数ヶ月後
その日は丁度2歳になったシャオロンの誕生日だった。
シ「むーしゃん!ケーキ!」
キラキラとした瞳を輝かせそう言うので2人で買い物に出かけた。
その途中、人気のない道を歩いていた。
そうとは言っても数分歩けば大通りに出るし何も心配するようなことでは無かった。
はずだった。
それはものの数秒間の事だった。
突如手を繋いでいた感覚が失われたかと思うと、魔法の煙が視覚を遮った。
それが息をする度肺に染み込み、焼けるような痛みの中、必死に追いかけた。だが、足音はだんだんと小さくなるばかりでやがて元の人気のない道に戻った。
目から零れる涙はもはや悲しみか悔しさか恥かもしくは単に痛みなのか分からなかった。
気がつくと私はベッドの上にいた。
シンプルな天井を眺めながら突然の事に状況を把握しようとした脳が思いをめぐらしていた。
すると視界の端から1人の男が現れた。
「あ、起きたんだね。大丈夫?」
その声でやっと正気に戻る。
この人はまだら牛だ。
ま「もしかして…目開けたまま寝てる…?」
む「いや…、起きてるよ…。」
そう言うともう1人の男が今度は反対側の視界から顔を出す。
「、!起きた…?良かった…。」
少し長い金髪の男。
間違いない。
これは夢咲刻夜、ときやんだ。
と「偶然通った大通りの曲がり角の方で壁際にぶっ倒れてんだよ、死んでんのかと思ったわ」
と「ほんとに大丈夫なんか?」
そんなことになってたのか。
む「大丈夫、…だけど…」
そうだ。シャオロンは…。
そう思いながら体を起こすと、まだら牛が1台のパソコンを持って画面をこちらに向けた。
ま「一応あそこの近くのカメラを解析してもらったんだけど…。」
そこには画面の端に小さく連れ去られていく彼の姿が映っていた。
その後事の経緯を話し、探し回ってみたものの、彼が見つかることは無かった。
20年後
何百年、何千年と生きてきている中で20年というのは息をするように過ぎ去った。
これからも永遠と生きていく中で余計な記憶と感情は脳が忘れ去ろうとするし、自分自身も忘れようとしていた。
でも、その度にあの透き通る橙の色が脳裏に浮かび何度も笑いかける。
これが本当の呪いなのか。
ある日、一通の手紙が届いた。
どうやらwrwr国という国からの手紙らしい。
世界の中でも1.2位を争うぐらいの大変豊かな国だ。
少し戸惑いつつも行くという趣旨の手紙を返し、向かうことにした。
wrwr国に着くと人々が楽しそうに街中を歩いているのが見える。
すると1人の人物がこちらへ寄ってくる。
?「遠くまで御足労ありがとうございます。」
ト「私はwrwr国幹部のトントンと申します。」
む「ああ…、こちらこそありがとうございます。」
少々言葉が詰まる。
ト「では、ご案内しますので。 」
言われるがまま着いていく。
彼が通ると人々はにこやかに挨拶をして頭を下げる。
ただ、その後ろの私を見ると驚いたような顔で辺りはざわついた。
そのまま城の入り口に着き、歩きながら要件の詳細を聞く。
ト「…幹部の1人が原因不明の病になっていまして…。」
原因不明?病を治療して欲しいというのは聞いていたけれども、そんなに深刻なら医者を呼んで診てもらった方が良いのではと思ったが
ト「どうやら、臓器の不調では無いようで…。」
ト「この部屋になります。」
少々頭を悩ませていたがどうやら彼の部屋に着いたらしい。
ノックをしてから部屋に入る。
む「…失礼します」
そこは薄暗く外の光がステンドグラス越しに入る程度の明るさだった。
ステンドグラスの反対側には本棚がありその殆どは魔導書や、魔術書、邪神に関する書物、そして、随分とホコリが被ったwrwr国の歴史書なんかがあった。
部屋の中央にはベッドがあり1人の人物が薄い光に照らされ横になっているのが分かる。
近づくと茶色の髪の若い男がいた。
悪夢にうなされているのか苦しそうな表情をしている。
無意識にそっと頭に手を触れる。
それはまるで赤子を撫でるように。
すると微かに魔力を感じた。
何かおかしい。
人間社会で産まれ、育つのだから魔力を持つことなど有り得ないのだ。
あの本の呪文…?
いや、それは魔力を貯めるものでは無い。
そもそもの話、魔力を保持しているものの近くに数年は居ないと移らない。
そのように思考を巡らしていると、その男は目を覚ました。
目が合う。
その目は透き通った橙色だった。
コメント
1件
もしかしてシャオさんですか‼︎✨ 続き待ってます‼︎