コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
奪い返す
(星導視点)
マナの「何してもええから、俺の心、埋めて」って言葉が頭から離れなかった。
それを言わせたのが、小柳くんだった。
そして、それを言わせた本当の原因は……俺だった。
(星導)「……マナを、渡したくない」
走る。足が重くても関係ない。
マナの姿が、もう他の誰かの隣にあるって思っただけで、心が千切れそうだった。
やっと見つけた。廊下の端で、マナが小柳くんと並んでる。
ちょっと肩が寄ってて、笑ってて、でも――どこか張りつめた空気があった。
その瞬間、小柳くんがそっと手を添えて、マナの頬に口づけた。
静かで、でも強い、そんなキスだった。
目の前で起こったことに、体が止まった。
でも、逃げるわけにはいかなくて、声が勝手に飛び出た。
(星導)「……マナ!!」
二人ともこちらを振り返る。
マナの目が少し見開かれて、小柳くんの瞳は、冷静にこちらを見返していた。
(星導)「……ごめん。俺、ずっと逃げてた。
でも、気づいたんだ。俺はマナが好きや。……誰にも渡したくない」
(マナ)「……るべ……」
(小柳)「……遅かったな、星導」
小柳くんの声は穏やかで、それでいて強かった。
(小柳)「マナはもう、俺の隣にいる。……そうだろ?」
マナが返事をしないで、少しだけ俯く。
でも、その沈黙が余計に胸に突き刺さる。
(星導)「……それでも、俺は取り返したい」
(マナ)「……」
しばらく沈黙が続いて、マナが小さく笑った。
(マナ)「ほんま、アホやな、るべ。もっと早よ言えよ……」
小柳くんが動かず、その場に立ったまま、ただ静かにマナを見つめている。
その姿が、どこか苦しげで、優しくて。
(マナ)「ロウ……ごめんな。俺、まだるべの顔、忘れられへんみたいや」
(小柳)「……そっか」
声が、少しだけ揺れた。
(マナ)「るべ、もう逃げんなよ」
そう言って、マナが俺の服を軽く引いた。
(星導)「……もう絶対、離さへん」
(小柳)「……なら、ちゃんと守れよ。マナの全部」
小柳くんのその言葉が、重くて、あたたかくて、痛かった。