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キャットタウンは、都会的な雰囲気とシックな建物が並ぶ、
非常にオシャレな街として名を馳せている。この街は、
まるで絵本から飛び出してきたかのような美しさと、猫たちの穏やかな生活が調和している場所だ。
この美しい街では、猫たちが毎日平和に暮らしている。しかし、
その平和は決して偶然の産物ではない。街の中心にそびえる警察署が、
その平和を守るために日夜働いているのだ。
警察署の中では、警察官ジョセフがいつものようにドーナツを楽しんでいた。
彼のふさふさしたオレンジのブチの毛並みが、署内の柔らかい光に照らされて輝いている。
ジョセフの隣には、新米のポテトが座っていた。ポテトは、まだ若くエネルギッシュな白色の猫で、
電話の前で待機していた。彼の目はキラキラと輝き、事件が起こるのを今か今かと待ち望んでいる様子だった。
その時、静かな警察署内に突然電話の音が響いた。
ポテトは興奮気味に勢いよく電話に飛びついた。「はい、こちらキャットタウン警察署!事件ですか!?」
しかし、電話に出たポテトの顔色がみるみる変わっていった。
ジョセフは何事かと一旦ドーナツを置き、ポテトの様子をうかがった。
「はい!了解しました」と言って電話を切ると、ポテトは真剣な表情でジョセフの方を見た。
「先輩、大変です。本部の偉い猫からの伝達で、今からその偉い猫が来て、先輩に話があるそうです。」
ジョセフは眉をひそめた。「その偉い猫って誰なんだ?」
ポテトは興奮を隠せない様子で答えた。
「これは昇進なんじゃないですか!いよいよ先輩も上に行くんですかね?」
ジョセフはため息をつきながら、「そのざっくりした言い方、やめてくれ」と言った。
その時、警察署の前に一台の高級車が静かに止まった。ポテトは目を輝かせて、
「先輩、来ましたよ!ドーナツ片付けて!」と急かした。
ジョセフは驚きながらも、「お、おぅ」と返事をし、ドーナツを慌てて片付けた。
彼とポテトは緊張した面持ちで玄関に立ち、そのお偉い様を迎える準備を整えた。
ジョセフとポテトは背筋を伸ばし、深々とお辞儀をした。
車からは秘書らしき猫が降りてきて、
後部座席のドアを恭しく開けた。そこから現れたのは、高級なスーツを身にまとい
、腕には輝く時計をはめた若いオス猫だった。彼の穏やかな笑みが、瞬時に周囲の空気を和らげた。
ポテトはすぐに反応し、「ささ、こちらへご案内いたします」と言いながら、
彼を応接室へと案内しジョセフとポテトは緊張した面持ちでソファに座った。
ジョセフがゆっくりと口を開いた。
「今日は一体どのようなご用件でしょうか?」期待を込めた声が室内に響いた。
秘書の猫が静かに名刺を差し出した。ジョセフがそれを受け取ると、
そこには「MMT開発会社 代表取締役社長 桃次郎」と書かれていた。
秘書「こちらは、伝説の英雄『桃太郎』の子孫であられる桃次郎様でございます。
私は秘書のマサ彦(まさひこ)と申します。」
ジョセフは眉をひそめた。「これは一体?」
秘書は冷静に答えた。「お聞きしておりませんか?本部の方とお話をして、あなたを推薦したのです。」
ジョセフは驚いて問い返した。「推薦?」
秘書が続けて説明しようとしたその時、桃次郎が静かに手を挙げて言った。「あとは僕が話します。」
秘書は一礼して引き下がった。桃次郎はジョセフの目をしっかりと見つめ、
「ジョセフさん、あなたの活躍はよく耳にしています。数々の難事件を解決してきたとか。」
ジョセフは少し照れくさそうに、「え、ええ、まあ」と答えた。
桃次郎はにこやかに続けた。「それなのに昇進もせず、ずっとこの街に残り、
平和を守り続けている。僕はあなたのような猫を探していました。」
ジョセフは戸惑いながらも、うれしそうに返事をした。「そ、そうですか。」
桃次郎は微笑みながら「実は我々の島の親善大使としてあなたを迎えたいのです。」
ジョセフは驚いた。「親善大使ですか?」
桃次郎は頷いた。「ええ、私の先祖は以前、その島で鬼が暴れていることを知り、
お供を連れて鬼退治に行きました。そこの島を制圧し、鬼は悪さをしなくなりましたが、
私はその後、その鬼が島を開発し、インフラを整備し、鬼たちに教育を与え、
鬼と私たちが共存できる未来のプロジェクトを立ち上げてきました。」
そう言って、桃次郎はパンフレットを渡した。
そこには近未来的な建物が並び、鬼たちが幸せそうに暮らしている様子が描かれていた。
「そこであなたのような健全で市民の安全を第一に考える方が、
この島の親善大使になってくだされば、大いに鬼ヶ島はアピールできるでしょう。」
桃次郎の声には確かな期待が込められていた。
ポテトは興奮を抑えきれず、「親善大使なんて有名人にしか与えられない称号ですよ!
スポンサーがついたも同然!」と叫んだ。
しかしジョセフは一抹の不安を感じていた。「しかし……」
桃次郎は微笑みながら言葉を続けた。「もちろん、お礼はたっぷり弾ませていただきますよ。」
警察署の応接室。高級スーツを纏った桃次郎は、ジョセフとポテトの前に座り、微笑みを浮かべていた。
「親善大使といっても、鬼ヶ島の魅力をアピールしてくれればいいんですよ。」桃次郎は柔らかく言ったが、
その目には確固たる決意が宿っていた。
ジョセフは一瞬考え込んだ。過去に目先の美味しい話に乗って失敗を重ねてきた彼は、
今回は慎重に判断しようとしていた。しかし、桃次郎の次の言葉が彼の思考を遮った。
「これは警視庁のお偉いさんからの指示ですので、あなたに選ぶ権利はないんですよ。」
「えっ?」ジョセフは驚きの声を上げた。
「はい、これが成功すればキャットタウンであなたの功績が認められるでしょう。」桃次郎は続けた。
ジョセフはまだ戸惑っていた。「しかし……」
「ではさっそく参りましょう。」桃次郎は立ち上がった。
「今から?」ジョセフは驚いて再度問いかける。
「はい。お偉いさんから許可は得ていますので。」桃次郎は自信満々に答えた。
ジョセフは疑念を抱いた。「お偉いさんて誰なんだよ?」
その時、桃次郎は微笑みを浮かべてポテトに目を向けた。
「もちろんポテトさんもご招待しますよ。」
ポテトの目が輝き、「はい、お供します!」と即答した。
彼はすぐに桃次郎の前に行き、期待に満ちた表情を浮かべていた。
桃次郎はポテトの頭を優しく撫で、「お手」と言った。ポテトは素直に従い、
続けて「お座り」と言われると、その通りに座った。
ジョセフは目を丸くして驚いた。「もうポテトが懐いている!?さすが手なずけのプロ!!」
桃次郎は微笑みながら答えた。「ありがとうございます。さあ、
ジョセフさん、ポテトさん、鬼ヶ島へ向かいましょう。」
ジョセフはまだ不安を抱えつつも、桃次郎の確固たる態度に押され、決意を固めた。
彼が未知の冒険に踏み出す瞬間が訪れたのだ。鬼ヶ島の未来、そしてキャットタウンの平和のために。