「待って、待って待って…ちょ、っ」
扉が閉まり切るのも待てないで、阿部の身体を抱き締めその唇に思う存分噛みついた。阿部が焦ったように身を捩ったが、お構いなしでキスを続けながら、ぐいぐいと身体を押しやってベッドに倒れこむ。
「ん、あ…ちょっ、もー」
阿部の衣服を剥ぎ取り、忙しなくその肌へと手のひらを滑らせると、とうとう阿部が困ったように笑い声をあげた。そんな様子には余裕を感じてむっとしたが、今の俺は唇や手のひらで阿部に触れることしか考えられなかった。
「阿部…っ」
「は、あ、んん」
欲望の中心を握りこみゆるゆると扱きながら、首筋や鎖骨、胸を舌で辿る。悦を与えるたびに、びくびく震える身体が可愛くて何度も何度も愛撫を繰り返す。
「ふ、あ、だめ…ひかる…」
阿部の息が上がり、段々と先程の余裕がなくなっていることがわかる。だめ、いい、と、全くちぐはぐな言葉を発していることにもきっと阿部は気がついていないのだろう。だけど、余裕がないのは俺も同じだった。気持ちが逸って、自分でも自分の行動がコントロールできていないような気がする。
「阿部、もう…」
「あ、あ…っ」
一度繋がり合ってしまった後のことは、もう全く覚えていないと言っても良かった。ただ、思いのままに阿部の身体を蹂躙し、2人でひたすらに高みを目指したのだった。
ていうか、俺がめめを好きだなんて誰が言ったの? 見てたらわかるだろ、そんなの。実際わかってなかったじゃん。だったら、もう二度とあんな目で目黒のこと見るなよ。どんな? まるで告白でもしかねないような目。だから、それがどんな目なのかわかんないんだけど。………。もうやめようよ、この状況でめめの話するの。お前が言い出したんだろ。あれ、そうだっけ…でも、めめも別に俺に対して恋愛感情なんてないからね。どうだか。いや、そんな物好き照だけだって。あのな…。
指先を絡め合いながら、他愛もない会話を交わす。既に何度も熱を放った後だというのに、まだ身体の奥が熱くてたまらなかった。キスだって、先ほど飽きるほどしたっていうのに、それでもまだ足りなくて唇を求めてしまう。俺がしつこくキスを繰り返しても、阿部は何も言わないでひとつひとつに答えてくれた。茶化したり笑ったりすることもなく、ただ唇を重ねながらうっとりと瞳を細めている。
「照、今日は吸わないんだね、タバコ」
キスの合間、心なしか嬉しそうにそう言う阿部の唇を塞ぎながら、胸を押し上げてくる幸福感に俺も目尻を下げた。背中を撫でてくる阿部の手のひらの感触が心地よくて、目を閉じる。阿部の身体をぎゅっと腕の中に抱き込むと、また体温が上がった気がした。
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