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次のニュースです、というニュースキャスターの人工的な甲高い声が耳に流れ込む。
「──神奈川県横浜市で当時4歳だった女の子が行方不明になった事件から早2年…」
付けっぱなしだったテレビの画面に映る、パリッとした清潔そうなスーツを身に纏った若い女性キャスターが痛ましそうな表情と声色で用紙に書かれているニュースをすらすらと読み上げる。
その姿は不自然で子供の目から見ても明らかに芝居かかっているのが分かった。
「警察は何らかの事件に巻き込まれた可能性とみて捜査を続けています。」
けいさつ、じけん、そうさ。
耳に飛び込んでくる言葉たちが上手く脳内で変換されず、小さな疑問が胸の奥底に残る。
そうしている間にもニュースは続いていき、女性キャスターが手に持っている用紙から目を離し、画面を向いたその瞬間。ピッという甲高い電子音が一瞬の間も埋め、画面が墨で塗りつぶされたみたいに真っ暗になった。
その途端、唯一の光が伏せた室内にドス黒い靄のような雰囲気が漂い始め、不気味な空気が肺を埋め出す。
「…○○、」
不意に先ほどの甲高い声とは違う、低い男性の声が静寂の籠った室内に張り付いた。
なあに?、と呼びかけられたその声に明るく応え、くるりと振り返る。
その拍子に肩に垂れていた自身の黒い髪がパラパラと重力に従い視界の端で小さく揺れた。
「オレのこと好き?」
視界に映ったその声の主は、ぐいっとあたしの胴のあたりを横から抱くように引き寄せ、あたしの肩に自身の顔を埋めると、不安の滲んだ声色でそう問いかけてきた。
不安で滲んだ瞳が私を捉える。
『だいすき!』
そんな問いに一瞬の迷いも見せず声の主──いざなを抱きしめ、そう答える。
思いとともに吐き出した声が今にも歌い出しそうに大きく弾み出す。
まだまだあどけなさの残った舌足らずな声や仕草には無邪気や純粋という綺麗な言葉以外に当てはまるものは無いだろう。
──とある一点を除いては、だが。
「…オレも好き、愛してる。」
「だから絶対この部屋から出るな 。誰が来ても、何があっても、絶対。」
いざなの部屋の空気を緊張させる力強い低い声が凛と響く。
ゆっくりと合わせられたいざなの紫色の瞳。その中には不安の色が光っている様に見えた。
「オレのこと好きなら」
肌に纏わりつくような、甘く、低く、縋るように吐き捨てられるその声には力がなく声よりも息に近い。
「……オレから離れるな」
カランと彼の耳元で花札のピアスが躍る。
感情の読み取れない声が不協和音の様に耳底に残る。
ぎゅっとさらに込められる腕の力と声色に、ひしひしと見えないものに監視されているような圧迫感を感じる。腕を回されている胴が捻り上げられたかのように、キリリと痛んだ。
だが、それと同時に彼が告げた“好き”という二文字に胸がドキンと大きく脈打ち、一気に頭がのぼせ上がる。
そんなホカホカと温かみを帯びている感情の波に流されるまま、黙って身を預けていると、いつの間にか圧迫感も痛みもすぅーと吐息のように身体から抜け落ちていく。
ただ1つ残ったのは“好き”という燃え上がるように激しく高ぶっている熱い感情だけ。
『うん、ぜったいはなれない!』
純粋に澄んだ色が喉を通り、活気の含まれたあたしの声が黒く淀んだ空気を震わせる。
喜びを表情に浮かべ、裏の無いまっすぐな笑みを作ったその瞬間、不安で揺れていたいざなの瞳に失われていた光が戻っていく。
「ほんと?」
『ほんとだよ、ずっといっしょ』
まだ幼いせいで語呂が上手く回らなく、かろうじて意志が伝えられる程度の曖昧な音声で言葉を紡ぐ。
「…○○、大好き。」
『あたしも!』
“好き”、“大好き”“愛してる”。
1日に何中回も交わすその会話に体中の細胞、一つ一つが幸せそうにドクドクと動き始める。妙に弾んだ気持ちを覚える体に、顔にぺたりと張り付くにやけがなかなか取れない。
『えへへ、いざなだーいすき!』
抑えきれない喜びを頬全体に浮かべ、あたしは大好きな人の腕の中に体を埋める。
あたしはいざなが大すき
右も左もわからないあたしになんでもおしえてくれるし、やさしくてかっこいいから。
テレビは“ゆうかい”だとか“はんざい”だとか、むずかしいことばばかりいうけど、いざなはかんたんなことばでいろいろなことをおしえてくれる。
ママみたいにあたしのことを「ゴミ」ってよばずちゃんと「○○」って名まえでよんでくれるし、パパみたいにあついたばこをあたしの体におしつけたり、足や手でなぐったりしない。
まい日、ぎゅってやさしい力でだきしめてくれるし、いっぱい「すき」っていってくれる。
つめたいベランダじゃなくてあったかいおうちにいれてくれる。
そんないざなが大すき
でも、「絶対にここから出るな」ってすこしおこったかおでいうときのいざなは、いつもよりずっとまっくろな目をしていてちょっとだけこわい。
あたしはこのへやからでちゃいけない。
そとは“あぶない”ものがいっぱいあるからっていざながゆるしてくれない
それに、あたしはいざないがいの人とあっちゃいけない。
そとにいるわるい人があたしをつれていっちゃうからだめっていざながいってた。
だけど、べつにいざながいればそれいがいいらないし、どうでもいい。
「もう寝ような。」
『うん!』
夜、同じ布団に包まって眠るこの時間が、1日で1番好きだ。
どきんどきんとすぐ傍で聞こえるいざなの脈を刻む音が、体が溶けそうなほど心地いい。
誰にも譲れない、あたしだけの世界で1番大切な居場所。
「…なににやけてんの。」
そんな体の底から湧きあがって来る幸せにどっぷりと浸かっていると、不意にぐいっと自身の頬をいざなの細い指で引っ張られ、形が歪む。それなのに、腫れものに触れるような優しい手つきのせいで痛みなんて一切感じず、寧ろそんな手つきに愛しさが浮かび上がる。
「幸せそうなやつ」
『いざなとずっといれるからしあわせだよ、あたし。』
夢としか思えないような、甘ったるい幸福な瞬間。お互いに体温を分け合った布団の中はホカホカと酷く暖かく、言葉に表せられない安心感と幸福感が詰まっている。
「…もう寝ろ」
『いざなてれた』
「うるせー」
そう言いグリグリと私の頭を撫でる彼の手は乱暴だけど隠し出せない優しさが滲んでいる。
──幸せで温かいこの日々がずぅっと続きますように。
心の中でそう、神様にまっすぐ言葉が届くよう祈りながらあたしは、大好きな人の腕の中で薄雲の様にゆっくりとやってくる淡い眠気に体を預けた。
更新遅くてごめんなさい🙇♂💦
インフルエンザで死んでます。
年明けまでには治すので待ってて下さい😿❕
新作、相思相愛のヤンデレです🙌
イザナ→→(→→→→)♡←←←←夢主
待って流石に6歳はだめかな。え、何歳ならいいだろ。10歳❔❔❔((((
何歳までならセーフですか😿((