「……またか?」
うんと少女が頷く。
ぎゅっと少年の背中にしがみついて、少年のシャツを掴む。
「歩きにくいんだけど」
ランドセルを前にもって少女が抱きつきながら押してくるものだから、落ち着いて座ることすらできない。
ふーっとため息をつく。
「はいはい。よく頑張りました」
ぐしゃぐしゃと少女の頭を撫でて歩き出す少年は、腰に回された手をぎゅっと握りしめた。
「……あったかい」
少女の言葉に少年は片眉を上げる。
「お前が手袋をつけてきていないからだろ」
俺まで手袋を外すハメになったじゃねぇかとブツブツ少年は文句を言う。
少女は温かそうに手袋をつけてグッパグッパを繰り返した。
「ありがとう」
私の泣き声に聞こえないフリをしてくれて。
言葉には出さないけれど。
あなたがこっそりカイロをポケットに入れてくれているのは知っているから。
あと少しだけ。
人形になる前の時間をください。
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