この作品はいかがでしたか?
112
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「もし僕が月人に腕と足だけ全部持ってかれたらどうする?」
見回りの帰り、エイティが急にそんなことを言ってきた。
「え?ルチルに直してもらう??」
「ううん、ダメ。僕に合う良い素材がない場合。」
「うーん、なら僕の腕と足を使ってエイティを元に戻すかなぁ」
「でも、そしたらサーティの腕と足が無くなっちゃうよ」エイティが心配そうな顔をする。
「大丈夫。全部使うわけじゃないよ、半分だけ使うの。」
「半分だけ?ってことは、例えば、僕には左腕と左足だけあって、サーティには右腕と右足だけしかないっていうことになるってこと?」「そういうこと。」
「でも不便じゃぁない?片手片足しかないのよ?」
エイティに聞かれると、僕はくすりと笑って彼に言った。
「でも、僕らは2人でも1人、『2人で1人』なんだから。僕が左腕と左足になって、サーティが右腕右足になれば、全く支障はないよ。」「確かに。僕らは2人で1人だもんね。僕もサーティと同じことするかも。」「そう。だからどっちかが傷ついても……—————————————————————————————————————————————……… どっちかで補えばいいんだよ。」
ある日、僕は腕を月人に持って行かれてしまった。
片腕ならまだ良かったものの、両腕を。
その場にいたみんなが集まる中、「僕と同じだ……」ってフォスが呟いた。
途中、急に「はっ!サーティも僕みたいに合金つけたら?」なんて思いついてたけど、
後ろにいたジェードに「お前みたいに合金が付く可能性は限りなく低いぞ…無理だな。」って言われて
「そんな……いい案だと思ったのに。」なんて落ち込んでいた。
「落ち込まないで、フォス。フォスがすごいのよ。」ダイヤが励ますも、フォスは昔に戻ったみたいに拗ねてしまっていた。
「どうしましょう…良い素材が無いですね……。」
「えっ!?」
ルチルが引き棚を引きながら唸った。
ジェードが反応し、フォスは何故か目を輝かせていた。
「ならやっぱり合きn」「ダメだ。」
「……でもやっぱり、合金をつけるしかないのか……?」「素材が無いんじゃぁ仕方ありませんね…」
みんなが本気で合金をつけるか考え始めた時。
「ねえ、ルチル、僕の腕を使える?」
エイティが、そう、ルチルに言った。
「………エイティ?」僕もみんなもびっくりして、顔を見合わせた。
「貴方でサーティの腕を治すんですか?……宝石もインクルージョンも同じだから出来なくもありませんが……それでは貴方の両腕が無くなりますよ?」ルチルは困惑した表情でそういった。
「両腕じゃないよ、片腕。僕の左腕をサーティにつけて。それなら僕も両腕無くならないでしょ。」
ルチルはあんぐりと口を開けていた。
エイティは食い入るようにルチルに歩み寄る。
「う、うーーむ…………」
「………いいでしょう。」
暫く考えた後、ルチルはその条件を飲んだ。
「……いいよね?サーティ。」エイティが、こそりとこっちへ耳打ちをしてきた。「当たり前だよ。」
僕は、喜んで了承した。
「正直こういうことは初めてなので興奮してます。」エイティの腕を切る時、ルチルはそう言った。
声はちょっと荒ぶっていた。
「うわぁ変態ヤブだ……キモー」ってフォスが煽ってた。
そんなこと言ったら……
案の定、僕の想像通りルチルにノコギリを向けられて、「あら?こっちのほうが切り心地良さそうですねぇ……?💢」って言われてた。
「ひいぃ!ボルツみたいなこと言わないでよ!!神医者!神!天才!!!」
フォス、威勢だけはいいんだから。
同じ白いベッドに仰向けになった僕らに対して、ルチルは言った。
「ではいきますよ。」
その声とともに、僕らの意識は途切れた。
目が覚めると、本当に僕の左腕にはエイティの腕がついていた。
横を見ると、エイティも同時に起きたらしく、彼の左腕は無くなっていた。
『成功したね。』
僕らが安心していると、
「いや、まだ分かりませんよ。貴方のインクルージョンが彼と同じなのは分かってますが、万が一何かあったら大変です。当然白粉はまだ塗らず、経過を見ましょう。」
と、ルチルが忠告してきたので、僕らは今日1日、あまり過激に動かないようにした。
「エイティ、これ、この前話してやつでしょ。」
「ふふ、バレた。思い出したから言ってみたんだ。成功してよかった。」
『これからも、片方が怪我したら、もう片方で補おうね。』
足を組んで、手で体を支えて、僕らは頭を合わせる。
カツーーーンという甲高い音が、静かな学校中に響いた。
それから100から200年くらい時間が経った。
その間も僕らはたまーにどっちかが欠けて、その度にもう片方のかけらを使って修復していた。
今の時点で、僕の左腕と左足(下から10センチくらいのところ)はエイティのものだ。
逆に、僕の右肩の先端と右目は、エイティのものになった。
僕らは、
『これでもし離れても一心同体だね。』
と、いつも言っているほどになった。
ある日、みんなが冬眠の準備をしてる時期。
南北の空に月人がでた。
あーん…………眠いのに……。
みんなも同じようなことを言いながら、月人と戦ってたその時だった。
背中を、月人に射抜かれた。
一瞬背中を向けたその隙を。
エイティが庇ってくれたけど、エイティも一緒に射抜かれた。
その衝撃で僕らは綺麗に真っ二つに割れた。
雲の上に崩れ落ちた。
今、雲の上にいるのは僕らしか……………。
最後に目に映ったのは、僕らの方に手を伸ばしてくる沢山の月人の手だった。
気がつくと、僕らは助かっていた。
眠くてよく周りが見えない。
けど、隣にいるんだよね?エイティ。
(うん。隣にいると思うよ。今僕も起きたところ。)
2人で心の中で会話していると、遠くにいたフォスと目があった。
「おっ、起きた!」
フォスの大きな声で、僕らの眠気は一気に何処かへ飛んだ。
『び、びっくりした……なぁに?どうしたの?』
僕らが尋ねると、「どうもこうもないよ!やっと起きたんだ。そりゃ声も上げるさ。」と、フォスが走ってきた。
どうやら僕らは、あの日から10年間も眠ってしまっていたらしい。
周りの人に聞くと、どうやらあの後、ボルツが駆けつけてきて、僕らの体全てを持って行かれることは防げたらしい。
ただ、僕らの体の片方は月人から奪い返せなかったと。
エイティの右側、サーティの左側。
綺麗に半分。
持って行かれたらしい。
『そんな……』
『あれ?でもなら何故僕たちは今話せているの?どちらも欠けていないし……』
「………」
僕らが尋ねると、みんなは気まずそうな顔をした。
「…あーー……えっと…じゃぁ、エイティは手をパーに、サーティはグーをしてください。」と、急にルチルが意味深なことを言ってきた。
『?いいけど……』
エイティは両手をパーに、僕は両手をグーにした。
『はい。これでいいの?』
みんなに見せると、ルチルは言った。
「……貴方、自分の両手を見てみてください。」
え?と思って両手を見る。
右手はグーに。
左手は、パーになっていた。
『あれ、何で?僕、パーにしてたはずなのに……』
グー
「っ……」
ジェードが、今にも泣きそうな顔をした。
どういうこと?
僕の左手がパーになってる??
右手 グー
その時気づいた。
医務室の奥にある鏡。
そこに映っていたのは、僕でも、エイティでもなかった。
僕とエイティを合体させたような、「アメシスト」だった。
『…………え?』
そういうことか。
一瞬で理解してしまった。
僕の左側がない。
エイティは右側がない。
僕は右側がある。
エイティは左側がある。
くっつけたんだ。
僕らを。
右はサーティ・スリー。左はエイティ・フォー。
白粉が塗ってあってつなぎ目はよく見えないけど、触って見ると少し違和感があった。
僕の体だけど、僕の体じゃなかった。
インクルージョンも宝石も同じだけど、少し、ほんの少しだけ、違和感があった。
(ど、どうしよう……エイティ?)
心の中でエイティに話しかける。
(心の中でなら話せるよ。サーティ。)
どうやら、僕らは心の中でなら会話ができるらしい。
(よかった。エイティと離れ離れになったらどうしようかと思ったよ。)
(僕も。こうなっちゃったけど、別にこれでもいいのかもね。)
『これから僕たちは、「アメシスト」として生きていこう。』
そう、高らかに宣言した、冬の去りどき。
140年後………。
学校から少し離れた草原にて。
1人の宝石と手を繋いだユークレースが、草原を彷徨うようにして歩いている。
「あら、いいところにいた。モルガーー、ちょっと今いい?」
丁度よく近くを散策していた1人の宝石の方へ声をかけ歩み寄る。
「ん?……あっ!ユークレース、そいつ、まさか戦闘にはいるの?」
モルガことモルガナイトが、ユークレースの右隣にいる宝石を指差して聞く。
「えぇ。硬度も7だし、靭性も5級だから、戦闘向きだって先生が。」
ユークレースは優しく微笑み、モルガに返す。
「〇〇〇、詳しいことは先輩方に聞いてちょうだいね。じゃぁ私はこれで。」
彼をモルガに引き渡し、ユークレースは集計表を持って学校へと戻っていった。
「あーえっと、名前はたしか〇〇〇だったよな?」
「はい。〇〇〇です。」
「じゃぁ呼びにくいから●●●でいいか。モルガナイトだ。これからよろしくな!」
「はい!」
「おーいモルガ、何してるの?あれ、新入り?〇〇〇だっけ。戦闘班になったの?」
「あぁ。さっきユークレースと一緒に来てな。先生直々のご判断だ。」
「僕はゴーシェナイトだよ。よろしく。とりあえずまずは他の人にも挨拶してみたらどう?ダイヤとかボルツとか、あとはアメ……」
「おーーい、何してるの?」「あ、噂をすれば。」
ゴーシェが微笑む。
「あ、犠牲者1人目。」
モルガが意味のわからないことを言った。
「え、何?犠牲者??」
困惑している彼に、〇〇〇は挨拶をする。
「えっ、と、〇〇〇です!今日から戦闘班に入りますっ!よ、よろしくお願いします!」
「おぉ、元気いいねぇ。」
くすりと笑って、彼は自己紹介をした。
『僕たちは「アメシスト」。硬度は7だよ。』
『よろしくね。』
彼らは、にこりと笑顔を作って、彼のことを見つめた。新しい風吹く春の匂い。
コメント
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わああああ😭 漫画の方の一番新しい巻では2人とも別々の道を歩もうとしてるから悲しいけれど、こんなENDもいいのかも😢 最高でした!登場人物がほんとに二次創作と思えないくらい本人たちって感じでびっくりです!!!笑