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孤独を抱えたまま人生が、白々しく堕ちていく。
空中でもがいてみても、くの字に腰を曲げた姿でいるのが精一杯で、これが 生きている時間の証なのだ、最初で最期の生命の実感なのだとケイは思った。
頭から落ちたくはなかった。
せめてまともな姿で人生を終えたい。
希望はそれだけだった。
この世に重力がなかったらと思う。
漆黒の空。
月光と星々を包み込む死のオーロラ。
落下しながら朽ちていく人生。
安座間の姿は、既に見えなくなっていた。
ふと、目線に入ったひしゃげた窓枠と風になびくブラインドは、ふたりで乱射した思い出の21階のオフィス。
死のオーロラは光を放っていら。
ケイの脳裏に、想い出がフラッシュバックしていく。
式根島の青い海。
父や母との温泉旅行。
誰かの笑い顔。
それはきっと大切だった人。
だけど、思い出せないくらいに記憶から消した人。
ひとりで泣きはらした夜と、みんなで笑い転げた夜。
入社式の高揚感と、退職した日の虚無感。
好きだった人と大嫌いな人。
地上が迫る。何となくわかる。
人生が終わる。
最後の友達、ゆみと麻耶との思い出の声が聞こえる。
アカリエ移転後、11階フロアで開催されたスイーツフェスでの声が聞こえる。
どうでも良い記憶と思っていた。
ショーウインドウに並べられた、色とりどりのドーナツを見ながら騒いだ日の記憶。
「わあ!カロリー気になるけどどうしよっかなあ」
ゆみの舌ったらずな声。
「チョコラータ~、チョコラータ~」
鼻歌交じりの摩耶の笑顔。
「あたしがご馳走したげる。食べちゃえ食べちゃえ」
ケイは、楽しそうに笑えていた自分の声に驚いた。
そしてこう思った。
人生の最期に。
「あたし楽しめていたんだな。案外…」
5月14日 20:00 07
朝倉ケイの人生が終わった。