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「ちゃんと考えたい」
その言葉だけが、何度も頭の中で繰り返されていた。
⸻
ちゃんと考えるって、何だよ。
彼女がいるのに。
俺のことを好きになるわけないのに。
🐧「……期待すんな」
自分に言い聞かせる。
期待した分だけ、傷つく。
もう十分だ。
⸻
それから数日。
そうたは、前より俺の近くにいるようになった。
朝。
🐬「おはよ、まなと」
🐧「……おはよ」
昼。
🐬「購買行くけど、一緒行く?」
🐧「大丈夫。」
放課後。
🐬「じゃあ、また明日」
🐧「……うん」
ほんの少しの会話。
でも 前みたいに避けられてはいない。
それだけで、嬉しいと思ってしまう自分が嫌だった。
⸻
そんなある日。
体育の授業。
バスケットボールの試合だった。
「ナイス!」
「パス!」
体育館中に声が響く。
俺はゴール下でパスを受ける。
その瞬間 横から相手がぶつかってきた。
「っ!」
バランスを崩し、そのまま床へ倒れる。
🐬「まなと!」
一番最初に駆け寄ってきたのは、そうただった。
🐬「大丈夫か!?」
肩を支えられる。
思ったより近い距離。
🐧「……平気」
立ち上がろうとする。
でも。
🐬「無理すんな」
そうたは離さない。
🐬「足、痛めてるだろ」
俺の足首を見て、眉をひそめる。
昔から変わらない。
俺がケガすると、誰より焦る。
👦「先生呼んでくる!」
クラスメイトが走っていく。
その間も そうたは俺の隣から動かなかった。
⸻
保健室。
軽い捻挫だった。
湿布を貼ってもらい、歩ける程度らしい。
🐧「ありがとう、先生」
そう言って外へ出ると 廊下の壁にもたれている人影が見えた。
そうただった。
🐧「……なんでいるの」
🐬「待ってた」
当たり前みたいに答える。
🐧「彼女は?」
その瞬間 そうたの表情が曇る。
🐬「今日は部活」
短く答える。
沈黙。
🐬「歩ける?」
🐧「歩ける」
🐬「嘘つけ」
苦笑しながら、そうたが俺の前にしゃがんだ。
🐬「ほら」
🐧「……え?」
🐬「背中」
意味が分からなかった。
🐧「いや、いい」
🐬「遠慮すんな」
🐧「遠慮じゃない」
恥ずかしい。
それに こんなの見られたら。
👦「え、そうた何してんの?」
廊下を歩いていたクラスメイトが、不思議そうに見る。
🐬「まなと運ぶ」
あっさり答えるそうた。
👦「相変わらず仲いいなー!」
笑いながら通り過ぎていく。
その言葉に 胸が少し痛んだ。
相変わらず。
……違うのに。
もう前とは 全然違う。
🐧「……自分で歩く」
そうたの横を通り過ぎようとする。
その瞬間 足首に痛みが走った。
🐧「っ……」
ふらつく体。
倒れる。
そう思った瞬間 ぐっと腕を掴まれた。
🐬「だから言っただろ」
優しい声。
昔と同じ。
🐬「無理すんなって」
近い。
近すぎる。
🐧「……離して」
小さく言う。
🐬「嫌」
即答だった。
🐧「見られる」
🐬「見られてもいい」
その一言に、息が止まる。
🐧「……そうた」
🐬「今はまなとの方が大事」
その言葉は、そうた自身も無意識だった。
言った瞬間、そうたがハッと目を見開く。
🐬「……あ」
空気が止まる。
俺も、 そうたも 何も言えない。
👧「そうたー!」
遠くから彼女の声が聞こえた。
その瞬間 そうたの表情が固まった。
俺はゆっくり腕をほどいた。
🐧「……行きなよ」
できるだけ平静を装って言う。
🐬「でも」
🐧「彼女、呼んでるよ」
そうたは振り返る。
彼女が笑顔で手を振っている。
その姿を見て 俺は小さく笑った。
🐧「俺、一人で帰れるから」
嘘だった。
でも そう言うしかなかった。
そうたはしばらく動かなかった。
彼女と俺を何度も見比べて 迷うように唇を噛む。
その姿を見た瞬間、 俺の胸は、また静かに痛み始めた。
コメント
3件
第9話、読み終わりました……「今はまなとの方が大事」って言った後に、本人がハッとしてるの、すごく胸にきたよ。無意識に口から出た本音ってやつだよね。それなのに彼女の声が聞こえた瞬間の空気、まなとが「一人で帰れるから」って平気なふりする姿……ああ、もう。そうたが迷って唇噛むところも含めて、切なさがじわじわ来た。二人の距離が縮まってるようで、また離れてしまうもどかしさがリアルだった。続きが気になるなあ……!