みんなに喝を入れてもらったものの、
やはりらっだぁが心配で書類を片付ける手は
何度も何度も止まってしまう。
クロノアさんもチラチラとスマホを
確認していたり、
しにがみ君やトラゾーに関しても、
いつもは書類中にもふざけて
みんなを笑わせてくれるのに、
今回は黙々と書類に手をつけている。
残ったのは、ただの静寂だった。
みんな…自分も含め、
よくらっだぁをからかうが、
結局のところ、みんならっだぁが好きだ。
らっだぁは、みんなの元気の根源。
らっだぁがいないと、こんなにも
みんなが変わってしまうほどに
明るく元気で凄い人だ。
昔はこんなんじゃなかったんだけどなぁと、
らっだぁが行方不明のことを意識しないよう
妄想しながら書類に手をつける。
そして、ふと書類を進める手を止めた。
…小さい頃のらっだぁって、
どんなヤツだったっけ?
何故か、そのような疑問が頭に浮かぶ。
雰囲気は覚えている。
少し臆病で、根暗で、人見知りで…
でも、雰囲気以外、なにも思い出せない。
小さい頃に遊んだ記憶も、
笑いあった記憶も、
何一つ、覚えていない。
らっだぁはどんなヤツだった?
見た目は?声は?好きな物は?嫌いな物は?
何故か、らっだぁとの幼い頃の記憶が無い。
なぜだ?なぜ思い出せない?
そんな疑問を抱いていくうちに、
ふと思った。
らっだぁは、本当に幼馴染なのか?
だって、記憶が無いじゃないか。
幼馴染だったら、遊んだ記憶とか、
沢山あるはずなのに。
…分からない。何も、分からない。
記憶喪失にでもなったかのように
小さい頃の記憶が無い。
まるで頭に霧がかかったようだ。
らっだぁと遊んだ記憶が、
一ミリたりとも思い出せない。
なぜ記憶が無い?
本当に記憶喪失になったのか?
それとも、俺が幼馴染だと勘違いしてて、
本当は幼馴染じゃなかった?
だとしたら、なぜ勘違いしていた?
なぜ、なぜ?
思考すればするほど、
どんどんと底に落ちていってしまう。
らっだぁは、俺にとってのなんだ?
らっだぁにとっての、俺は…?
sn「……………おーい、ぺいんとさーん?」
俺は、そのしにがみの声で、
はっと我に返る。
pe「うぇ?!えっ?!え、あ、うん、どうした?」
sn「あ、反応した。よかったぁ〜生きててw」
俺は慌てて周りを見渡す。
しにがみ君が目の前でニヤついていて、
その後ろで、クロノアさんと
トラゾーが苦笑いしていた。
tr「ぺいんと〜、書類進める手が止まってんぞ〜?」
kr「あとぺいんとだけだよ?書類終わってないの。」
pe「…え、まじで?みんな早くない?」
いつの間にか3人がフリーになっていて、
俺は少し動揺する。
sn「ぺいんとさんが遅すぎるんですよもぉ〜、早く運営国行きたいのに〜」
pe「ご、ごめん!すぐ終わらす!待ってて!!」
三人を長くは待たせまいと、
俺は急いでペンを進める。
少しくらい雑になってもいいだろ、と
思いながら書類を進めていると、
クロノアさんがギラりと目を光らせた。
kr「…なるべく早く、それでもって、雑にならぬよう丁寧に、ね?」
pe「…すんません。」
クロノアさんの圧を直に受けながら
俺は確実に書類を進める。
それを横目で見ているトラゾーと
しにがみ君は、嘲笑していた。
tr「んじゃ、俺らは先に運営国行く用意してるわ。」
sn「ぺいんとさんは居残り、頑張ってくださいねぇ〜w」
そう言って、2人は会議室から出ていく。
pe「ちょ、俺も頑張んなきゃ…」
俺は、今度はしっかり書類と向き合う。
クロノアさんの監視下で、
俺は精一杯書類に励んだ。
pe「…っし!終わった〜!!」
最後の書類に日常国のサインを書き、
日常国のシンボルが彫られた朱印を押す。
これで、やるべき書類は全て無くなった。
俺は、うーん、と背伸びをする。
sn「あ、ぺいんとさん終わりました?」
pe「うん!待たせてごめん!!」
tr「急げよぺいんとー?近いとはいえ、一応少しはかかるんだから。」
pe「わかったわかった、急ぐ急ぐ!!」
そのように返事をしながら、
俺はせっせと身支度を整える。
pe「えーっと、スマホよし財布よしパスポートよし、髪型よし服装よし…うん、大丈夫!」
kr「国の人達には、運営国に行くことは通達済みだよ。」
sn「さっすがクロノアさん!仕事が早い!」
tr「どっかの誰かさんと違ってなぁ?w」
pe「…あ”ーーー!もういいだろ!早く行くぞ!」
kr「はいはいw」
いつも通りのからかい合い。
俺は三人を会議室から押し出す。
こうして、俺らは運営国に向かった。
運営国に行くための
電車が来るのを待っていた頃、
クロノアさんのスマホが鳴った。
kr「…あ、コンタミさんからだ。」
どうやら、メールが来たらしい。
クロノアさんは素早く返信を打ち、
スマホをポッケに片付ける。
tr「なんて来たんですか?」
kr「諸々用意は終わったからいつでも来てください、だってさ。今から向かうって返信しといた。」
sn「グッドタイミングじゃないですか!」
そう話してるうちに、
ガタンゴトン、という電車の音が
聞こえてきた。
tr「あ、電車きましたね。」
kr「…よし、それじゃあ、向かおうか。」
pe「運営国へ、レッツGOー!」
そうして、俺らは電車に乗った。
コメント
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え?なにこれめっちゃオモロイ
れっつらごー 思い出せない…普通に忘れた訳はないよn