※神話への多大なる独自解釈がございます、創作ですのでご了承ください。
「音楽だけが世界語であり、翻訳される必要がない。魂が魂に働きかける音楽の究極的な目的は、神の栄光と魂の浄化に他ならない。信心深い音楽のあるところ、神はいつも慈悲深くそばにおられる。」
__音楽家 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
音に勝るものは音だけであり、音と戦えるものは音だけである。
──証明しろ、君たちの音楽を。
神を今、この手に。
【Overture】
「あぁぁぁぁぁ……ついに一週間を切ってしまった……もう無理かもしれない……」
「あっははははは! 大丈夫だって〜!! そんな落ち込むなよ〜〜!」
「いたっ!?」
バシバシと背中を叩かれ、またもやうずくまってしまう。
伊東歩(いとう あゆむ)、26歳。職業しがないヴァイオリニスト。特段上手いわけでも下手なわけでもなく、けどこの年齢でプロとして食っていくのは到底不可能な、いわゆるフリーター……ほぼニートだ。
隣でニカニカ? ニタニタ? 笑っているのは猶大音羽(なおだ おとは)、ピアニスト兼作曲家。俺と違って音楽で食っていけるプロで楽観的で陽キャで……
「はぁ……」
「どーしたんだよ〜〜そんなでっかい溜息!」
「俺はゾウリムシなんだ……」
「まじー? 歩って単細胞生物なん?」
「そうだよ……」
「へー! すげーじゃん!!」
「あぁ……」
満面の笑顔で返されるものだから、もう何も出来ない。良いんだ、単細胞生物だから何もしなくて……などと考えながらヴァイオリンをケースに仕舞う。
一週間後、猶大音羽のソロコンサートが開催される。街中ビラが配られチケットも順調に完売へと向かっており、俺も幼馴染として初ソロコンサートを客席から見ていようと、そのはずだったのに。ソロと売り出しているはずが、なぜか俺も共演することとなってしまった。「ヴァイオリンとピアノでデュエット〜!」なんて嬉しそうにしていたが、ソロコンサートとは一体全体何だったのだろうか。
そんなこんなで巻き込まれてしまったが故、俺はこうして日々単細胞生物への道を進んでいる。もしかすると明日起きたら本当にゾウリムシになってしまっているのかもしれない。そんなの最悪だ。……いや、どちらかといえばそちらの方がありがたいのかもしれない。
「まぁまぁ、歩は歩が思ってる以上にうまいし! 本番ぜって〜大丈夫だから! な!!」
「そういう問題じゃねぇんだよ……」
「ってか、そろそろバイト大丈夫そ?」
「……やばい」
「やっぱし〜! じゃ、また明日な〜」
俺は脱いでいたジャケットを着て、防音室を後にする。
俺にはうるさすぎる、日常だった。
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自画自賛ですが天才すぎたので投稿しました、いつかコンテ応募したい