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垢かえると行ってから1年くらい作り直してませんでした……。
前の垢で書いていた作品の続きが何故か消えてしまっていたので、これから作るため、投稿するのが遅くなります……。
書いておいて、没になった作品ですが見てほしい!
ーーーー
「アーサー様?もう起きる時間ですよ〜。今日はお空は哀しい雨を落としていますが、くんれんがんばりましょうね」
「んん……やだ、起きない……」
「そんなわがままだめです! 訓練が終わったら美味しいクッキーが待っていますよ。でもまあ、まだ小さな子供ですもん。部屋でお絵描きでもします?」
「小さな子供って…同い年でしょ? 菊も遊ぼうよ。菊のしたいことをしよう」
「私は使用人なのです。好きな遊びなど許されません。どうしました? まだお眠ですか? ならまた寝ましょうね?」
「え……? 眠くないよ……、眠く……、な――」
「──あれ」
目が覚めると学校の宿の天井。
あぁ、なんだ。夢か……。
今のは同い年だった使用人の男の子だ。でも、男の子なのに女の子みたいに美しい男の子だった。
俺が中学生になりこの、呪いのような学園に入って会えなくなった。それも、呪いというのは、この学園はただの魔法学園ではなくて、異生物を殺すためだけに用意された生徒。道具だということ。
あんなに寄り添ってくれてたのに、こんなこと知ったらきっと悲しむだろう。俺はまた、君の名前を呼べる日が来るのだろうか――。
「なあ知ってる? 問題児が手に負えなくなって、監視人雇ったらしいぞ。どんだけだよって感じだよな」
ハハハッと笑い話していたのは、クラスのヤツら。笑っているけれど、道具にされてるとも知らずに呑気なヤツ。
「でも、中学二年生の女の子らしいよね。そんな子につとまるのかなあ? 私たちと同い年じゃんか」
人の心配する前に自分の心配をしろとしか思えない。なんだよ、この学校には馬鹿しかいないのか?
「アーサー何浮かない顔してんのー? あ、まだ初恋の子のこと?はあー、お前も恋する乙女だなあ」
俺の肩に手を押して、ニヤニヤ笑ってきたのは同じクラスのフランシス・ボヌフォワ。こいつのことはあまり好きじゃない。もう性格から無理!
「うっせえなあ! そんなのどうでもいいだろ」
「ちぇー、あ!あれじゃない? 噂の監視人さん」
窓の外を見ると、問題児を引連れて、先頭に立っているワインレッド色のロリータ服をきた女の子がいた。髪の毛はショートで短い。顔は下を向いており見えない。そして、首元に着いた緑のペンダント。
そうだ、ペンダント!緑のペンダント! 俺が初恋の相手にプレゼントしたものだ! でも、初恋の相手は女の子じゃない。
「……なあ、あれって女か?」
「うっ、ちょ、アーサーやめてよ! どうしたの? 頭打った?」
飲んでいたジュースを吹き出しそうになったフランシスだが、あのペンダントは発注したものであり、初恋の相手以外が持っていたらおかしいのだ。
じゃあ……、あれが初恋の相手?
「っ俺、知り合いかも」
「し、知り合い?! あの美少女と?! 嘘言うなよ! なに? ずっと初恋の相手に心寄せてたくせに、タイプの女の子見たらすぐに移すのかよ」
「ちげえよ、あれが初恋の相手だっつうの!」――。
俺はダッシュで階段をおりる。ああ!やっと会える!やっと、名前を呼べるんだ!
俺は会える嬉しさで内蔵が飛び出そうだった。
「別に魔法使っただけで問題児とかダルすぎだろ! てかこんなチビが監視人とか無理なんだが」
そこに居たのは、壁に追いやられて、髪を鷲掴みされていた初恋の相手。
初恋の相手は、黙っているだけだし、あの時の強い初恋の相手はどこに行ったんだよ。
「おい! 人に暴力振るってんじゃねえよ」
「は? なに。こいつが話聞いてくれないのが悪いだろ。優等生さんはどっか行ってろよ」
「早くはなせよ。離さないと一緒問題児かもなあ?」
「っち!」
舌打ちをかまして、手を離したと思い、早く初恋の相手と話したいがために、そちらを見ると、まるで別人だ。顔は変わらないのに中身が入れ替わったように感じる。
「……お話は終わりましたか? ほら、もう行きますよ」
「え、菊だよな? お前菊じゃないのか?」
「……ごめんなさい。私の名前は菊ではありませんよ?桜です、斎田桜」
斎田桜……? 俺の初恋の相手の名前は本田菊なはずだ! ――。
あの一件があってから、ずーっと観察しているが全てが菊にしか見えない。
歩き方、仕草、髪の毛、ふんわり香る花の匂い、全てが菊なんだ。でも、違うと言えば性格。俺といつも笑いあってたのに、今になっては他人扱いだろ?おかしい。なんでだよ。俺はずーっと会いたかったのに、菊は忘れてた?
いいや、違う。俺は見たんだよ。俺があの時、声をかけた時の菊の顔を。ほんの一瞬だが、俺の目を見た。じーっと見ていた。そして、あの瞳はあの時見た菊の瞳だった。
ならなんで? そんな疑問がよぎる。どれだけ考えても思いつかない俺は教室の机で頭を抱えていた。
「アーサー、何? あの初恋の相手のこと?」
「あたり前だ。俺が話しかけたら他人のフリされたんだよ。なんでだ? あれは絶対に菊なんだよ」
「んー、ロマンチック! だけど――いっその事、秘密基地に呼んじゃう?」
「秘密基地にか?」
秘密基地というのは、この学園の生徒が道具として使われていることを知っている生徒だけを集めた宿のこと。まあ先生には秘密だからバレたら罰則どころじゃないだろう。
でも、秘密基地に呼ぶのは抵抗がある。俺の最愛の相手がこの学園の真実を知ったらどう思うことか…。
「元々、使用人として生きてきた子供がいきなり魔法学園に来るとかおかしな話だと思わないの? 何かありそうだよ、ほら。脱出の手がかりになるかもしれない」
「……わかった。今日連れていくよ」――
そして俺は日付が変わる頃、部屋を抜け出し、廊下をこっそりと歩いていた。
ちっ、菊はどこにいるんだよ。そもそも部屋すら知らないし。
すると、遠くの廊下にランプの灯りが灯っていた。そして、そのランプに繋がる手は菊のものだった。
「っ菊」
「は? ……」
俺は走る。廊下を全速力で走る。
そうだ、菊の手首を強く握って――。
だというのに、菊は何も言わない。不安になり菊の顔を見ると、涙を浮かべていた。
「……私、あなたが成長してくれていたと期待していたのに。あなたは何も変わってはいやしない」
ああ、やっと俺がアーサーだということを認めてくれた。
「……俺はあの時から止まったままだ」――。
「……だから何も話すことなんてありませんってば」
「なんでだよ、おかしいだろ? 菊はあの時みたいに話してくれよ」
「私はもうあの時の私じゃない。貴方とまた仲良くしたところで……結局お別れです」
「お別れ?」
「……いえ、なんでもないです」
菊に何を聞いたって、何も無いとしかいってくれない。
「……じゃあいいよ、なんでここに来た」
「……答えられない」
「なんでだよ! それくらいおしえてくれよ!」
「私は何も言うことが出来ない。昔とは違い、今は監視人を務めているのです。もうあなたと仲良くなしたくないのです!」
なんでだよ、なんでなんだよ! 昔は走り回って遊んで、菊に沢山洋服を選んで、寝る時も一緒で、そして、そして!
「……なぜ私をここへ呼んだのですか?」
「……お前とまた仲良くしたい、中学に行ってから二年あえてない。そしたらじょそうしてるし……」
「女装は好きでやっている訳では無いですよ。アーサー様なら知っていますよね?私、灰魔法の使い手なんです。灰魔法は魔法を習う資格などない。万が一バレた時は、どうせ可愛い女の子なら少しでも態度は違うでしょう?」
「小悪魔な所は変わりないな……」
「……昔のお話などおやめなさい…。私はもう貴方と仲良くする身分では無いのですから」
菊は、ソファに座って俯きながらも話してくれる。俺は目を見てくれなくたって、話せている。その事実だけで自然と口角が上がる。
「ですからもう私は――」
「たっだいまー!」
帰ってきたのはフランシス。
「あ、こんにちは〜! 桜ちゃん? だよね」
「え、あ、こんにちは……」
俺に訴えかけてくるその目は、呼んでおいてなんで友達もいるんだよーって目だろ?
「……ここには何人が住んでいるのですか?随分と大きなお家ですが…」
フランシスが菊をまじまじと見るため、菊は気まづくなったのか、話を振る。
「うーん、俺も合わせて、四人だね!」
「え、少ないんですね」
「そうだね──ところでさ、君、本当に女の子?」――。
その瞬間、菊は押し倒された。俺は一瞬ではなくずっと理解ができない。
「……当たり前でしょう?」
「……あははっ! やっぱり? どうしても君が女の子に見えなくてさー」
「は……?」
「前見ちゃったんだよね、君が男子トイレに入っていくの。それに、アーサーの初恋の相手は男。だけど、アーサーは君の事を初恋の相手だと言ってた。初恋の相手を間違えるわけはないし、まあ、君の一人称が元々私だったから言い間違えはしなかったから絶対に男とは言いきれないけどね」
「……言えない」
「言えないってことはそうなんじゃないの? ……じゃあさ、先生がその事を知っていないのなら、それほどの理由があるんでしょ? 言いふらさないから教えてよ」
菊を押し倒し、質問攻めした後は離れてソファに座らせているフランシス。俺は理解ができず呆然としてその光景を見ていただけだった。
「それで、先生は知ってるの?」
その質問は、菊が男だということを先生は知っているのか。という質問だ。
「先生は……知っています」
「そう、じゃあなんでこんなこと?」
「……それは、言えないんです。どんな理由があったとしても言えない」
菊がバレないようにと女装をする理由、そしてここへ来た理由。全てが分からない、俺は何も知らない。灰魔法が来る理由もないし、隠してまで入学する理由もないのに。
俺は考えれば考えるほど、頭を痛みつけた。
「じゃあ、ここの生徒がみーんな異生物を殺すためだけの道具でしかないってことは知ってるの?」
「は……?」
「実はねー、この宿にいるのは唯一、事実を知ってる生徒、四人だけなの」
「し、知ってたのですか……?」
「は? 菊はその事知ってんのか! じゃあ、俺たちの仲間に入って、一緒にここを出よう!」
俺はずっと菊がこんな学園に入ってしまったことを哀れんでいたけれど、その事が知れて嬉しかった。だから俺は笑顔で菊を見たが、菊は嬉しそうではない。
「ここから出られたとしても私は出ないですよ。知ってます? ここ――」
「ただいま〜!」
菊が何かを言いかけていた時、この宿の宿泊者であるギルベルトが帰ってきた。
「え、あ、こんばんは……。あの、もう行きますね」
さっきの言葉は俺の言葉に少し気分を悪くして、言ったことなのか。菊は溜息を吐いたあと、ソファから立ち上がろうとした。
「あの有名な監視人ちゃんじゃねえか! なんでここにいるんだよ。もっと話そうぜー!」
「え……いや、帰るんで。……あと! 私は貴方と仲良くする気なんてないです。話しかけないで下さいね」
「は……? いや待てよ! せっかく会えたのも縁だろ……? だから――」
「私なんて死ねばよかったのに、今ここで、人の役に立つ仕事をしているだけであって、あなたと仲良くする理由なんてないし、楽しい人生を送る暇なんて私も、貴方もないんですよ!」
おかしいんだ。さっきから言ってることが理解できない。
私なんて死ねばよかった? 人の役に立つ仕事をしてる? 前まで仲良かったくせに仲良くする理由がない? 楽しい人生を送る暇が俺たちにない? おかしいんだ。
菊の言っていることがおかしい。
「──とりあえず、私はもう帰らせてもらいます」
困惑して言葉ひとつも出ない俺の耳へ聞こえてきたのは、期待していた言葉ではなかった。どういうことなのか、俺は絶対に聞き出さなければならない。
「おい! 監視人ちゃんも泊まってけよ。もう夜遅えしさ」
「……まあ、それもそうですね、今日は泊まらせてもらってもいいですか?」
善かった。でも、菊の回答は、何かを考えた後の言葉だった。
「俺の名前はね、フランシス・ボヌフォワだよ。てか菊ちゃんみたいな可愛い子初めてだよ。そういう系統の顔の子見たことないもん」
確かに、菊は日本人で、タヌキ顔という可愛い顔をしている。……ん? まさか! フランシスは菊を狙ってるのか?
「おいフランシス! 菊は渡さねえからな!」
「はいはい、人の恋人は奪いませんよー」
「い、いや! まだ恋人じゃねえよ!」
「ここまで言っておいて、そこで照れんなよ……」
暖かい暖炉の灯る寝室にある大きなベッドに四人で寝転がり、もう寝ようとしていた頃。フランシスは菊に話しかける。そして俺はその会話に入る。そんな時間が幸せで、一生続いて欲しいものだった。
そして、菊はその光景を眺める。ギルベルトはまだ風呂の中だが、もう一人の住人が帰ってこない。もう九時を過ぎているというのに……。高一の魔法学生は確かに、研究が多くて忙しいの走っている。けれど、ここまで遅いか?
「なあ、アントーニョ遅くねえか?」
「あー! 言い忘れてたんだけどさ、アントーニョ、次の大会出場者に選ばれたんだよ! だから練習で忙しいらしいよ。まじごめーん」
そこで重大な物を思い出したフランシスは、手を合わせ目を泳がせた。
「まじごめーん――じゃねえんだよ! 祝いの物も用意してねえし、気が利かなすぎだろ!」
「まあ仕方なくね? ギルにも言ったけど、ギルだって言わなかったんだよ?」
「いいけどよ――てか、菊寝た?」
そう言われ、菊の居る方向を見ると、可愛い寝息を立てながら、ぐっすりと眠っていた。
「そりゃあ疲れちゃうよねー。だって問題児の世話を一日中してたんだから。俺たちももう寝ようよ」
「そうだな。よーし、電気消すぞ」
「いやギルわすれないで!」
☆★☆
あの一件があっても、菊と仲良く話すことは無かった。
菊は問題児の世話で精一杯だということが分かる話を、風の噂でよく聞く。
髪引っ張られるのは日常茶飯事だとか、殴られる、暴言は全部全部、普通のことらしい。だからだろう。菊は大きな絆創膏が身体中に貼ってあり、とても痛々しいものだ。
そんなことをひとり、廊下を歩きながら心配していると、菊は問題児を引連れず、ひとりで、下を向いて歩いている。下を向いていたとしても、菊の目を見る菊の掌にはしっかりと涙が落ちていた。
「菊……? まさか、泣いてんのか?」
「な、泣いてませんよ……。それに、あまり私に話しかけないでください」
俺が心配して顔を覗き込むと、菊は咄嗟に、その場でしゃがみ込んだ。
「明らかに泣いてんだろ! またアイツらになんかされたか? それなら――」
「っされてない! されてないですから……。そもそも、貴方。昔から毛虫でも怖がって、私に毎回取ってもらってましたよね? それならとか、無責任なことは言わない方がいいですよ」
「は? お前、それ本気で言ってんのかよ……。俺は心配したんだぞ!」
「あら、そうですか。私は別に頼んでませんし、あなたがそうやって声を張り上げる意味もないと思いますが……」
「っ! お前なんて! もう知らねえからな!――」
バチンッ
「……お前は昔からそうだよ! お前の家系が崩れだした頃、綺麗に俺の話をかわして、どんなに苦しくても泣かねえし、笑ってたよな? そういうところが嫌なんだよ! それも昔からだ!」
息が切れる。俺の怒りは、菊の態度の悪さや、悪質なものを注意する怒りじゃない。心を左右出来ない菊を、隠し上手な菊を、誰にも頼らず、1人で苦しむ菊を辞めて欲しいと叫ぶ怒りなんだ。
「……っそんなの! あなたになにがわかるんですか……! 私の家庭環境も、好きなこと嫌いなこと、全部全部分からないくせに、知った気になって言わないでください! 私はひとりで生きられる。あなたみたいに――弱くない! 」
「あれ、なんでアーサーくんと話しているんだい?」
菊が、俺の宙に浮いたままの手を掴み、強く言い放った後、白衣を着た生徒の管理人が聞くに話しかけた。
「あ……、ちがうんです。道でぶつかったので謝っただけで!」
「別に言い訳して欲しい訳じゃあない。なんでか聞いてるんだよ。約束、覚えてるかい?」
約束。そう言ったが、菊はさっきからずっと、震えている。
「本当に……、ぶつかっただけです」
「……そう」
服と服の掠れる音が聞こえる程、強く菊に肩をぶつけ去っていく監視人は、とても人に対する態度ではなかった。
「……どういうことだよ」
俺は菊の肩を強く掴んだ。ここで、菊を引き留めないといけない気がした。俺が――俺が助けてあげるんだ!
「っ貴方、さっきからなんなんですか?」
「――は?」
菊は、目に角を立てて俺を見た。
「あなたには何も分からないと言っているんです! ――貴方についての悩みなんです! もう、なんで分かってくれないの……」
俺、何も分かってない。
なにもできない。
俺には菊を助けることは無理だ。
俺のせいだと言われて理解ができないんだ。さっき菊も言っていた。好きなこと嫌いなこと、全部全部分かっちゃいない俺に、助けることが出来るのか?
「……菊」
「……桜と呼んでください」
「桜」──