テラーノベル
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🐱side
朝から身体がうるさい。
首元に残る熱とか、 声を出さないように気を張った名残とか、 全部が「何もなかった顔」をする邪魔をしてくる。
ym(……最悪)
楽屋に入っていつも通りに振る舞おうとしたけど どうしても言葉が少なくなる。
隣に座ったふみやは何も言わない。
それが一番怖い。
知ってる。
この人は気づいてないふりがいちばん得意だ。
fmy「おはよ」
普通の声。
なのに耳の奥がじんとする。
ym「……おはよ」
視線は合わせない。
だって合わせたら思い出すから。
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fmy「声、出してないよね?」
小声で言われた瞬間心臓が跳ねた。
ym(なんでここで言うの)
何も答えられなくてただ睨む。
ふみやは余裕そうに笑った。
fmy「大丈夫だよ」
ym「……なにが」
fmy「ちゃんと守ってたの知ってる」
——その言い方。
褒めてるみたいで、 全部把握してるって宣言みたいで。
fmy(ほんと性格悪い)
でも否定できないのが一番悔しい。
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メンバーが集まってきて空気が賑やかになる。
hrk「今日のゆうまくん静かじゃないですか?」
hd「昨日の話まだ引きずってる?」
笑い声。
冗談。
わかってる。
誰も本当の理由なんて想像してない。
……はずなのに。
ふみやがあえて普通に聞く。
fmy「昨日ちゃんと寝れた?」
その瞬間喉がきゅっと詰まった。
ym「……まあ」
嘘じゃない。
ちゃんと休んだ。
“休ませてもらった”だけ。
足が無意識にふみやの方へ寄る。
気づいて慌てて戻す。
ym(……ばれてる)
横目で見たらふみやは何も言わずにコーヒーを飲んでた。
余裕。
ほんとむかつく。
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リハの合間、廊下で呼び止められる。
fmy「ゆうまくん」
それだけで身体が反応するのが嫌だ。
ym「……なに」
fmy「昨日のこと」
距離が近い。
逃げようとしたら自然と壁が背中に当たる。
fmy「覚えてる?」
ym「……覚えてる」
fmy「どこまで?」
意地悪。
ym(全部だよ)
でも言えない。
ym「……途中まで」
fmy「へえ」
耳元が近い。
低い声。
fmy「俺がどうやって名前呼んだかも?」
ym「……ふみや」
思わず出た声が 自分でも驚くくらい小さくて、素直で。
ふみやは満足そうに息を吐いた。
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fmy「安心して」
ym「……」
fmy「ここじゃ何もしない」
わかってる。
だからこそ怖い。
fmy「でもさ」
ym「……」
fmy「みんなまだ勘違いしてるよね」
——受けはふみや、って。
その事実が頭をよぎる。
ym「……楽しいの?」
fmy「うん」
即答。
fmy「だって」
「本当のこと知ってるの俺だけだから」
その言葉が胸に落ちる。
支配とか、
独占とか、
そういう言葉で片付けられない感じ。
ただ、逃げ場がない。
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その日の終わり。
帰り支度をしながらどうしても我慢できなくなった。
ふみやの袖を軽く引く。
ym「……今日」
fmy「ん?」
ym「早く帰ろ」
自分で言っておいて顔が熱い。
ふみやは一瞬だけ目を細めて すぐにいつもの余裕に戻る。
fmy「了解」
その一言で全部終わった気がした。
——予想大会の答えは 誰にも教えない。
教えられない。
だって、
ふみやの前でだけ こんなふうになる自分を 他の誰にも見せたくないから。
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