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白昼夢

3 - クマノフィアと学校

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18

2025年05月03日

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キーンコーンカーンコーン

学校のチャイムが流れると、それまで騒がしかった教室は嘘みたいに静かになる。それは、仲良しな友達グループとの会話に花を咲かせていたひまりも例外ではない。チャイムが鳴ると、「またね〜!」と短い挨拶を済ませ、各々の席に向かう。ひまりが自席につくと、左隣から「おはよ〜。」と、おっとりとした声が聞こえた。そちらを向くと、青みがかった長い髪の女の子が机に伏せてこちらを見ていた。ひまりの幼なじみ、四補(しほ)である。

ひまり  「おはようしほちゃん!」

四補  「ひまちゃんは朝から元気だね〜。」

ひまり  「まぁね!」

そんな短い会話をしているとドアが空き、担任の奏叶が入ってきた。

奏叶  「おはよう。ホームルーム始めるぞ〜。」

そう言って前に立つ奏叶はいつもより眠たげで、それにつられて教室もゆったりとした雰囲気が流れている。その理由を知っているひまりは、そんな奏叶を微笑ましく見ていた。ウェイクの一件があった日の夜、ひまり達は奏叶から『上の方』について教えてもらっていた。話によると、奏叶はマフィアの界隈で1番上のような存在である『末井家』という組織の跡取りで、先代である父が死ぬまで、統括の練習で新しいグループを作って統べる決まりがあるらしい。奏叶が末井家のリーダーになってからは、自分達は末井家に就くか離れるかは自由だが、大体はそのまま末井家に居続けるそうだ。昨夜はそのお父さんとの話が長くなってしまい、寝るのが遅くなってしまったのだ。ホームルームが終わり、ひまりが授業の準備をしていると、四補がひまりを呼んだ。

四補  「今日の奏叶先生、眠そうだったね。なんかあったのかな?」

ひまり  「あ〜。まぁ、色々あってね〜。」

四補  「…うん?その言い方、なにか知ってるの?」

ひまり  「あ、いや!何も知らないよ!?色々あったんだよきっと!そうきっと!!」

勢いよく言葉を重ねるひまりに、四補は少し背を反らして「そ、そっか…。」と小さく言葉を返した。白昼夢はマフィアという犯罪組織の1つだ。全く関係ない人達が知ってしまっては、その人が感じる印象は犯罪者に固定されてしまう。それを防ぐため、メンバーは白昼夢の存在を他人に言ってはいけない、というルールを課しているのだ。しかし、先ほどの通り、ひまりは嘘をつくのがとても苦手。今まで何回四補にバレそうになったことか。と、教室のドアが開き、教科の先生が入ってきた。1時間目は生物のため、やってくるのは藍だ。しかし今日はその後ろにもう1人歩いてきていた。紺色の髪を1つにくくっており、姿勢はまっすぐで、立ち振舞いはまるで秘書のようである。知らない顔に、たちまち教室中は騒がしくなる。しかし藍がパンパン、と手を叩くと、すぐに静かになった。そんな生徒たちに向かって面白そうに口角を上げると、号令をかけて隣に立った女性の紹介を始めた。

藍  「みんなさっきから気になってると思うけど、教育実習生の三補先生です!んじゃ、俺は三補先生が用意した自己紹介プリント配ってるから、その間の場繋ぎよろしく!」

そういって藍は今日使うプリントを配り始めた。しかし、配られたプリントは三補の自己紹介が書かれていない。書かれている文を見たひまりは目を見開き、藍に合図を送るが、藍は全く気づかなかった。振られた三補は小さく頷いた後、生徒達の方をまっすぐ向いた。彼女には、そこにいる生徒たちを無意識に惹きつける独特の風格があり、全員が三補のいる1点に視線を動かした。三補は礼儀正しくお辞儀をしてから口を開いた。

三補  「今日から1ヶ月間教育実習に来ました。猿渡 三補(さるわたり みほ)です。担当教科は理科なので、皆さんとは生物と科学で一緒に授業を受ける予定です。よろしくお願いします。」

彼女の声は高くとも芯があり、彼女の真面目な雰囲気を醸し出していた。数秒の沈黙後、プリントを配り終わった藍が「ありがとうございました〜!」と拍手をして三補を横に移動させ、笑いながら話し始めた。

藍  「いや〜、やっぱり三補先生はすごいね〜!皆も感じたでしょ?あの先生のオーラ!皆がまっすぐそっちを見てさ〜、傍から見ててすごいおもしろかったよ〜!」

そう言っても笑うのが自分しかいないことを認知すると、「ごめんごめん。」と笑った後、咳払いをして教卓に手をついた。

藍  「さて、真面目に授業していきますよ〜。」


藍  「奏叶先生、今日ずっと眠そうだったね〜。俺見たよ?休み時間に机に突っ伏して寝てる先生。」

奏叶  「うるさい。昨日は父さんと電話してたんだ、しょうがないだろ。それに、さっき目を休めていたんだ。寝ていない。」

藍  「それを寝ていると言うんじゃないかな〜。」

放課後の職員室。外が暗くなり始めると、事務作業をしている藍と奏叶、それと三補しか残っていない。やがて、レポートを書き終わった三補がパタン、とパソコンを閉じると、「失礼します。」と礼儀正しくお辞儀をして職員室を出ていった。その時、三補のカバンから紙切れが1枚落ち、奏叶の足元に着地した。それを見つけた奏叶が紙を拾って見ると、途端に目を丸くした。

奏叶  「三補先生!」

奏叶の声が職員室内に響く。その声に驚いた藍は「急にどうした!?」と声を上げた。後ろを振り向く三補の目は、まっすぐ奏叶の顔を見ていた。奏叶は1呼吸置いて立ち上がると紙を差し出して言った。

奏叶  「…これ、落としましたよ。」

三補  「あら。ありがとうございます。…でも、それを届けなくていいことは分かっているのでは?」

奏叶  「…そうですね。これを見て、とても驚いていますよ。」

そう言って奏叶は紙切れに書かれた文を読み上げた。

奏叶  「【図に乗るな。お前らの間違った価値観がマフィアのトップに立つとはなんとも信じられないことである。だがもう遅い。お前らは犯罪者だ。 熊ノ実 三補】…これはどういうことだ?」

奏叶が読んだ内容に、藍は驚いて立ち上がる。奏叶が目を細めて睨むと、前の人間、熊ノ実 三補(くまのみ みほ)は笑って答えた。

三補  「そのまんまだよ!末井家の価値観は間違っている。それに伴って、お前ら白昼夢の価値観も間違っている!私はそのための制裁を下した。白昼夢の過ちを学校中に晒した!…お前らは『犯罪者』だ。」

奏叶  「過ちを晒した…?」

藍  「一体何を言って…」

ひまり  「藍先生!奏叶先生!」

と、職員室にひまりと龍、虎空が焦った様子で走ってきた。全員の手には授業中に三補が配ったプリントがある。藍がひまりからプリントを受け取って文面を見ると、「何だこりゃ…。」と独り言をこぼした。

龍  「先生、大変です!このプリント、僕達のことが書かれているんです!」

虎空  「ほら、この前のウェイクのこと!しかも少し大袈裟に書かれてるんだよ!ボスをヤッたとか、価値観を全否定したとか!」

ひまり  「ひまりがいっぱい人刺したって書いてるの!ひまはなにもしてないのに…!」

3人が一斉に話し始めた内容を奏叶が聞き取ると、「なんだと…!?」と目を丸くして呟き、反射的に三補を見た。三補は奏叶達を見てニヤリと笑っている。藍は眉間に皺を寄せると、皆を背に三補の前に立った。

藍  「さっき言ってたのはこういうことか。こうやって俺らのことを暴露して、一体何が目的なんだ…?」

三補  「目的か…。言うならば、お前たち末井家を消し、我ら、クマノフィアがトップに立つためだよ!!」

そう言ってケラケラと笑う彼女の目は、光が一切入っていなかった。

奏叶  「クマノフィア…。熊ノ実家がリーダーとなって動かしているところだ…。」

奏叶がそう呟くと、三補は息を1つ吐いて、奏叶の目をまっすぐ見据えた。奏叶はわずかに目を見開き、赤と青の瞳が蝋燭の光のように揺れた。

三補  「そしてその次期ボスを消すため。私だけが手に入れた情報、無駄にはしない!!」

気づくと三補は、どこかから取り出したナイフを片手に奏叶の方に向かってきていた。藍や虎空が守りに入ろうとするが、三補の速さについていけない。最終的に三補は、龍の前で足を止めた。奏叶から一番近い位置に立っていた龍が、2人の間に立ち、護身用に持っていた包丁を構えたのだ。

虎空  「おい龍!そこにいたら危ねぇぞ!?」

龍  「知ってる。…だからこそだよ。」

龍は一言そう言って、視線を三補に移した。龍の眉間には皺が寄っており、眼鏡のレンズの先には、琥珀色の目が髪の隙間から見えた。三補は鼻息を荒くしながら、ナイフを龍に向けて振り回す。龍はそれをすべて包丁で止めながら話し始めた。

龍  「…三補先生。僕は末井家やクマノフィアの全てを知っているわけではありませんが、これだけはわかります。…末井家は、貴方達みたいな小癪な手段でトップに立ったグループではない。善行を積み上げ、あそこまで登ってきたマフィアだ。…僕達は犯罪者じゃない。寧ろ、お前らのほうが犯罪者だ!」

その後、龍は三補の足を引っ掛けて転ばせ、みぞおちに蹴りをいれた。三補はフラフラと床に倒れ込み、「取られてしまう…。」とだけ呟いて気を失ってしまった。それを見届けた龍がふっ、と息を吐くと、虎空が強烈なタックルでやってきた。思わず「ぐふっ!」と声が漏れる。

虎空  「龍〜!!大丈夫だったか!?怪我してないか!?心配したんだぞ〜!!」

龍  「大丈夫、大丈夫だから。離れて…!」

虎空  「龍〜〜!!!」

虎空に悶絶する龍を見て、藍は声を上げて笑い、蓮は失笑していた。倒れた三補を廊下の端に置いた奏叶は、三補を目視で観察し、ため息をついた。

奏叶  「…コイツは基地送りか…。」

ひまり  「あ、ひまも手伝うよ!」

奏叶  「そうか、ありがとう。」

ひまり  「ううん全然!…それよりさ、ボス。」

ひまりが少し声のトーンを下げて奏叶に話すと、奏叶は察したように頷いた。

奏叶  「あぁ。コイツの名前は、熊ノ実 三補。」

ひまり  「…しほちゃんは、『熊ノ実 四補』…。しほちゃんも、クマノフィアってところの人なのかな…?」

奏叶  「その可能性は大いにある。クマノフィアがこうして敵意を向けている以上、こちらも手を打たねばならない。四補に注意を払っていこう。」

ひまり  「イエッサー、ボス…!白昼夢がバレないように、しほちゃんとクマノフィアについて…」

?  「呼んだ?」

その声はおっとりしており、聞き馴染みのある声だった。二人が一斉にそちらを向くと、遠くで四補が、口角を異常なほど上げてこちらに手を振っていた。

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