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FORSAKENの夜が明ける直前、薄明の光がスペクターの寝室にそっと差し込んでいた。
天蓋付きの巨大なベッドのなか、古代吸血鬼ノスフェラトゥは、至高の多幸感に包まれながら微睡(まどろ)みの淵にいた。
(ああ……素晴らしい。夢のなかで、私は主様の足元に跪き、あの気高い血を注がれている……。喉の渇きが、甘美な薔薇の香りで満たされていく……)
夢のなかのスペクターは、いつになく優しくノスフェラトゥの髪を撫で、望むままにその至高の報酬を与えてくれていた。
ノスフェラトゥは夢のなかで、溢れる至福の快感に身を震わせ、その甘美な源泉に夢中で吸い付いていた。
「んむ……、ちゅ、る……っ、は、あぁ……」
自身の口元から、淫らな水音が響いているのを、微睡みの脳で心地よく聞いていた。
だが、意識が覚醒に向かうにつれ、五感が奇妙な「現実の違和感」を捉え始める。
(……待て。夢にしては、妙に口内(こうない)の感触が生々しいな?)
冷たくてしなやかな、手袋を外された人間の皮膚の質感。
そして、鼻腔を突くのは、紛れもないスペクター本人の濃厚な体温の残り香。
さらに、自分の身体は今、冷たい床の上ではなく、最高級のふかふかな羽毛布団に包まれている。
(……え?)
パチリ、と赤い瞳が開いた。
視界に飛び込んできたのは、見慣れた自室の天井ではなく、スペクターの寝室の豪奢な天蓋。
そしてノスフェラトゥ自身は、スペクターのベッドのなかに完全に潜り込み、あろうことか主のすぐ横で、彼の手袋を外した右手の「人差し指」を、根元まで深く口に含んでいた。
「――っ!?」
音速で脳髄が沸騰した。
夢遊病。
極限までお預けを食らっていたノスフェラトゥの身体は、本能の飢えと「おねだり」の欲求のあまり、夜中に無意識のまま夢遊病状態でスペクターの寝室へ夜這いをかけ、寝ている主の指を大人のオモチャ代わりにちゅーちゅーと激しく吸い続けていたのだ。
現在の状況:主様の指が、自分の口内にダイレクトに挿入され、ヨダレで濡れそぼっている。
「う、あ……、あふ、ぅ……っ」
あまりの恥ずかしさと絶望に、ノスフェラトゥの顔面は耳の裏、ひいては全身の皮膚まで真っ赤に爆発した。音速で指を吐き出そうとした、その瞬間。
「おや。ようやく目が覚めたのかい? 私の可愛い吸血鬼」
頭上から降ってきたのは、完全に覚醒している、地を這うような極上の低音。
赤いシルクハットを外した、乱れ髪のスペクターが、底の知れない、心底愉しそうな笑みを浮かべてノスフェラトゥを見下ろしていた。
彼は夜中にノスフェラトゥが侵入してきた瞬間から、すべてを分かっていて大人しく吸わせ続けていたのだ。
「ひ、ひゃう……っ!?」
ノスフェラトゥがパニックで声を漏らした瞬間、口に含まれていたスペクターの指が、わざとらしく彼の熱い舌の力をグッと押し込み、口内の粘膜を深く愛撫するように、ゆっくりと引き抜かれた。
トロン、と銀の糸を引く主の指先。
「ち、違う……っ! これは、お前の指に不審な寄生虫が、その、付着しているのを私が見つけ、古代の吸血鬼に伝わる無菌化の秘術をもってして、口腔内で優しく保護していただけであって……っ! 決して、お前のおねだり欲しさに夜中に夢遊病で這い出し、指を吸って発情していたわけでは断じてないわァッ!!」
心臓が太鼓のように激しく脈打つなか、涙目で音速の言い訳(すべてを白状している内容)をまくし立てるノスフェラトゥ。
スペクターはくすくすと低く笑いながら、濡れた指先で、ノスフェラトゥの真っ赤になった顎をくいと持ち上げた。
「夜中に私のベッドに忍び込んできて、私の指を熱い吐息でめちゃくちゃに濡らしながら、あんなに淫らな声で鳴いておねだりしていたのは誰かな? 君の無意識の欲求は、本当に言葉よりもお盛んで、誠実だね」
「あ、う……ぅ……っ!」
「いいよ。そこまでして私の指が恋しいなら、今度は私が、君のそのふしだらな口内を、朝までたっぷり『お掃除』してあげよう」
主の、最上級にドSなお仕置きの宣告。
ノスフェラトゥが羞恥のあまり意識が飛びかけた、その時。
バサァッ!! と、寝室の扉がこれ以上ない勢いで開け放たれた。
「主様ー! 朝一番の報告が――って、うわぁぁぁ!!! 朝チュパ!!!」
書類を持ったホスフォラスが、入り口でトレイを落として絶叫した。
ベッドのなかで、スペクターの指をヨダレでテカテカにしたまま、顔を真っ赤にして涙目で縋り付いているノスフェラトゥ。
「あ」
「アズールーーーッ!! 超高画質のカメラ持ってきて!! ノスフェラトゥさんが朝から主様の指を大人のオモチャにして完全におかしくなってる!! 早く!!」
「やめろォォォーーーッ!! 録画するな! 私はおかしくなってなどいない! 誇り高き古代の王だァァァーーーッ!!」
ノスフェラトゥの魂の絶叫が朝のFORSAKENに虚しく響くなか、スペクターは彼を絶対に逃がさない力で抱き寄せ、心底愉しそうにクスクスと笑い続けるのだった。
#1x1x1x1
ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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ゆ(旧「ゆゆゆゆ」)
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