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僕は気が付いたら、行列に並んでいた。
まわりは暗く、行列を成している箇所のみ薄暗く光っており、並ぶべき場所を示していた。
行列の先頭の方にはゲートらしき物が見え、行列は少しずつそちらの方へ進んでいる。
なんでこんなゆっくり進んでいるんだろう? もう少し速く進めないのだろうか? それともゲートで検問のようなことでもやられているのか?
そもそも、ゲートの横は壁は特に見えないし、ゲートの向こう側も何かあるように見えない。
とにかく、この行列が進むのを待つしかなさそうだ。
どのぐらい待っただろうか? ゲートに大分近づいて来た。
ゲートには、一人ずつ中へ入って行く。どうも中へ入って直ぐのところで誰かと話しているのがわかる。そして、近づくにつれ、会話の内容が聞き取れるようになって来る。
また、先頭にいる若者一人がゲートを潜ると、その先にある円の中へ入って行く。
「それでは、質問です。高齢者は生産性ナシだと思いますか?」
どこからか、声が聞こえてくる。声の主は見えない。
「当然だろ。生産性なんてあるわけないだろ」
円の中の若者が言った。
「高齢者は自決、自殺するべきだと思いますか?」
謎の声が聞いた。
「そうしなきゃ、日本の未来。経済問題が解決しないんだから当たり前だろ」
円の中の若者が言った。
「あなたは合格です」
謎の声が、そう言うと円の中の男は消えた。
また、先頭にいる老人一人がゲートを潜ると、その先の円の中へ入る。
「それでは、質問です。若者は高齢者の為に尽くすのは当たり前だと思いますか?」
謎の声が聞いた。
「そんなの当たり前だ。俺だって若いころは、高齢者の面倒を見たんだからな」
円の中の老人が言った。
「若者自身が、自分の事で精一杯で、まわりを助ける余裕が無くても高齢者の面倒を見るべきですか?」
「そんなの当たり前だろ。自分だけで精一杯なんて甘えたことを言ってんじゃない」
円の中の老人が言った。
「あなたは合格です」
なんだ。この胸糞悪くなる問答は!
性根が腐った奴しか合格しないってどういうことだよ。ふざけんなよ。
また、先頭にいる若者一人がゲートを潜ると、その先にある円の中へ入って行く。
「それでは、質問です。高齢者は生産性ナシだと思いますか?」
どこからか、声が聞こえてくる。声の主は見えない。
「そ、それは人に寄ると思います」
円の中の若者が言った。
「高齢者は自決、自殺するべきだと思いますか?」
謎の声が聞いた。
若者は、おどおどする。
「そ、そんな……可哀想だよ」
円の中の若者が言った。
パン!
円の中の若者は倒れた。そして、倒れた若者から血が流れる。
暗闇の中から黒子が現れ、倒れた若者を暗闇の中へ運んでいく。
また、先頭にいる老人一人がゲートを潜ると、その先の円の中へ入る。
「それでは、質問です。若者は高齢者の為に尽くすのは当たり前だと思いますか?」
謎の声が聞いた。
「とても有り難いことです。感謝に堪えません」
円の中の老人が言った。
「若者自身が、自分の事で精一杯で、まわりを助ける余裕が無くても高齢者の面倒を見るべきですか?」
「気持ちだけで十分。無理してくれるな」
円の中の老人が言った。
パン!
円の中の老人は倒れた。そして、倒れた老人から血が流れる。
暗闇の中から黒子が現れ、倒れた老人を暗闇の中へ運んでいく。
何が起きているんだ。まともな事を言っている人たちはどうなったんだ?
どこに運ばれたんだ。
まともな答えをした方が、不合格で殺されるなんてふざけているだろ。
こんなテスト、受けてなんて居られない。
どうなっているんだ。体が思った通りに動かない。一歩一歩、行列が進むにあわせて前へ歩いてしまう。
そして、とうとうゲートを潜り、円の中へ入ってしまう。
「それでは、質問です。高齢者は生産性ナシだと思いますか?」
円の中に居ても何処から声がするのか分からない。声の主は見えなかった。
「人の生き死にを生産性なんかで語るな! ボケ! 若者と高齢者、共に手を取り合ってお互い一緒に幸せになるのが一番良いに決っているだろ!」
僕は、怒鳴って言った。
ドカン!
痛みはなかった。
胸から腹の辺りまで突然消滅した。そして、右腕も左腕も肩から肘のあたりまでなくなって、頭は地面に叩きつけられた。
すると目の前が真っ黒になって何も見えなくなった。
気が付くと僕は、お花畑に居た。僕以外にも、十人ぐらい居る。
「はい。皆さんは、首都直下型大地震の為、お亡くなりになりました。ここから、三途の川へ行って渡り、その先にいる閻魔大王様に会って、裁きを受けてください」
スーツ姿の男が言った。
え! どういう事?
「ちょっと待ってくれ。僕は変な行列に並ばされて、胴体が千切れた……どういうことだ」
今は消滅した部位も復活し、普通に体が繋がっていた。
「あ~。それですか。記憶に残ってしまいましたか。こまったな」
スーツ姿の男が言った。
「実は、先ほども言いましたが、大勢の方が首都直下型地震で亡くなられまして、大勢の亡者が閻魔大王の法廷に押し寄せましてね。困っていたのです。ほら、働き方改革の波が霊界にまで押し寄せましたので」
「働き方改革って霊界にまであるの? それと、さっきのゲートと何か関係あるの?」
「さっきのゲートは、地獄の鬼たちに閻魔大王の仕事の一部をアウトソーシングしたものなんですよ。本来、このお花畑に来たら忘れてしまうはずなんですけどね」
「忘れるってどういうことだ」
「まあ、まあ。落ち着いてください。一問目で体を半分に千切られた、あなただから特別ですよ。あのゲートを管理しているのは鬼でして、あの鬼たちのいる世界に連れて行くに相応しいか、どうかの選別をしているんですよ」