テラーノベル
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一体何がこんなにも怖いのか、自分でもはっきりと分からない。
釈然としない私の返事に、アラスターもフム・・・と顎に手を当てている。
〇〇「でもあの時・・・アラスターに助けてもらったとき・・・」
〇〇「覚えがない記憶・・・みたいな映像が見えたの・・・」
〇〇「暗い部屋にいて・・・・・・私と、他にも誰か男の人が・・・・・・」
〇〇「怖くて、泣き叫んで・・・それで・・・・・・」
震えるティーカップが皿に当たり、カチャカチャと音を立てる。
泣き叫ぶ私と、覆い被さる男。
情欲にぎらついたその目が、不気味に光っている。
〇〇「ちゃんと覚えてるわけじゃない。けど・・・・・・」
〇〇「けど、きっと私は、あの男に――」
アラスター「―――そこまでです、〇〇」
ぴしゃり、と少し強めの声で話を遮られる。
顔を上げると、まっすぐ私を見据える瞳と視線がぶつかった。
アラスター「せっかくのコーヒーが冷めてしまいます」
アラスター「お話しは、またいずれ」
有無を言わせないような、はっきりとした声音だった。
“それ以上言うな” と暗に言われているようで、私もそれ以上は口にしなかった。
アラスターに倣ってティーカップに口をつけると、いつのも仄かな苦みが鼻へと抜ける。
ようやく日常に戻ってきたのだと実感が湧いて、不思議と震えが消えていく。
アラスター「・・・・・・さて、こちらを少しお借りできますか?」
おもむろに立ち上がったアラスターが手に取ったのは、私の作りかけの曲の楽譜だった。
彼は私の返事も待たずにピアノへと歩を進め、慣れた様子で椅子へ腰掛ける。
その指先が鍵盤に触れると、楽譜をなぞるように旋律が流れ始めた。
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