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???「……ふふっ。喜んでくれるかな」???「どうしたの?海音ちゃん?誰かに渡すの?そのおにぎり」
ここは、橙の家。今日は「不山橙」がいるので、「海音」は雫の修行場の見学に行くことにした。────おにぎりを持って。
その姿を「紫雲雨花」はみつめている。
海音「ちょっと……渡したい人がいて……」
雨花「ホホウ……?」
橙「あぁ……なるほど」
海音「二人とも……?やめてよ!特に雨花!付いてこないでよ!分かった?」
雨花「はいはい!みたいものはみせて貰ったし!大丈V!」
橙「ふふっ、行ってらっしゃい!」
海音「うん!行ってきます!」
二人に見送られながら、海音は修行場に向かった。
「あの子。笑顔のままマンション降りてきたわ。よっぽど、生ぬるい環境で過ごしてるのね。恥ずかしい。」
「でも……」
「それも今日で終わり」
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橙「……うーん帰り遅くないですか?」
雨花「……そうだね。」
橙は外をみる。外には各々自分の家に帰っていく者たちが沢山いて、段々と少なくなっていくほど時間が経っていた。
橙「遅くなるなら雫さんが連絡するはずですし……小春さんと長話でもしてるんでしょうか?」
雨花「…………」
橙「雨花さん?」
ピンポーン
橙「あっ!帰ってきましたかね?」
雨花「いや、違う。」
雨花は、橙より早く部屋を出て、既に玄関先に向かっていた。
橙「ちょっと!雨花さん!」
玄関で立っているのは……
???「こんばんは。雨花さん。橙さんも。」
立っていのは、小春だった。
あぁまたここか
しばらく来てなかったから
久しいな
私はやっぱり行き着く所はここなんだ
この感覚
心臓に氷柱が突き刺さってそこから凍っていく
そんな感覚
雨花たちは今何してるかな
橙に教えて貰ったあのおにぎり
渡したかったな
小春に。
「何寝ぼけてるの。さぁ、早くこの問題を解きなさい。休憩は私がして良いと言うまで絶対しないこと。もししたら、あなたの大切な人……そうね……例えば小春?だったかしら。この子の目を抉るわ。あなたの目の前で。」
いやそんな事しないで
私が悪かったんだよね
ママの言う通りにしなかった
私が悪いんだよね
ごめんなさい ごめんなさい
謝るから
分かった
私ずっとここにいる
永遠にここでこうしてる
約束する
もうママの意志に背く事しない
もう何も望まない
何も好きにならない
嫌いにならない
エゴも欲も全部殺す
だから
お願いだから
そんな事しないで
私の中には何も残らなくて良いから
だから────
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小春「それで海音ちゃんの事なんですけど……」
雨花「海音ちゃん来てないんだね。修行場に。」
橙「え」
小春「そうなんです。来てなくて。先週来た時に渡したい物があるって言われて、なんだかすごく楽しそうにしてたから、よっぽど渡したいんだろうなって想って、だから来てなくて何かあったのかなって想って……でもこの感じだと海音ちゃん……ここにもいないんですね……」
橙「雨花さん!」
雨花「もう今海音ちゃんを千里眼で探してるけど……多分、特殊な神通力がかけられた部屋に閉じ込めてられてて今のわたしの神通力だと探すのに時間がかかる。海音ちゃんにもっと近づければ分かるけど。でも……」
橙「でも?」
雨花「大体予想はつく。……海音ちゃんの母親だ。」
橙・小春「!」
海音の母親は、海音を自分の操り人形のようにして、海音を支配していた。
橙は、海音と似た境遇の持ち主。
橙だって母親の願望のために大切な人を失った。他にも犠牲されたものは沢山ある。
小春は、詳しいことは分からないが、前に海音がキャンプファイヤーで言った言葉。寝言の言葉。これらから、海音の母親は海音が苦しむようなことをしていたのではないかと心の裏で想っていた。
雨花「海音ちゃんの母親は、海音ちゃんを当主にしようと徹底的にとても苦しい教育を海音ちゃんにしてた。海音ちゃんを突き放す言い方をして見捨てたけど、あそこまで苦しい教育を強要する人が簡単に海音ちゃんを手放すとは想えない。絶対海音ちゃんはあの人に誘拐されたんだと想う。……自分の母親に。」
小春「おれ行きたい。」
橙「小春さん?」
小春「詳しいことはよく分からないけど、海音ちゃんが今ピンチってことでしょ?なら行くしかない。」
雨花「……どうしてそこまで海音ちゃんのこと考えるの?……もしかして……」
この時、橙は「好きなの?」と雨花が小春に聴くのかと想い、ふざけてる場合じゃないと喝を入れようとしたが……
雨花「同情してるの?」
橙「……え?」
小春「…………それは……その……」
小春は開いていた拳を固く結ぶと、
小春「おれは海音ちゃんをみると、穏やかな気持ちになれる。海の優しくて暖かい水みたいに心地よい気持ちにさせてくれる。おれをおれらしくさせてくれる。おれでいて良いんだって想わせてくれる。この感情はきっと……!」
雨花「はいストップ!そこまで聴ければ充分!その先は本人に言いな?一番初めに聴かせてあげるべき人は海音ちゃんだよ。」
橙「…………」
雨花「橙ちゃん?今はぼおーっとしてる場合じゃないよ!」
橙「す、すみません。ちょっと考え事してまして……」
小春「分かります!今は考えるべき時ですよね!」
橙「(その事じゃないんですけどね……)」
雨花「それで……海音ちゃん家にはわたしの神通力で行ける。でも、突破するにはわたしの神通力と小春くんの神通力が必要不可欠」
小春「で、でも、おれまだまだ見習いの身なんですけど?大丈夫ですかね……」
雨花「大丈夫だよ。わたしが援助するから」
橙「では、私は妖術で敵陣を倒します。きっとボディーガードの方々もいるでしょうし。……まぁ全くもって「ガード」の役は果たしてないですが……」
雨花「さぁ行こう!」
「「海音ちゃんを救出しに!!」」
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「ほら、さっさっとしなさい!!!!」
パチン!!!!パチン!!!!
真っ暗な部屋に平手打ちの音が響く。
やらなきゃ……やらなきゃ……
それだけに集中するんだ
絶対泣いちゃいけない
泣いたらもっと痛いことされて
小春にいつ刃が向くか分からない
絶対にやり続けなくちゃ
やり……つづ……け……て
「早くしなさいと……!」
???「やめろ!!!!」
海音「…………え?」
海音をぶつはずの海音の母親の手が何者かに弾かれた。
???「海音ちゃん……こんな真っ暗な部屋で、こんなになるまで独りで頑張ったんだね。偉いよ。そして、もう充分だよ。」
海音「こ、」
「「小春!」」
雨花「よし、着いたね」
橙「本当に神通力使って大丈夫なんですか?」
雨花「大丈夫だって!それよりも異常事態発生だよ〜」
橙「な、何ですか?」
雨花「小春くんもう行っちゃった」
橙「え?」
小春は自身の傘で片っ端から海音の母親の部下を張り飛ばしている。しかし……
橙「早速追い詰められてますよ!あめ、」
次の瞬間、小春を壁際に追い詰められた部下たちが一斉に殴り飛ばされた。
────雨花の傘によって。
小春「は、早く行かな……」
雨花「小春くんこっち向いて」
小春「え?」
向くと、雨花が人差し指の先を小春のおでこの真ん中にとんと当てる。すると、小春の緊張感が薄れて、冷静になれた。
小春「す、すみません」
雨花「大丈夫だよん!気楽に行こう!そうじゃないと海音ちゃんのとこに行くまでにバテちゃうよ?」
小春「はい!」
雨花「ここ、任せて良い?橙ちゃん」
橙「分かりました。建物の中には誰も入れません。約束します。」
雨花「OK!じゃあ行くよ!小春くん!」
こうして、雨花と小春は海音の母親の家に侵入できた。
雨花「気楽にと言ったのはわたしだけど……」
「「こんなにボディーガード連れてく必要あるの〜〜〜〜!!!!」」
小春「次どっちに向かって行けば良いですか?」
雨花「そこの角を左に曲がって。その下にボディーガードが待ち構えてるからそれをぶん殴って先に進んで。それが一番の最短ルートだから。そしたら地下に通じるめちゃデカの金庫の扉みたいなドアがある。それをわたしの神通力で開ける。そしたら……」
雨花は、敵を殴り飛ばしながら流暢に会話している。その姿に密かに憧れを抱く小春。
雨花「そしたら、小春くんが一気にドアの中に入って。外はわたしが倒すから。」
小春「え!?雨花さんは付いて行かないんですか?!」
雨花「わたしが周りを足止めしてた方が効率良いし、それに……」
小春「!」
海音「なん……で……小春が……ここにいるの?」
「ちっ……邪魔しないでくれる?……あの役たたず共め。」
小春「海音ちゃんは返して貰います。」
「何であなたそんなに海音に執着するの?」
小春「それはあなたには言えません。まだ海音ちゃんにも言えてないので。」
海音「え?」
小春「こんな寂しい場所に閉じ込めて、強制的に嫌がることをするなんて……親だからって何でもして良いと思ってるんですか?」
「この子の意思なんて関係ないわ。この子は当主になるべくして生まれてきたの。そう決まっているのよ。あなたにそれを止める権利なんてないわ。部外者なんだから。」
小春「その部外者に正論を言われている心地はどうですか?意思なんて関係ない?馬鹿じゃねぇの。」
「……は?」
小春「海音は……生き物だ!!!!」
海音「!」
小春「意志だってある!!!!好きなことや嫌いなことしたいことしたくないこと、他にも沢山感情を持ってる!!!!何者もそれを奪ったり、破壊することも許されない……!例えあなたが何者であっても海音の親であっても。あなたがしていることは恐喝と一緒だ!!!!」
「な、何なの……どいつもこいつも……!!!!私の邪魔っばっかりして!!!!海音を当主にすれば、莫大な権利と金が得られる!もう誰にも馬鹿にされずに済む!!それを、私の海音を、誰にも奪わせないわよ!!!!」
《その子供に説教されるようなことをしているのはあなたですよね?海音さんは一人の生き物なんです。心を持った生き物です。海音さんはあなたの所要物じゃないんです。感情を持った一人の生き物です。意志だってあるし、やりたいことだってある。今は見失っていてもそういう意思表示だってする立派な生き物です。そんな海音さんが自分の気持ちを必死で抑え殺そうとして、「ママの言う通りする」とまで言うほどあなたというものを愛しているのに、あなたに離れていって欲しくないのに……!その気持ちすらも蔑ろにするですか?そんなことしちゃいけないんです……!!!!》
「あの女と似たようなことを言って……ふざけるなぁ!!!!」
小春「海音!!」
海音「!」
小春は海音を抱きしめて庇う。
ドゴォーーーン!!!!
「…………くっ……ふぁぁ……」
???「一度で良いからぶん殴ってやりたかったんだよね。あんたみたいな親を」
海音の母親を殴り飛ばしたのは、雨花だった。────自身の拳で。
「いや……」と、雨花は続ける。
雨花「あんたは親ですらないか。自分の劣等感を打ち消す道具に自分の子供を利用するなんて……やっぱり子供を産んだだけじゃ親にもなれなければ大人にすらもなれないんだね。」
雨花はそう空中に零すと、振り返った。その先には……
海音「あ、あのう……小春?」
小春「あっ!ご、ごめん!急に抱きついたりして……気持ち悪いよね!」
海音「そ、そんなことないよ。だって……」
「「一番会いたかったの。小春だもん。」」
小春「!」
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
雨花「わたしが周りを足止めしてた方が効率良いし、それに……」
「「今海音ちゃんが一番会いたがってるのは、小春くんだと想うよ?」」
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
小春「…………ねぇ。海音ちゃん。」
海音「ん?」
小春「海音って呼んでも良い?」
海音「……ふふっ。」
小春「な、何だ?」
海音「さっき呼んでたよ?」
小春「……え?えぇぇぇ!!!!ほ、本当に?ごめん……」
海音「大丈夫。それよりも名前。海音で良いよ。」
小春「!、う、海音!」
海音「なぁに?」
二人は仲睦まじく話している。
雨花「……良かったね。海音ちゃん。」
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その後、どうなったかというと、海音に対して、虐待を犯した罪の罰として、冥府から雫が直接、海音に母親のみではなく、父親も接近禁止命令が出令した。もし、少しでも接近する意思をみせると、すぐに死神組が出動する神通力をかけられ、これで海音はもう親と関わることはなくなった。
雫「すまないね。海音。もっと早く出令すべきだったね。でも……」
海音「分かってます。私と親と完全に離れ離れにするべきか迷ってたんですよね。今はもう大丈夫です。それに……」
海音は、頬を染める。
???「雫さん!ここにいたんですね。海音と日向ぼっこですか?」
雫「おっ!小春。傷はもう良いのかい?」
近寄ってきたのは、小春だった。
小春「はい!大丈夫です!雨花さんが庇ってくれた部分が大きかったので!」
小春は海音の方に視線を向ける。目が合った瞬間、はにかんだ笑みになる二人。
雫「?」
前にも言ったが、雫はこういうことにはとことん鈍感なのだ!!
???「お師匠様〜!」
雫「ん?雨花」
遠くから手を振っているのは、雨花である。
雨花「久しぶりにわたしだけに修行!付けて下さいよ〜」
雫「別に構わないが……」
雨花「あっ!小春くんは怪我もあるから今日はここで休むんだよ?これ先輩命令だからね?」
小春「わ、分かった」
海音「…………」
海音「(雨花の奴〜〜〜〜!!!!)」
小春「じゃあここで二人で日向ぼっこの続きしよっか」
海音「う、うん!」
「そういえば、」と小春が話をし始める。
小春「海音が作ってくれたおにぎりちゃんと食べたよ。」
海音「えっ!確か攫われる時落としたはず……」
小春「雨花さんが海音が攫われた場所を特定してくれたんだ。そして落ちてたおにぎりを食べたんだよ。とっても美味しかった。」
海音「(あんな汚れたおにぎりを食べたんだ……)」
海音「……ありがとう。でも今度はちゃんと私の手で渡すから!」
小春「あぁ!楽しみにしてる!」
海音は、小春の肩に頭を乗せる。その頭を小春は撫でた。
橙「それで?雨花さん。もし小春さんがあの時、「同情だ」と言っていたらどうしてたんですか?」
雨花「ん?その時は小春くんには橙ちゃん家で待機させるつもりだったよ。海音ちゃんは違うのに同情っていう理由で助けられたら海音ちゃん可哀想だもん。でも……」
「「良かった二人とも……ね?」」
橙「……ふふっ、そうですね」
そして、ここにはほっとしたように笑っている二人がいたそうな。