、ぺいんとさーん?」
俺は、そのしにがみの声で、
はっと我に返る。
pe「うぇ、えっ?!え、あ、うん、どうした?」
sn「あ、反応した。よかったぁ〜生きてて!」
俺は慌てて周りを見渡す。
しにがみ君が目の前でニヤついていて、
その後ろで、クロノアさんと
トラゾーが苦笑いしていた。
tr「ぺいんと〜、書類進める手が止まってんぞ〜?」
kr「あとぺいんとだけだよ?書類終わってないの。」
pe「…え、まじで?みんな早くない?」
いつの間にか3人がフリーになっていて、
俺は少し動揺する。
sn「ぺいんとさんが遅すぎるんですよ、早く運営国行きたいのに!」
pe「ご、ごめん!すぐ終わらす!待ってて!! 」
三人を長くは待たせまいと、
俺は急いでペンを進める。
少しくらい雑になってもいいだろ、と
思いながら書類を進めていると、
クロノアさんがギラりと目を光らせた。
kr「なるべく早く、それでもって、雑にならぬよう丁寧に、ね?」
pe「…すんません。」
クロノアさんの圧を直に受けながら
俺は確実に書類を進める。
それを横目で見ているトラゾーと
しにがみ君は、嘲笑していた。
tr「んじゃ、俺らは先に運営国行く用意してるわ。」
sn「ぺいんとさんは居残り、頑張ってくださいね!」
そう言って、2人は会議室から出ていく。
pe「ちょ、俺も頑張んなきゃ…」
俺は今度こそしっかりと、書類と向き合う。
クロノアさんの監視下で、
俺は精一杯書類に励んだ。
pe「…これで終わり、っと !」
最後の書類にサインを書き、
日常国のシンボルが彫られた朱印を押す。
これで、やるべき書類は全て無くなった。
俺は、うーん、と背伸びをする。
sn「あ、ぺいんとさん終わりました?」
pe「うん、待たせてごめん!」
tr「急げよぺいんとー?近いとはいえ、一応少しはかかるんだから。」
pe「わかったわかった、急ぐから!」
そのように返事をしながら、
俺はせっせと身支度を整える。
pe「えーっと、スマホよし財布よしパスポートよし、髪型よし服装よし…うん、大丈夫!」
kr「国の人達には、運営国に行くことは通達済みだよ。」
sn「さっすがクロノアさん!仕事が早い!」
tr「どっかの誰かさんと違ってな?」
pe「…あ”ーーー!もういいだろ!早く行くぞ!!」
kr「はいはい。」
いつも通りのからかい合い。
俺は三人を会議室から押し出す。
こうして、俺らは運営国に向かった。
運営国に行くための
電車が来るのを待っていた頃、
クロノアさんのスマホが鳴った。
kr「…あ、コンタミさんからだ。」
どうやら、メールが来たらしい。
クロノアさんは素早く返信を打ち、
スマホをポッケに片付ける。
tr「なんて来たんですか?」
kr「諸々用意が終わったから、いつでも来てください、だってさ。今から向かうって返信しといた。」
sn「グッドタイミングじゃないですか!」
そう話してるうちに、
ガタンゴトン、という電車の音が
聞こえてきた。
tr「あ、電車きましたね。」
kr「よし、それじゃあ向かおうか。」
pe「運営国へ、レッツGOー!」
そうして、俺らは電車に乗った。
コメント
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え?なにこれめっちゃオモロイ
れっつらごー 思い出せない…普通に忘れた訳はないよn