コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
葵と気持ちを確かめ合ってから、もう一週間が経った。
私たちはいつも通り、昼休みには一緒にお弁当を食べて、放課後は図書館で並んで宿題をした。
それは、私にとって本当に穏やかで、幸せな時間だった。
——最初のうちは、ね。
「ねえ、最近さ……」
「うん……やっぱり、あの二人……」
ある日の昼休み。廊下を歩いていると、背後からそんな声が聞こえてきた。
わざとらしく小さな声で話しているけれど、聞こえるようにしているのは明らかだった。
ちらっと振り向くと、二人組の女子がこそこそと顔を寄せ合って、こちらを見て笑っていた。
心臓がどくんと鳴る。
それだけで、足が少し重くなるのがわかった。
葵:「凛、大丈夫?」
隣にいた葵が、小さな声で尋ねてくる。
彼女の顔にも、わずかに不安の影が差していた。
凛:「……うん。平気」
私はいつものように笑って見せる。
だけど、その笑顔が少し引きつっていたこと、自分でもわかっていた。
それからの日々、学校の空気が少しずつ、でも確実に変わっていった。
教室で私と葵が並んで座っていると、斜め後ろからひそひそと声が聞こえる。
廊下を歩けば、目が合った瞬間にすぐ逸らされ、でもその直後にまた視線を感じる。
図書館に行く途中、わざとらしく私たちの名前を言って笑う男子グループもいた。
——別に悪いことをしているわけじゃない。
ただ、好きな人と一緒にいるだけなのに。
それなのに、まるで私たちだけが、世界の中で浮いているみたいだった。
葵:「……ねえ、凛」
帰り道、葵がぽつりと声を落とした。
葵:「……みんな、気づいてるのかな。私たちのこと」
凛:「……たぶん、ね」
私は曖昧に答えるしかなかった。
でも、心の奥ではわかっていた。
これは、ただの“気のせい”なんかじゃない。
周囲の空気が、確実に変わり始めている——。
ここまで読んでくれありがとうございます。ではまた次回。♡、コメント、フォロー、よろしくお願いします。