ほどける音
(星導視点)
マナの声はいつも、真っ直ぐすぎて、まぶしい。
(マナ)「なぁ、るべ。今日放課後、どっか行かへん?」
顔を向けられた瞬間、心がざわつく。
だけど、俺はそれを、平然を装って押し殺した。
(星導)「……俺、ちょっと予定あるから」
(マナ)「あ、そっか……。ほな、また誘うわ」
(星導)「……うん」
笑うマナの声が、妙に遠かった。
本当は、行きたかった。隣にいたかった。
でも――この気持ちが怖かった。
“好き”って気づいた時にはもう、手遅れだった。
こんなに好きになるなんて、思ってなかった。
だから――壊れるのが、怖かった。
(星導)「……」
マナが他の誰かと楽しそうに笑ってるのを見るたび、胸がきしんだ。
その誰かが、小柳くんだった日もあった。
不思議だった。なんで、あんなに安心する顔を見せるんだろう。
俺の前では、最近そんな顔、見せてくれないのに。
(休み時間/廊下)
(星導)「……」
遠くから、マナと小柳くんが話してるのが見えた。
笑ってないマナ。けど、どこか甘えるような、声。
その横顔に、俺は見覚えがあった。
“俺だけに見せてくれてた”はずの顔。
(星導)「……マナ……」
声に出せなかった。
近づく勇気もなかった。
そっと目を逸らす。
そして、ほんの少し、涙がにじんだ。
“俺のせいや”
わかってた。でも、マナの手を取るには、俺は臆病すぎた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!